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第二章 旅は道連れ

5 初めての魔法

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しかし魔力ですか…こちらも検索してみましょう。
表示を消して画面に【魔力とは】と指先で書きました。

【魔力は、生きているなら、人でも動物でも誰でも持っているエネルギーだよ。
星も生きているから魔力はあるんだ。
体の中にあるものを魔力と呼んで、星の出した、空気中に漂っている魔力を【魔素】と呼ぶんだよ。
他には人が魔法を使う時に、魔力の残滓やら何やらかんやらや、漏れた魔力も魔素になるよ。
大きな魔法を使う時や、体内の魔力がなくなった時に、この魔素を取り入れれば回復するんだけど、これは練習しないと無理。
だから練習した方がいいと思うよ。
魔力と似たような物が他の世界にも有って【気】とか【チャクラ】とか【マナ】とか【フーリュ】とか【ササレ】とか【イド】なんて呼ばれているよ。
どれも基本は同じで、体の中にあるエネルギーを意識して、それを動かす事で見えない力を使うんだ。
さあ、体の中のエネルギーを感じてみよう】

魔力はわかりませんが、気はわかります。
一時期妻と太極拳をかじっていましたから。
お恥ずかしながら、テレビの影響で、健康に良いと聞きまして、毎朝二人でやっていました。

気を感じることが、魔力を感じることと同じだと思えばいいのですよね?
私は目を閉じ、呼吸を整えて体内の気を感じます。
それを手に集めるようにして………さて、なんの魔法を発動しましょうか?

最初は水魔法がお勧めのようですが、水ですか……。
水で一番に思い浮かぶのが、鉢植えの花にジョウロで水を遣る妻です。
そのジョウロから出る水を思い浮かべながら右手を差し出し、言葉…呪文を口にします。

「水遣り!」

すると、掌から思い浮かべた通りの、シャワー状の水が出ています。
よくよく見てみると、掌から直接ではなく、掌からほんの少しの隙間を開けて、水が流れ出ています。
はて、この水はどこから来ているのでしょう?

………考えてもわかりませんね。
魔法とはこんな物なのだとしておきましょう。

その後も思い浮かべやすい魔法を試してみました。
風魔法の【隙間風】【扇風機】。
火魔法は、時代に逆らおうとやめられなかったタバコに使う【ライター】。
【キャンプファイヤー】は危なかったです。
山火事を起こすところでした。
土は思い浮かばなかったので、また今度。


『ぐうぅぅぅぅ~』

…お腹が空きましたね、何か食べる物を探さないといけません。
広げた荷物を片付けなければ。
出した物をリュックに戻すだけなのですが、困ったことに入りません……。
なぜでしょう?出した物を戻しているだけですのに。

そう言えば妻と旅行へ行った時も、私が荷造りすると大荷物になるのに、妻がチョチョイと詰め替えると、小さく纏まってしまうのですよね。
不思議ですねえ。

私は全てを入れるのを諦めて、ウエストポーチにナイフとドリンク剤、宝石の入った小袋を入れて、手拭いは一枚は首にかけ、一枚はズボンの後ろポケットに差し込み、もう一枚は頭に巻く事にしました。

健康ドリンクを鑑定してみたところ【ポーション】と出たので、タブレットで調べてみると、飲めば体力回復、傷にかければ傷薬として使える物のようです。
草は捨てていこうと思ったのですけれど、一応調べてみると【薬草・ポーションの原料の一つ】と出ました。
どうやらこれは捨てない方がいいみたいですので、これもポーチへ入れました。

何とか荷物は片付きましたけれど、リュックもポーチもパンパンです。
不思議ですねえ。



さて、いよいよ出発です。
妻に再び巡り合う旅の第一歩ですよ、年甲斐もなく心持ち浮かれてきます。
……けど、どこへ向かえばいいのでしょう?
ひとまず水辺を探しましょう。
その間に食べれる物を探せばいいですかね。
何しろ鑑定がありますから、食べられる物は見つけることは 容易いでしょう。

ふふふふ、とても素晴らしい能力をいただきましたねえ。
あの二人には感謝です。
自分で選んでいたら、意味のわからない物は除外していたでしょうから。

私は手近な木の枝を切り、枝葉を落として、手拭いを一枚切り裂き包帯状にし、持ち手部分に巻き付けます。
振り抜くと空気を引き裂く音がします。
ふむ、適当に選びましたがました、なかなか丈夫そうです。

私はその枝で歩く先の地面を薙ぎながら進みます。
足元は草薮ですから、何が潜んでいるか分かりませんからね。
毒を持つ蛇などが居るかもしれません。
注意しながら進まないといけませんよね。

闇雲に歩いていましたけれど、体感的に30分ほど歩いた頃、水音が聞こえてきました。
私の感も捨てた物じゃあないですね。

河原でリュックを下ろし、川に手を入れてみると、澄んだ水はとても冷たく、喉の渇きを覚えました。
でも水は怖いですから、鑑定してみましたけれど、どうやら飲んでも大丈夫のようです。
コップ……は出すとまたしまうのが面倒なので、手ですくい喉の渇きを癒します。
冷たくてとても美味しいです。

喉の渇きが癒されると、空腹感が際立ちます。
しかし困りました。
川に魚はいるようですが、釣り道具もありませんし、有ったとしても釣りなどしたことはありません。
手で捕まえるなど、到底できるとは思えませんし。

川の近くの木の根もとに、食用可能なキノコが数種類生えているのです。
道中ただ歩くのもなんなので、食べられそうな物を鑑定しながら歩いていたのですよ。
でもキノコは生では食べられませんよね。

キノコ……筑前煮や和風パスタやホイル焼き、茶碗蒸しや味噌汁に入っていたり、鍋やシチューや炊き込みご飯、色々な料理に使われていましたよねえ。
妻がここに居れば、きっと美味しく料理してくれるのでしょう。

私はキノコを数個採ってきて、川で洗い、削った木の枝に刺した物をいくつか準備します。
適当に枝を積み上げ、魔法の【ライター】で火を付けたのですが、凄い煙に慌てて水魔法で火を消しました。
なんでしょう?煙の出る木なのですかねえ。

二度目の挑戦は、火魔法【コンロ】を左手に展開して、右手で串刺しにしたキノコを火に突っ込みました。
そして出来上がったのが、【元キノコの消炭、木の枝を添えて】です。

三度目の正直と、今度は【コンロ、弱火】で少し火から離して炙ってみました。
少々焦げましたが、何とか食べれる物ができたようです。

地面に座って食べてみました………生焼けです……。
おかしいですねえ、焦げているのに生焼けなんて。


結論、私に料理は無理です。


色々あって精神的に疲れたので、私はそこで横になりました。
決して不貞寝ではありませんよ。






ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー

お察しの通りかもしれませんが、枯れ枝でない生木は煙がめちゃくちゃ出ます。
年を取ってても、色んなことを知っているとは限らない、と思ってください。
興味のあること以外は「え?こんなの常識じゃん」と思っても知らないって事は多々あると思うのです。

作者の格言は
「私の常識は世間の非常識」
です。
そう考えるとイラッとする事が減ったりするんですよ。





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