【完結】先だった妻と再び巡り逢うために、異世界で第二の人生を幸せに過ごしたいと思います

七地潮

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第一章 物語はまだ始まらない

2 コースの選択

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「どうしてなのですか?
人は誰でも長生きしたいものなのでしょう?
加護のある第二の人生ですよ?」
そうですね、殆どの方が長生きしたいと思われるでしょう。
けれど…

「私は早く妻に会いたいので、これ以上長生きしたくはないのですよ」
妻の居ない人生は、私には生きている実感がありません。
ただ息をして仕事をして…動いているだけです。

私の言葉に二人はタブレットを覗き込みながら話し合いを始めました。
あの世か、生まれ変わってからか、再び妻に会えたなら、この不思議な体験の話をすることにしましょう。
彼らの話し合いの間、宙に浮いているような不思議な空間を、じっくり眺めておきます。

キョロキョロと辺りを見回しているうちに、どうやら話し合いは終わったようです。
彼らが再び話しかけてきました。

「やっぱりせっかくの記念品だから受け取ってもらえる?
その代わり特別な交換品を準備するから」
丁寧な口調の男性が言葉を引き継ぎました。
彼が言うには、妻と会いたいと言っても、あの世では自我がなくなるそうなので、会ってもわからないようです。
生まれ変わりも、同じ時代で、出会える程近くに生まれ変わる確率は、ほぼ皆無と言われました。

それは私にも理解できます。
ですから、少しでも確率を上げるために、できるだけ早く妻の後を追いたいのです。
何度も生まれ変わればいずれ会えるでしょうから。

「なので後藤さん用に特別な交換品を準備させていただきます。
一般の方には通常使うことのできないスキルを、【一度だけの回数限定で使える景品】をご用意させていただきます」
「リインカーネーション、魂を呼び寄せ、転生復活させる事ができるようにするから、確実に会うことができるスペシャルスキル。
一般人に使わせることが無いこのスキルをつけちゃいますよ!」

なんだか凄い景品がいただけるそうなのは嬉しいですけれど、疑問も浮かんできます。

「そんな特別な景品を準備までして私に第二の人生を歩ませるのは、何か意味があるのでしょうか?」
ここまで優遇するのは、目の前の二人にメリットがあるのかと、思ったことを聞いてみました。

「えーと、キチンと仕事を全うすれば、オレ達もポイントが入るんですよ。
出世の為にも仕事はキチンとこなさないとね」
成る程、出世の為ですか。
私は出世は諦めていましたけれど、お二人の仕事に対する姿勢は好感が持てます。
あまりごねずに前向きに考えましょうか。

「妻に会えるのなら、その第二の人生を頑張ってみようかと思います。
しかしながら、妻と再会できたとしても、その景品がいただけるポイントまで貯めるうちに、私の年齢も上がるでしょう。
そうすれば、再会できた妻と早々に別れることになるのですよね」

妻に先立たれ、とても辛い日々を送りました。
ポイントが貯まるまで何十年も経ってしまったら、今度はあの辛さを妻に味合わせることになるのですよね。
それは残していく方も辛いです。

「大丈夫、ポイントと同時に寿命も伸びるし、高ポイント景品に【一蓮托生】があるから、それを奥さんに使えば良いよ」
「一蓮托生…ですか?
それはどういったモノでしょう」
「景品について詳しくは、景品がオープンされるごとに追記されていきますので、細かい所はそちらをご覧頂くとしまして、簡単に言いますと、【あなたの寿命を対象者に分け与える】です」
「つまり、後藤さんが死ぬと、そのスキルを使った相手も死んじゃうと。
スキルは何人にでも使えるけど、死ぬ時は道連れになっちゃうから、よく考えて使わないと、怖いことになるよ」

成る程、それは怖いですね。
他人の命を預かると言うことですか。
交換したとしても、使う時はよくよく考えて、相手ともキチンと話し合わないといけませんね。
でも、妻となら………。

「と言うわけでなんだけど、第二の人生を送るってことでいいかな?」
そうですね、ここまでしていただけて、断るのも悪いですよね。
妻とも会えるのなら、私に嫌はありません。

「ではよろしくお願いします」
私が頭を下げると、お二人はほっとした顔をされました。
「やっと話が進められる~。
じゃあどの人生を歩むか、まずはコースを選んでね」

コースは全部で10種類あるようです。
私は一つずつ説明を聞いていくことにしました。

「まずは前回の男性の選んだ【内政チートで国取り、あの手この手で乗っ取ってしまえ! 国王コース】」
「国の運営があまりよろしく無い国へ移転させます。
そこでクーデターを起こし、国王になるコースですね」

………私の前に切り番を踏んだ方はどういった方なのでしょう……。
「それは私には無理です。
別のモノを希望します」

「それじゃあ似たような感じだけど【チート無双で俺TUEEEEEE覇王コース】はどう?」
どうと言われても、ちっとも意味がわかりません。
「いえ、国王とか覇王などは勘弁してください」

「それでは【酒池肉林ハーレムコース】はいかがでしょう?
男性の夢ですよね?」
……真面目な顔して何を言っているのですか、丁寧な口調の人…。
「私は妻一筋ですので結構です」

「じゃあ【全てを科学で解き明かす、マッドサイエンスコース】なんてのもあるけどどうかな?
最終的には全ての謎を解き明かせるかも知れないよ」
「すみません、全く惹かれません」

「それなら【裏街道まっしぐら、悪の花道コース】はどうですか?」
「裏街道とはどうなんでしょう?
そのようなモノを勧めて良いのですか?」
ヤク◯とかマフィアとかですよね?
それはまずいのでは?
「善悪は時代と思想で変わりますからね。
第二の人生はやりたいことをやっていただく為のものですから、どんなご要望も受け付けているのです」
「私はご遠慮させていただきます」

「なら次はこれだ!
【夢とロマン、新大陸とまだ見ぬお宝求めて大海原へ、海賊王コース】!」
少しばかり心が動きますね、でもこれも首を振らさせていただきました。

「なかなか難しいね」
私がなかなか頷かないので、お二人が小声で話し合っています。
「いえ、初めにキチンと納得していただかなければいけませんから、慎重なことは良いことですよ」
「そっか、そうだよね。
じゃあ続いて行ってみよう!」






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