上 下
12 / 13

ヒロイン 6

しおりを挟む
謝恩会当日、軽くメイクをして、髪にはお気に入りのバレッタを着けて会場へ。

謝恩会は学園の行事なんだから、ドレスコードは制服。
卒業パーティーはドレスアップするんだけど、一学期が終わっただけなんだから、ガッツリパーティーって感じじゃないんだって。

会場と言っても講堂なんだけどね。
バイキング形式の食べ物のコーナーと、小さなテーブルと椅子のコーナー、ゆっくりできるソファーのコーナー、後はダンスのスペースって感じになってるみたい。

んー、確かゲームなら、ここで攻略対象者がエスコートしてくれて、断罪イベントになる筈なんだけど……。

王子は公爵令嬢と微笑み合いながら踊っているし、他の攻略対象者もそれぞれパートナーが居る様な………。

あれー?
もしかしなくても攻略失敗、バッドエンドですか?

もしかして、このパターンはネット小説で散々読み散らかして来た【ヒドインざまぁ】のパターンなのでは?

まあ、考えてみれば攻略失敗100%だよね。

だってちょっと前まで平民だった下位貴族の男爵令嬢が、王子や公爵令息なんかに相手にされるわけないわな。

頭も良くない、特技もない様な一般ピーポーの小娘が、首相の息子とか、財閥の御曹司とそうそう簡単にゴールインできるわけないのと同じだよね。

冷静に考えると、色々責任とか周りの目とか考えると、面倒くさそうだし。
そんなのと遊びならまだしも、結婚前提になんて付き合えないよ。
生活水準も価値観も全然合いそうにないし。

それによくよく思い出してみると、
『貴方が頑張っていることはよーくわかっているよ』
とか
『貴方を癒したい』
とか
『たまには力を抜いてもいいと思うわ』
とかとか、知ったかぶりする女って、しかもたいして親しくもないのに馴れ馴れしく言ってくるって、どこのデンパやねん。

それに見知らぬ相手の手作りクッキーの差し入れとか、何が入ってるか分かんないのに、怖くて受け取れないっしょ。

第一勝手にニックネームで呼ぶとか、攻略対象だからアリかと思って呼んでたけど、冷静に考えると、何勝手に名前呼んでんねん!だよね。

会社で苦手な上司にいきなり下の名前で『○○ちゃ~ん』とか呼ばれたら、セクハラって叫んでやるところだよ。
よく王子達スルーだけで済ましてくれてたよね。

この世界では普通なんだけど、前世の記憶のある私からすれば、16歳で婚約とか早過ぎだっちゅーねん。
20歳までに結婚、出産するのが当たり前、20歳過ぎたら行き遅れだなんて、24歳だった前世の私に謝れって感じ。

まあ、ゲームのキャラを生で近くで見られたんだし、これからはゲームの事なんて忘れて取り敢えず彼氏でも探すかな。



なんて事考えながら、ケーキバイキングを堪能している私の元へ、近付いてくる一人の男性……

「ドルシュド嬢、少し良いかな」

おおー、脳筋騎士のモーディフじゃないですか。

なーんだ、攻略成功してたんだね、いつの間にか知らないうちに。

「はい、なんでしょうか」
「ぜひ君に受け取ってもらいたいものが有るのだが、会場へは持ち込んでいないんだ。
教室まで取りに戻るから、そうだな…中庭のモミの木の下で待っててもらえるかな」

おおー、きっと中庭のもみの木は告白スポットなんだろうね、勿論待ちますよ~。
ニッコリ微笑み了解の返事をして待ち合わせの場所へ行く私。

何かな、何をもらえるのかな。
真っ赤な薔薇の花束?
可愛いデザインのネックレス?
それとも指輪だっり?
キャ~~、モーディフってば気が早いわよ!
告白と同時に指輪なんて!
まあ、断るなんて事しないけどね。

色々想像しながら待つ事しばし。
鞄を手にやって来たモーディフ。
花束じゃないね、指輪かな?

「前から君に渡したかったんだ。
良ければもらってくれ」

言いながらカバンから取り出されたのは…………



【これであなたも揺らがない!

初心者から上級者まで、体軸トレーニング  これ一冊!

わたしはこれで成功しました】



「……………………………」
「ほら、君よく転ぶだろ?
体軸が弱いと思うんだ。
この本は初心者でも無理なくできるトレーニングも載っているから、オススメなんだ。
これで鍛えて転ばない体を作ってくれ!」
「……………………………………………………」
「じゃあな!」

脳筋は一冊の本を残して、晴々とした顔で去っていきましたとさ……って何でやねん!!!

別に体軸弱くないわ!
コロコロ転けてたのはワザとだっちゅーねん!

私は本を思いっきり地面に投げつけてやったとさ。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。

白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。 筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。 ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。 王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……

三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」  ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。  何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。  えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。  正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。  どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?

乙女ゲームの世界じゃないの?

白雲八鈴
恋愛
 この世界は『ラビリンスは恋模様』っていう乙女ゲームの舞台。主人公が希少な聖魔術を使えることから王立魔術学園に通うことからはじまるのです。  私が主人公・・・ではなく、モブです。ゲーム内ではただの背景でしかないのです。でも、それでいい。私は影から主人公と攻略対象達のラブラブな日々を見られればいいのです。  でも何かが変なんです。  わたしは主人公と攻略対象のラブラブを影から見守ることはできるのでしょうか。 *この世界は『番とは呪いだと思いませんか』と同じ世界観です。本編を読んでいなくても全く問題ありません。 *内容的にはn番煎じの内容かと思いますが、時間潰しでさらりと読んでくださいませ。 *なろう様にも投稿しております。

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

この異世界転生の結末は

冬野月子
恋愛
五歳の時に乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したと気付いたアンジェリーヌ。 一体、自分に待ち受けているのはどんな結末なのだろう? ※「小説家になろう」にも投稿しています。

ヒロイン様、こちらをお読みいただけますか?

miyumeri
恋愛
ゲームの世界に転生したヒロイン。逆ハー狙いで頑張ってるけど、悪役令嬢に呼び出され なんだか怪しい雲行きに。 初めての投稿です。 本当に初めて小説(のようなもの)を書きました。 優しい心持でお読みいただければ幸いです。

転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる

花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。

処理中です...