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新しい家族が増えました

25 最終話 たくさんの家族に囲まれて

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「そう言えば町に住みたいとの申し出が有りましたのですけど、お受けしました」

食後の一服タイム、居間でお茶をしていたら、アインから報告があった。

「え?面接しなくて良かったの?」
「ジョニーもよくご存知の方ですから」
「知ってる人?」
「ええ……北の国のマークスです」
「国王じゃん!」

なんでも国王を引退するそうで、第二の人生は色んなことをしてみたいとか。

「彼は生まれつき力が強く、次期国王として国から出ることが少なかったですからね。
この度次代に王の座を譲って、悠々自適な生活を送りたいそうです」
「奴は今でも好きに生きておろう」
アインの説明に突っ込むブルース、俺もそう思う。
だってお祭りのたびに来てたよね?

「マークスさん来るの?
腕相撲勝負、今度こそ勝つぞ!」
マークスと仲の良いシナトラは嬉しそうだ。

「マークス氏は夜になると熊の姿になられるのですよね?
その状態ですと言葉はどうなるのでしょう?」
執事姿も板についてきたイースターが尋ねてくる。

「熊でも普通に喋れるよ、なんでか知らないけど」
コニーが言うように、動物の姿だと意思の疎通は念話になる筈なのに、何故か喋れるんだよね。

「マークスおじさんから貰った蜂蜜の飴、美味しかったな。
また持ってきてくれるといいな」
3年前幼児だった白雪は………ぽっちゃりふくよか、ワガママボディに育ちました……。
元が海獣だから脂肪を蓄えやすいのか?

「マークスってお祭りに来てたゴッツイ奴だよな?
引退するような年でも無いだろ?」
「北の国って、次代が育ったら、自分の好きなタイミングで交代するらしいよ」
先輩の疑問に答えてくれたチャックは、今は学校の先生をしている。

「うふふ、詳しい説明はしないの?アインさん」
「それは本人の口からの方がいいと思いますからね」
どうやら妻は何か裏事情を知っているようだ。
その視線の先には、おすまし顔のメイド三人娘。
もしかして、この仲の誰かと………?

「マークスさんならいつでも歓迎するよ。
家が決まるまで、空き部屋を提供してもいいし」
「ではそう伝えておきますね」
よろしくと、アインに告げた後、イースターに尋ねる。

「そう言えば今日はエーキチとビリーは向こう(ログハウス)に泊まりだっけ?」
いつもより人数が少ないんだよね。

「ええそうです。
平原の王の国からの注文の納期が明後日の為、今日と明日は泊まりになるそうです。
ルイジとレオも手伝いに行っています」
来月、人族の国の王子が成人するにあたって、お祝い返し?にガラス細工を添えたいそうで、大量注文が入ったのだ。

送るのは転送魔法どけど、検品や梱包はしないといけないからね。

「手伝いに行った方が良いかな」
「大丈夫でーす、明日のお昼に私達も手伝いに行きますから」
キャロル達が手を挙げて言う。
保護した子供達はとても仲が良い。
良い事だ。

「なら任せる。
じゃあそろそろ部屋に戻るかな。
あ、ジェームス、今日のデザートのレモンパイ美味しかったよ。
最近レモンのデザートが多いね、ハマってるの?」
割と凝り性のジェームスは、気に入った食材をとことん追求することがある。

「いえ、リクエストなんですよ、リリーお母様の」
にっこり笑って答えるジェームスの言葉に、メイド三人娘とシーラがクスクスと笑う。
何かあったのか?

首を傾げていると、隣のソファーに座っていた妻が、キラキラとした笑顔で爆弾発言をかましてきた。

「あのねジョニー、町に住民が増えるのとは別に、私達にも家族が増えるのよ」
「……………………………………はっ⁈……マジで⁉︎」
「うふふ、前の年月を合わせると、とても時間が掛かってしまったわね。
あなたは私にこんなに素敵な家族を与えてくれたわ。
私もあなたに、皆に家族を作ってあげられるの。
やっと……やっとあなたの子を………」

笑顔のまま涙を流す彼女を抱きしめずにいられようか。
妻を抱きしめた俺の肩をポンと叩き「おめでとう」と一言告げて先輩が部屋を出る。
気付けば部屋には誰もいない。

俺は妻の背中を優しく撫で、万感の思いを込めて妻に「ありがとう」と告げた。

心の底から湧き上がる幸せを噛み締めていると、ティちゃんがコッソリと話しかけてきた。

「ねえ、百合江さん、これからもずっと一緒に長い時間を生きてくれますか?」
私が尋ねると、腕の中の妻は顔を上げて頷く。

「当たり前じゃないの。
一回死んでもこうしてあなたといる私を舐めたらダメよ」
涙の浮かぶ笑顔で答える妻に、望んでいた最後の魔法【一蓮托生】を習得した事を告げた。

「今度は死ぬまで……死ぬ時も一緒だ。
絶対に幸せにするから、俺の隣でずっと笑っていてくれますか?」
二度目のプロポーズに、妻は首を横に振った………ええーっっ!!!

「あら、ダメよ。
私だけが幸せなのって、あり得ないわ。
私もあなたも、このお腹の子も、他の家族も、町の住民も、皆で幸せになるの。
そのために一緒に頑張りましょう、お父さん」

俺は再び妻を力一杯抱きしめた。



「ひいひいじいちゃん、お墓に飾るお花どこに置くの?」
「もー、リカちゃんまた間違えてるよ。
ひいひいひいひいじいちゃんだってば」
「だってお姉ちゃん、ひいが多すぎてわかんなくなっちゃう」
「やーい、リカのバーカ!」
「タケル君がバカって言ったー!」
「ほらほら、皆喧嘩しないの。
お墓参りが終わったら、ケーキを食べに行きましょうね」
「「「はーーい」」」
「ははははは、お前達が付いてくるのは、後のケーキが目当てだからな、【おやつ屋】の新作ケーキを予約しておいたぞ」

やったー!とはしゃぐ孫の孫の孫?
正直言ってもうわからん。
まあ賑やかなのは皆も好きだろう。
俺は墓石の前で手を合わせる。

『もうそろそろ俺達も【そっち】にいくからな。
お前らが亡くなった後の色々をたくさん聞いてもらうから、話を聞く準備をして待ってろよ』

目を開けて晴れ渡った空を見上げると、懐かしい声が聞こえて来た気がした。




   おしまい



ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー


長い間お付き合い頂きありがとうございました。
途中酷い話もあったのに、ここまでお付き合い頂けたのには、本当に感謝です。


補足を少々…
マークスさんは、メイドの一人と年の差婚しました。
その為に国王辞めました。

【おやつ屋】はヨーコーの【ごはん屋】のカフェ版です。
弟子の店で、ごはん屋と共に老舗です。

ブルースは、50年程共にいた後、王様トカゲの暮らす島へ旅立ち、そこで生涯を終えます。

コニーは長い月日をかけてやっと、17歳くらいの見た目になったところで現役です。

他の家族はそれぞれの寿命まで幸せに生きました。

先輩はこちらの世界でも所帯を持ち、幸せに暮らしました。

アインは……アインです。

ラストのお墓参りは、チャック達、最初の家族のお墓です。
リリーは、ジョニーと同じ寿命ですので、まだご存命です。

お話の後も、子供が産まれた、チャック達が結婚した、その子供が産まれた、孫が出来た、相変わらず妻が愛おしいなど、幸せを感じて寿命はどんどん伸びています。

見た目は変わらないのですが、スキルでそれなりの老年に見せかけているけど、身体年齢は生涯現役です。

長い年月で別れなど、辛いこと、寂しいことが有っても、妻と一緒なので概ね幸せです。

そのうち尽きる寿命まで、たくさんの家族に囲まれた二人は幸せに過ごしていくことでしょう。



色々書いておりますので(主にギャグ)また別作品でお会いできると嬉しいです。


読んでいただき本当にありがとうございました。




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