22 / 26
新しい家族が増えました
21 付けるつもりは無かったのだが
しおりを挟む「いや、付けるつもりは無かったんだが」
夕食後、子供達は笑顔で各自の部屋へ戻って行った。
残った俺達は、居間へ場所を移し、只今謝罪の真っ最中なのだ。
「……子供達は皆助けられて、私達に感謝をしています。
信頼した状態です」
「そこで名前まで付けてくれるって言うんだから、心のガード緩みまくりだろう。
ジョニーはジョニーで心の底から全ての子供を幸せにしたいって思ってたんだろうから、繋がりも簡単に出来るよな」
アインが責めるように言っているところで、コニーが助け舟を出してくれた。
ぶっちゃけ、こんな人数に…ってテキトーな所が有ったのは有ったのだが、子供達を幸せにしたいって思いは嘘偽りない。
「ジョニーの場合深く考えてない所があるから」
「我らの時は知らなかった故仕方ないにせよ、少しばかり迂闊だとは言えるな」
チャックとブルースが呆れ顔で言う、辛辣だ。
「でも父ちゃんだから」
シナトラのセリフに、全員が頷いてしまった。
…それで済ませられる俺って…………。
「まあ、真名は解除できますからね、一応子供達に説明してからどうするか決めましょう」
そうだった、真名を付けたからって、解除して新たに付け直すことが出来るんだった。
亜人化させる【名付け】よりは簡単らしい。
どこがかはわからないけど、アインが言うならそこまで深刻ではないのだろう。
因みに、妻にも付けた真名を告げてはないんだが、色々察しているようだ。
ちょーっとばかり視線が冷たい。
子供達がくるのを待つ間にボソッと、
「島の名前はどうかと………」
と呟かれてしまった。
うん、俺もそう思うよ。
居間へ来た子供達に、真名を付けてしまった事、俺と深い繋がりができた事を伝えた。
「ここにいる皆は、俺と繋がりができた、俺の家族だ。
繋がりができたから、お互いの気持ちがなんとなく分かるようになったし、どこに居るかがおおよそだがわかる。
それと、繋がりが深いから、俺が生きている限り、寿命が来るまでは死なない。
どんな状態になっても復活させることができる。
指の一本、髪の毛の一筋からでも、望むなら生き返らせることができる。
つまりずっと一緒に過ごして行くと言う事だから、俺は真名を付けた相手は皆家族として一緒に生きていこうと思っている」
俺の話を黙って聞いていた子供達だが、話が一区切りついたタイミングを見て、一番年嵩の少年が声をかけてきた。
「あの…ずっと、ずっと一緒に居られるのですか?」
「ああ、一緒だ。
だからと言ってこの家に住む必要はない。
そこに居るデイビッドだって家族だけど、今は結婚して別の家で暮らしている。
勿論他の子達も自立できるまで、最後まで責任をもって面倒を見るけど、君達はどの子よりも俺と深く繋がったんだ」
俺の言葉に子供達がすっごい笑顔になった。
「私達が選ばれたのですか?」
うわっ、答えにくい事を聞いてこられた。
でも嘘や誤魔化しはダメだよな。
「それはすまん、偶然だ」
あ、子供達の笑顔が消えてしまった。
ショックを受けちゃったかな。
俺が焦っていると、アインが口を開けた。
「偶然でしょうけど、ただの偶然では無いと思いますよ。
きっと何かの力が働いて、あなた達だけが真名を付けられたのでしょう」
アインの言葉に子供達の顔が再び輝く。
でも俺には聞こえたよ「多分」って小さな囁きが。
「でもね、真名には一つ怖いところも有るんだよ。
ジョニーが『こうしろ!』って命令したら逆らえないんだ。
例えそれがどんな事でも……」
コニーが【どんな事】を明言しなかったから、それぞれに怖い考えを思い浮かべただろう子供達の笑顔がまた消えた。
「大丈夫だよ、父ちゃんは命令なんかしないから」
「そうだね、この人って人に命令するくらいなら、全部自分でやっちゃうから」
シナトラとチャックの言葉に、子供達の顔色が戻る。
「まあ、命を握られているって言うのは間違いないがな」
ブルースの言葉に三たび……って、なにこれ、飴と鞭作戦か何か?
子供達を揺さぶり過ぎだろ?
「とにかく、そんな深い繋がりは嫌だって言うなら、解除して普通の名前を付け直すから。
部屋へ戻ってよく考えてみて、な」
俺がそう纏めたのだが、子供達は動こうとしない。
「どうした?部屋へ戻って良いよ」
首を傾げると、年嵩の少年…イースターが一歩前に出た。
「あの、僕はこのままで……このままが良いです。
僕も家族にして下さい」
イースターを皮切りに、皆がそのままが良いと言い出した。
「そんなに急いで決めなくても良いんだよ?」
そう言っても子供達は引かない。
「いえ、私は一緒が良いです」
「ボクも家族が良いです」
「ずっと一緒に居たいです」
口々に言う子供達。
「わかった、わかったから落ち着け。
じゃあ真名はこのままにしておくから。
ただいくつか約束してくれ」
俺は現状維持を望む子供に告げようと思っていた【約束事】を伝えた。
・真名が付いていることは秘密にする
・他の子には特にバラさない
・真名を解除したくなったら言う
・優越感を持たない
「優越感?」
首を傾げる子供達。
これが一番言いたいことなのだ。
「そう、真名を付けられたから、自分達は特別だと思わないように。
真名が付いていなくても、皆俺にとっては大事な家族なんだから」
自分達は真名で繋がった【家族】で、真名が付いていなくても【家族】だと言う言葉に、子供達が首を傾げる。
どう言えばわかりやすく伝わるのだろうと考えていたら、横に座っていた妻がわかりやすい例えを出してくれた。
「そうね、他の皆はいとことか親戚で、あなた達はこの人の子供…と言ったところかしら。
町に住んでいる人達は、妻である私の姉の旦那の血族?
つまり血は繋がっていなくても、皆親族になる…と言うのでなんとなく伝わるかしら?」
直接血は繋がっていなくても、戸籍上は親族ですからね、俺としてはとてもわかりやすい例えだ。
けど戸籍と言う概念のないこの世界で通じるかと思ったが、ざっくりと言いたいことと言うか、雰囲気は伝わったようだ。
「難しく考えなくても良いんじゃない?
全員ジョニーの家族で、繋がりが深くても浅くても、そんなの関係ないよ。
ジョニーは皆を大事にしてくれるし、幸せにしてくれるんだから」
チャックがデレた!
……ではなく、その言葉に、子供達は深く頷いた。
うーん、実際は真名が付いていないルシーや、名をつけていないヨーコーは、微妙に家族枠から外れているんだけど、それは口にしてはいけないってちゃんとわかってる。
とりあえず全員このままでいる事になった。
………イースター島とシーラカンスは変えたかったな…………。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる