正義の味方とは言いません。妻と幸せに過ごすために掃除させていただきます

七地潮

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新しい家族が増えました

21 付けるつもりは無かったのだが

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「いや、付けるつもりは無かったんだが」
夕食後、子供達は笑顔で各自の部屋へ戻って行った。
残った俺達は、居間へ場所を移し、只今謝罪の真っ最中なのだ。

「……子供達は皆助けられて、私達に感謝をしています。
信頼した状態です」
「そこで名前まで付けてくれるって言うんだから、心のガード緩みまくりだろう。
ジョニーはジョニーで心の底から全ての子供を幸せにしたいって思ってたんだろうから、繋がりも簡単に出来るよな」
アインが責めるように言っているところで、コニーが助け舟を出してくれた。

ぶっちゃけ、こんな人数に…ってテキトーな所が有ったのは有ったのだが、子供達を幸せにしたいって思いは嘘偽りない。

「ジョニーの場合深く考えてない所があるから」
「我らの時は知らなかった故仕方ないにせよ、少しばかり迂闊だとは言えるな」
チャックとブルースが呆れ顔で言う、辛辣だ。

「でも父ちゃんだから」
シナトラのセリフに、全員が頷いてしまった。
…それで済ませられる俺って…………。

「まあ、真名は解除できますからね、一応子供達に説明してからどうするか決めましょう」
そうだった、真名を付けたからって、解除して新たに付け直すことが出来るんだった。

亜人化させる【名付け】よりは簡単らしい。
どこがかはわからないけど、アインが言うならそこまで深刻ではないのだろう。

因みに、妻にも付けた真名を告げてはないんだが、色々察しているようだ。
ちょーっとばかり視線が冷たい。
子供達がくるのを待つ間にボソッと、
「島の名前はどうかと………」
と呟かれてしまった。
うん、俺もそう思うよ。



居間へ来た子供達に、真名を付けてしまった事、俺と深い繋がりができた事を伝えた。

「ここにいる皆は、俺と繋がりができた、俺の家族だ。
繋がりができたから、お互いの気持ちがなんとなく分かるようになったし、どこに居るかがおおよそだがわかる。
それと、繋がりが深いから、俺が生きている限り、寿命が来るまでは死なない。
どんな状態になっても復活させることができる。
指の一本、髪の毛の一筋からでも、望むなら生き返らせることができる。
つまりずっと一緒に過ごして行くと言う事だから、俺は真名を付けた相手は皆家族として一緒に生きていこうと思っている」

俺の話を黙って聞いていた子供達だが、話が一区切りついたタイミングを見て、一番年嵩の少年が声をかけてきた。

「あの…ずっと、ずっと一緒に居られるのですか?」
「ああ、一緒だ。
だからと言ってこの家に住む必要はない。
そこに居るデイビッドだって家族だけど、今は結婚して別の家で暮らしている。
勿論他の子達も自立できるまで、最後まで責任をもって面倒を見るけど、君達はどの子よりも俺と深く繋がったんだ」

俺の言葉に子供達がすっごい笑顔になった。
「私達が選ばれたのですか?」
うわっ、答えにくい事を聞いてこられた。
でも嘘や誤魔化しはダメだよな。

「それはすまん、偶然だ」
あ、子供達の笑顔が消えてしまった。
ショックを受けちゃったかな。
俺が焦っていると、アインが口を開けた。

「偶然でしょうけど、ただの偶然では無いと思いますよ。
きっと何かの力が働いて、あなた達だけが真名を付けられたのでしょう」
アインの言葉に子供達の顔が再び輝く。
でも俺には聞こえたよ「多分」って小さな囁きが。

「でもね、真名には一つ怖いところも有るんだよ。
ジョニーが『こうしろ!』って命令したら逆らえないんだ。
例えそれがどんな事でも……」
コニーが【どんな事】を明言しなかったから、それぞれに怖い考えを思い浮かべただろう子供達の笑顔がまた消えた。

「大丈夫だよ、父ちゃんは命令なんかしないから」
「そうだね、この人って人に命令するくらいなら、全部自分でやっちゃうから」
シナトラとチャックの言葉に、子供達の顔色が戻る。

「まあ、命を握られているって言うのは間違いないがな」
ブルースの言葉に三たび……って、なにこれ、飴と鞭作戦か何か?
子供達を揺さぶり過ぎだろ?

「とにかく、そんな深い繋がりは嫌だって言うなら、解除して普通の名前を付け直すから。
部屋へ戻ってよく考えてみて、な」

俺がそう纏めたのだが、子供達は動こうとしない。
「どうした?部屋へ戻って良いよ」
首を傾げると、年嵩の少年…イースターが一歩前に出た。

「あの、僕はこのままで……このままが良いです。
僕も家族にして下さい」
イースターを皮切りに、皆がそのままが良いと言い出した。

「そんなに急いで決めなくても良いんだよ?」
そう言っても子供達は引かない。
「いえ、私は一緒が良いです」
「ボクも家族が良いです」
「ずっと一緒に居たいです」
口々に言う子供達。

「わかった、わかったから落ち着け。
じゃあ真名はこのままにしておくから。
ただいくつか約束してくれ」

俺は現状維持を望む子供に告げようと思っていた【約束事】を伝えた。

・真名が付いていることは秘密にする
・他の子には特にバラさない
・真名を解除したくなったら言う
・優越感を持たない

「優越感?」
首を傾げる子供達。
これが一番言いたいことなのだ。

「そう、真名を付けられたから、自分達は特別だと思わないように。
真名が付いていなくても、皆俺にとっては大事な家族なんだから」

自分達は真名で繋がった【家族】で、真名が付いていなくても【家族】だと言う言葉に、子供達が首を傾げる。
どう言えばわかりやすく伝わるのだろうと考えていたら、横に座っていた妻がわかりやすい例えを出してくれた。

「そうね、他の皆はいとことか親戚で、あなた達はこの人の子供…と言ったところかしら。
町に住んでいる人達は、妻である私の姉の旦那の血族?
つまり血は繋がっていなくても、皆親族になる…と言うのでなんとなく伝わるかしら?」

直接血は繋がっていなくても、戸籍上は親族ですからね、俺としてはとてもわかりやすい例えだ。
けど戸籍と言う概念のないこの世界で通じるかと思ったが、ざっくりと言いたいことと言うか、雰囲気は伝わったようだ。

「難しく考えなくても良いんじゃない?
全員ジョニーの家族で、繋がりが深くても浅くても、そんなの関係ないよ。
ジョニーは皆を大事にしてくれるし、幸せにしてくれるんだから」

チャックがデレた!
……ではなく、その言葉に、子供達は深く頷いた。

うーん、実際は真名が付いていないルシーや、名をつけていないヨーコーは、微妙に家族枠から外れているんだけど、それは口にしてはいけないってちゃんとわかってる。

とりあえず全員このままでいる事になった。

………イースター島とシーラカンスは変えたかったな…………。







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