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ホルノーン
14 地下室で
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残酷な表現があります。
ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー
ブルース達と別れて私が向かったのは、平家建てで敷地面積をたっぷりと取った広い屋敷です。
この国の医位の位のトップのお屋敷だそうです。
「ここか?子供が運ばれたって家は」
「地図によるとそうですね。
ちょっと待って下さいね」
ティちゃんに屋敷の見取り図を表示し、そこに人の気配を示してもらいました。
今いる場所から右側に眠っている人の気配が複数名、多分この屋敷のメイドなどの雇われた人達だと思われます。
同じサイズの狭い部屋がいくつか並んでいて、そこに人物を示すマーカーが有ります。
まだ夜明けまでには時間がありますから、普通ならぐっすりと寝入っている時間でしょう。
左側は5つのマーカーが点在し、移動しているのは、多分見張りでしょうか。
決まったルートを行き来しているようです。
端の部屋では4つのマーカーが固まっています。
多分ここに子供と、この家の主人である医位の男性がいるのでしょう。
その部屋を覗き込もうにも、窓がガラスではないこの世界では、隙間から見える範囲は限られていて、隅々まで見えません。
それでも部屋の灯りは消えていますし、人の気配がしないことはわかります。
「地下室が有るのか?」
「人目につかないところで何をやっているのでしょうね」
「医位って医者のトップみたいなやつなんだろ?
解剖してホルマリン漬けとかにしてたりして」
「ジョージ先輩……」
私も人体実験なんて言葉が頭に浮かびましたけど、口にするのは憚れます。
「すまん、不謹慎だった」
気まずい空気に頭を下げる先輩。
「ここに来るまでに時間が掛かっています。
素早く助けて逃げましょう」
空気を変える様にアインが提案します。
「先ずは騒ぎが起きても家人が起きてこない様に、今寝ている使用人達に、薬で更に深い眠りについてもらいましょう。
これはチャックにお任せします」
頷くチャック。
「見張りはシナトラ、あなたと私が行きましょう」
「倒せば良いんだよね?」
「水魔法で捕らえますから、殴って気絶させて下さい。
手足を絞って別々の部屋に押し込めておきましょう」
「斬っちゃあダメなの?」
「見張りは雇われているだけでしょうから、殺さないでおきましょう」
「は~い」
斬ってはダメだと言われて、少しつまらなそうにするシナトラ。
人殺しはダメですよ。
「地下へはジョニーとジョージさんにお任せします。
多様な魔法の使えるジョニーが、一番臨機応変でしょうし、ジョージさんが連携取れるのはジョニーでしょうから」
「あー、まあ、初対面の人より、ジョニーとの方がやり易いな。
兎に角敵を殺さない程度にぶちのめせば良いんだよな?」
「まずは交渉してからにして下さい」
やる気満々な先輩ですけど、話し合いで解決できるなら、それに越したことはありませんからね……一応建前としてですが。
作戦は決まったので、三手に分かれて行動開始です。
私と先輩は、窓から雨戸を取り外し、そこから侵入、地下室の入り口を探しましたけど、あっさりと見つかりました。
だって床にある入り口の扉が空いてましたから。
なるべく音を立てない様に地下へ続く階段を降りると、そこには三つの扉が有りました。
一つ目の扉を慎重に開けると、そこは大きなベッドのある部屋でした。
大人が4、5人寝ても余裕のありそうな、特注サイズのそれが、部屋の中に置かれているだけです。
二つ目の部屋は………。
扉を開ける前から嫌な予感はしていました。
臭いが漏れてきていましたから。
「うわっ!……なんだよコレ、さっきの冗談がシャレじゃねぇって事か?」
そこに居たのは……そこにあったのは、液体の入った瓶詰めになったり、蝋で塗り固められた若い男女の成れの果ての姿でした。
10人以上のその姿は、半数の方が手足の無い状態です。
「コレって生まれつきとかじゃ無いよな」
「ええ、多分………。
傷口から見て、切断した後魔法で処理を施しているのだと思います」
余りにも残酷な室内に呆然としている私の肩を、先輩が叩きます。
「もう一つの部屋に居るんだよな、こんなクソみたいな事した奴ら。
早く行かんと間に合わなくなるぞ」
「!!」
そうです、呆けている暇は無いです。
私達は三つ目の扉を乱暴に押し開け、中に踏み入りました。
ベッドに横たわる女性を囲む様に居た3人の男が、一斉に振り向き、口々に「誰だ!」「何しに来た!」と怒鳴ります。
部屋に入って来たのが若い男性二人だと見て、自分達が数で有利だと思ったのか、肥えた男が余裕を持った顔で声をかけて来ます。
「何だ貴様らは、私達は今からお楽しみだというのに、水を刺しに来たのか?
それとも仲間に入れて欲しいのか?」
一番年配の男が言います。
「見張り達が通したと言うことは、この集まりに混ざりたいと言うことなのかね」
白髪の男が言います。
「おや、仲間に入れて欲しくて来たのなら、この崇高なる趣味を理解しうる新たな仲間と言うことになりますな」
顎髭を撫でながら厳つい体つきの男が言います。
「………これから何をするのか詳しくお尋ねしても宜しいですか?」
下手に出て尋ねてみると、男達は嬉々として話し出しました。
曰く 生き物は身体だけで美しい
曰く 余分な手足は要らない
曰く 耳障りの良い言葉を紡ぐ舌は要らない
曰く 余分な物を削ぎ落とした完全なる美と交わる事が崇高である
曰く 未成熟な程尊くある
「私が綺麗に余分な物を削ぎ落として…」
「吾輩が美しく処理をする事で更に美を際立たせるのだよ」
「それに見たまえ、今回は特に美しい。
形の崩れていない乳房、くびれた腰、美しい尻、ああ……疼く、早く味わいたい物だ」
「くくくく、早くしないと翁は待ちきれなさそうだな」
「それでは施術を始めよう。
君達もそこで、完璧なる美が完成していく様を見物していたまえ」
狂った笑顔を浮かべた男達は、自分達の思考に浸かり、こちらに背を向け、ベッドの上で気を失っている少女に手を伸ばそうとした。
私はその背中に風魔法をぶち当て壁に激突させ、うめく3人に歩み寄る。
横には鉄パイプを握りしめた先輩も一緒だ………
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