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ホルノーン

9 潜入(ブルース・前編)

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後半第三者視点となっております



ーーーーー〈切り取り線〉ーーーーー


ワープでババ様の所へ移動しました。
ブルース達はここで馬を借り、ホルノーンの北の施設へ向かいます。
私達は以前行った結界の建物までワープして、そこから徒歩です。

無事に子供を保護した後は、またババ様の所へ集合、そしてワープで帰宅の予定です。

なぜブルース達が遠い場所へ行くのかって……ワープかバスで移動している私は、相変わらず馬に乗れないからです……。
ましてや、子供と相乗りなんて無茶振りですからね。

因みにシナトラも馬は乗れるけど、乗れるだけとでも言いましょうか…。
走った方がマシだと思います。
チャックも乗れません。
以前乗馬の練習をした時、軽過ぎて振り落とされてしまいましたから…。
いつも空を飛ぶか、私とバスに相乗りかで移動していますからね。
アインは逆に歩かせてすみませんって感じなのですけど、本人気にしていないので良かったです。


山脈の東に来たら、クルトゥスさんとも念話が繋がる様になりました。
スムーズに連絡が取れるのは良いのですけど、高い山脈を挟むと通じないって、電波の様ですね…しかも携帯が出始めた頃の。

施設はどちらも町外れに有るので、取り敢えず町に入り、宿を取り、時間を調整して潜入します。
以前の世界と違って、前金さえ払っておけば、身元不明でも部屋は取れますから、子供を保護した後は戻らず撤収します。
身元がバレると困りますから、荷物も全部持ち歩きですよ。
マジックバッグ様様ですね。


時間になり、宿を出て施設へ向かいます。
監視カメラが有るでなし、電流の流れる有刺鉄線が有るでなし、ドーベルマンとかが敷地内を彷徨いている訳でなし…敷地内へ入るのはラクショーでした。

一応【一時的に姿が消せる薬】を飲んで侵入しましたけど、見張りもいなくて拍子抜けですね。

敷地内へ入った所で一旦身を隠し、ブルースとクルトゥスさんへ念話を送ります。

《ジョニーです。
こちらは見張りもいなく、敷地内へ侵入済みました。
施設の部屋から灯りが漏れていますから、職員は起きていそうです》

《クルトゥスです。
こちらは灯りが消えているから、職員も寝ている様ですね。
ただ見張りは居て、職員二人が見回っています》

クルトゥスさんが侵入するのは一番多い6人の子供の居る施設で、職員は通常8人ですけど、明日【出荷】なので今日は増員して、10人の職員が居るそうです。
私達が作戦に加わった事で、襲撃人員に少し余裕が出来たので、大きな施設に向かうチームの人数を増員できていて良かったです。


《我の所は職員は寝ておるし、見張りも居ぬ。
このまま職員の部屋へ眠り薬を投げ込むぞ》

《了解、くれぐれも油断しない様に》

《誰に言っておる、お前こそ怪我などするなよ。
それとジョニーは迂闊な所が有るから十分注意しろ》

《ははは、了解です》

《では健闘を祈る》







灯りの消えた施設に侵入したブルース達は、リリー印の【一時的に姿を消す薬】で姿を隠し、手分けをして施設内を探索した。
施設と言っても、その建物は木造の普通の民家だ。
中が見えない様に、高い塀で敷地を囲い、入り口には【特殊保養所】との看板がかけられている。

この世界で【特殊保養所】とは、命に関わる程ではないが、感染する病に侵された病人の療養所の事だ。
他者が入って来れない様にそう銘打っているのだろう。
その施設の二階の個室で、職員は寝息を立てている。

「前情報通り、職員は4人みたいだね、みなぐっすりと眠ってるよ」
空を飛び建物の外から偵察していたデイビッドが報告する。
「では手筈通り眠り薬を投げ込んできてくれ」
「了解」

今は眠っていても、物音で目が覚めると困るので、眠り薬で更に深く眠らせる。
下手に捉えると目を覚まし、思わぬ事態を引き起こす恐れが有るので、明日の昼過ぎまで目覚めぬ様に、かなり強烈な眠り薬を作ってもらっているのだ。

子供達は半地下の個室で眠っていた。
ぱっと見怪我も見当たらず、健康状態も悪くはなさそうだ。
12歳くらいの女の子と、8歳くらいの男の子が、質素なベッドの上で眠っている。

「起きて見知らぬ大人の男が居たら、流石に驚いて大声出すかもね」
「寝ておるのだからそっと運べば大丈夫では無いか?」
デイビッドの言葉にブルースが楽天的に答える。

「いや、無理でしょ。
ここは任せて」
大人の魔王の姿のコニーが、変化を解いて幼児の姿に戻る。
「この姿ならまず悲鳴は上がらないでしょ。
で、先に女の子を起こして、その子と一緒に男の子を起こせばバッチリだと思うよ」
「それなら驚いても悲鳴をあげることも無いだろうから、大丈夫っぽいね」
「ふむ、子供は子供同士か」
作戦が決まり、コニーはそっと部屋へ入り、女の子の眠るベッドへ近づく。

「ねえ、お姉ちゃん、起きて、起きて」
女の子の耳元でコニーが声をかけると、女の子は目を擦り、声のする方を見た。

「あれ、君誰?
新しくここに来た子?」
「ううん、ボクお姉ちゃん達を助けに来たんだよ」
コニーがニコッと笑って言うと、女の子は目を丸くした。

「わー、君、可愛いね、天使みたい」
「ブフッ!!」
「誰!」

思わず吹き出し声に、女の子は部屋の入り口を見ると、背の高い男性が2人居た。
「新しい職員さんですか?」
「いえ、違いますよ、そちらの方……その子の言った様に、君達を助けに来ました」
腹を押さえ笑いを堪えているブルースを無視して、デイビッドは威圧感をかけない様に、笑顔を浮かべて丁寧な言葉を使う。

「助けに?」
「そう、お姉ちゃんと隣の部屋のお兄ちゃん、明日になると怖い人の所へ連れて行かれちゃうから、逃げちゃおう!」
コニーが言うと、女の子は俯いて「やっぱり…」と呟いた。






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