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来訪者・2
しおりを挟む広場に行ってみると九人の人族?が居た。
町の魔族も集まっている。
ホッティの家に行っていたシルジットも居る。
そのシルジットが来訪者の中に見知った顔を見つけたようだ。
「ロア先生、それにピューレも…どうされたのですか?」
「おお、久しぶりだな、シルジット。コウイチ様の役に立っているかい?」
ロアと呼ばれた老人が、ニコニコ笑いながらシルジットの肩をポンと叩く。
ピューレと呼ばれた老婦人も「ご無沙汰しています」と頭を下げている。
サカユも合わせて十人、うち三人はご年配、中年の方が五人、若者は二人だ。
皆魔族って言うか純血種なんだよね。
で、あの見た目という事は、エルフのパターンで魔力使い過ぎて老けているのかな。
「コウイチ様、紹介します。
私に色々と魔族の事や薬草の知識を与えて下さったロア先生と、こちらは城のメイド長のピューレです」
シルジットに紹介された二人が頭を下げる。
「初めまして、書庫番のロア・ババです」
「メイド長を賜っておりますピューレと申します」
「初めまして……あの、先程サカユさんに聞いたのですけど、皆さん……」
「ええ、ここに居る皆純血種です」
ロアの言葉にざわつく。
一番驚いて居るのはシルジットだ。
「は?……え?………先生が……?
だって年取ってますよね?
初めて会った子供の頃より頭も白いし、純血種は人族と同じ速度で年をとる事は無いと仰ってたではないですか」
シルジットは子供の頃から城に出入りしていたそうだから、顔見知りも居るだろうけど、確かに長年生きる純血種が人族と同じ成長速度は無いんじゃあないのかな、元の寿命も全然違うんだし。
「オホホホ、魔法で見た目変えていますから」
ピューレさんのセリフにシルジットが返す。
「幻覚の魔法ですか?
しかしその魔法を長期間、多人数にかけるのはいくら純血種と言えども無理なのでは?」
「幻覚魔法ではないですよ、皆にかけているのは水魔法」
「ほう、水魔法……詳しく教えて頂けますか?」
好奇心旺盛なガーリックが近づいて来た。
「あら、お久しぶり、貴方も居たのね」
ピューレさんが親しげに声をかける。
ガーリックは暫く考え込んだ後、はっとした。
「もしかして貴女あの時のワーウルフですか?」
「あら、本当に気づかなかったの?
ならこの人もわからない?」
言われてロアさんを見ながら考えて
「ひょっとしてリザードマン?」
「当たり」
ニヤリと笑ったロアの表情はイタズラ成功みたいな顔だ。
「へー、ガームが連れて来たあの二人ねぇ。
それで先程言っていた水魔法って?」
ガーリックの問いかけにピューレさんが答える。
「ガーム様が亡くなってからは貴方、城にあまり来なくなったでしょう。
私達はそのまま城に居るために、人族に紛れて生きていく事にしたの。
それには変わらない外見は問題あるでしょ?
だから私の水魔法で身体から徐々に水分を抜く魔法を考案したのよ。
三十年ほどかけて水分を抜いて、そこで引退。
魔法は解除すると一年も経たずに本来の姿に戻るから、四、五年間を置いて『あの人の子供です』とか『孫です』ってまた職場に復帰するの。
どう?これなら人族に紛れて居られるでしょ?」
「髪の色や肌の色ならある程度変えれるから、バレる事は無かったよ」
二人の説明を聞いて「へー」って思う。
確かに身体から水分抜けると肌はパサつくし、皺も出来るだろうし、髪の色白く出来るなら年取ったように見えるよね。
成る程、変幻や幻覚の魔法使わなくても見た目変えれるんだ。
魔法って使い方次第なんだね。
「しかし全員純血種だったのですか……知りませんでした」
シルジットの言葉にロアが返す。
「いえいえ、ここに来たのはほんの一部ですよ。
異世界からの来訪者の方が魔族の為の町を作るのなら、お手伝いしようと思いましてね。
手伝いたい者と移り住みたい者を連れて来ました。
城にはまだまだ沢山残って居ますよ」
「なぜそんなに城に純血種の方がいらっしゃるのですか?」
しかも人に変化して老化まで擬態して。
「そうですね……吸血鬼の方ならわかるでしょう?」
ロアがガーリックを見ながら言った。
そう言えばガーリック、前に言ってたよね、寂しいって。
「以前の魔族は今よりもっと本能に忠実でした。
そこで知恵を持つ純血種として生まれた私は居場所が無かったのです。
ガーム様に出会って城へ招いてもらって、それだけで嬉しかったのですけど、城は知識の宝庫だったのです!
素晴らしいですよ、城の書庫!
因みに私の研究した物も書架として置かせていただいていますし」
おおぅ、本オタですか。
応援ありがとうございます!
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