79 / 94
チョココロネの置き土産
しおりを挟むか……可愛い…。
母性本能と言うか父性本能と言うのか、母さん的に言うなら『ハートの真ん中をズキュンと撃ち抜かれました』だよ。
暫くモゾモゾしてたけど、収まりが良い場所を見つけたのか、嬉しそうに笑って顔を埋めてくる。
赤ちゃんって身を守る為に可愛く生まれるって聞いたけど、本当に可愛い。
俺が守ってあげないと!
って気持ちになるよ。
「あー、良かった良かった、コーに懐いてくれた。
ソレの親が海獣に食われて死んじまってさ、このままじゃせっかく生まれたコイツも死んじゃうだろ。
だから連れてきたんだ、コーなら何とかしてくれるかなってさ」
「いやいや、ちょっと待って、計算的に生まれたてでしょ?
確か母親から栄養貰う時期なんじゃ無いの?」
俺は母乳とか出ないし、子育てどころか、一人っ子だから年下の子の世話もした事無いのに、無茶振りだよ。
「んー、何か大丈夫?
コイツちょーっと変わってて、引っ付いてるだけで良いみたい」
ドユコト??
頭の中はてなマークだらけにしているとガーリックが聞いてきた。
「もしかしてくっつく事で養分吸収してるとか?」
「何だかそれっぽいな。
だって3日ほど何も口にしてないぜ、ソイツ」
んーっと、イメージ的に(と言うか母さん独自の蘊蓄的に)吸血鬼が血と一緒にイド…生気を吸って生きてるみたいに、くっつく事でその相手の生気とかエネルギー吸収してるって事かな?
「ん?それってくっつかれてるコーがヤバく無いの?」
人垣の中にいたスキヤキの言葉に他の皆の視線が一気に集まる。
「いや、大丈夫じゃない?
3日ほどくっつけてたけど何のダメージも無かったし、飯も普通に食えるし、平気平気」
の……ノーテンキだ………。
『アルジ、気分とか悪くないか?』
肩に居るアンズが心配気に聞いてくる。
「今のところ別に何ともないよ」
「今は大丈夫でも、長時間はまずいのではないのか?」
「そればっかりは時間が経たないとわからないかな」
ガーリックも心配気だけど、時間が経たないとどうなるかはわかんないよね。
そんなやり取りの間も食べ続けていたチョココロネは、テーブルの上の食料が無くなったのを見て肩を落とし
「腹八分目だけどコーに子供も渡したし一旦帰るわ」
うわー、もう超マイペース!
「え?本当にこの子置いていくの?」
「まー、頑張ってな」
「いやいやいや、様子見ないとわかんないのに行っちゃうの?」
「俺が3日くっつけてて大丈夫だったんだから、大丈夫だよ」
いやいやいや、チョココロネさん、俺はあなたみたいに蓄え(皮下脂肪)がたっぷりとあるわけじゃあないんですからね?
チョココロネだからなんともなかっただけ、って事は充分有り得るじゃん?
こっちがあたふたしているのに、「大丈夫、大丈夫」と笑いながら近づいて来て、バシバシと背中を叩いた後、
「んじゃ!」
と、大っきな体に不似合いな素早さで食堂から出て行った。
唖然としていると、にゅっと顔を出して、
「あ、お土産は馬の女の子に渡したからな。
また来るわ」
言いたい事だけ言って去って行った。
余りにも一方的で、皆ポカーーーンですよ。
本当に帰っちゃったよ。
川に飛び込む水音が聞こえてきたもん。
「…………どうしょうか……」
「とりあえずコーは戻ってきたばかりなんだし休めよ。
その間俺が抱っこしとくわ」
オニギリが申し出てくれたので、ありがたく一旦休ませてもらおうと子供を渡そうとしたんだけど……
「は……離れない…………」
体長四十センチも無いのにどこにそんな力が有るのか、絶対離れないとばかりにしがみついてる。
「貸しなさいよ、アタシが抱っこしてあげるから」
カマメシがちょっと強引に……と言うか力任せに剥ぎ取ろとしたけど、全然離れない。
「アナタだと怖いのよ、あたしの方が適任よ」
ピータンが更に力を入れて引っ張ると…………しがみつかれている俺の服が破けた……。
破けた服ごと抱っこしょうとしたんだけど……
「……ふぅえ………ふゃ~~ん…ふゃ~~~ん……ふゃ~~」
「あらやだ、泣き出しちゃった!
やぁだぁ、ほらほら泣かないの」
ピータンが一生懸命あやすけど泣き声は大きくなるばかり。
「ほら見てみなさい、アナタの方が怖いのよ。
アタシに寄越しなさい」
カマメシがひったくるけど、案の定……
「ふぎゃ~~!ふぎゃーーーー!」
より激しく泣き出した。
まぁ捕食者と被食者だしね。
その後誰が抱っこしても一向に泣き止まない。
「これは他の奴らじゃダメなんじゃ無いの」
ガーリックが取り上げて俺に戻すと、ピタリと泣き止んだ……だと?
完全に気に入られてる?
「暫くコーが面倒見てやれよな」
やれやれと言う感じにオニギリが言う。
えー、ハーレムも無く、彼女も出来ないうちから子持ちですかー?
まぁ可愛いけど、守ってあげないとと思うけど、一年で大人になるんだろうけど、十七歳で子持ちですかー?
俺、新品なのに子持ちなんですかー?
モヤっと感が止まりません……。
白くてモチモチしててくっついて来る子供の名前は、モチロンおもちちゃんです。
因みに小ちゃいのが付いてる男の子です。
しかし子持ち………………
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
異世界のリサイクルガチャスキルで伝説作ります!?~無能領主の開拓記~
AKISIRO
ファンタジー
ガルフ・ライクドは領主である父親の死後、領地を受け継ぐ事になった。
だがそこには問題があり。
まず、食料が枯渇した事、武具がない事、国に税金を納めていない事。冒険者ギルドの怠慢等。建物の老朽化問題。
ガルフは何も知識がない状態で、無能領主として問題を解決しなくてはいけなかった。
この世界の住民は1人につき1つのスキルが与えられる。
ガルフのスキルはリサイクルガチャという意味不明の物で使用方法が分からなかった。
領地が自分の物になった事で、いらないものをどう処理しようかと考えた時、リサイクルガチャが発動する。
それは、物をリサイクルしてガチャ券を得るという物だ。
ガチャからはS・A・B・C・Dランクの種類が。
武器、道具、アイテム、食料、人間、モンスター等々が出現していき。それ等を利用して、領地の再開拓を始めるのだが。
隣の領地の侵略、魔王軍の活性化等、問題が発生し。
ガルフの苦難は続いていき。
武器を握ると性格に問題が発生するガルフ。
馬鹿にされて育った領主の息子の復讐劇が開幕する。
※他サイト様にても投稿しています。
あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!
ねむたん
ファンタジー
私は砂漠の町で家族と一緒に暮らしていた。そのうち前世のある記憶が蘇る。あの日本の味。温かい味噌汁、焼き魚、醤油で整えた料理——すべてが懐かしくて、恋しくてたまらなかった。
私はその気持ちを家族に打ち明けた。前世の記憶を持っていること、そして何より、あの日本の食文化が恋しいことを。家族は私の決意を理解し、旅立ちを応援してくれた。私は幼馴染のカリムと共に、異国の地で新しい食材や文化を探しに行くことに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる