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色男はおねぇなネコ
しおりを挟むドラゴンの住む山の麓に着いた時、何処からともなく声をかけられた。
「やっと来た。遅かったのね」
キョロキョロと辺りを見回しても誰も居ない。
「空耳?」
首を傾げていると足に何かが当たった。
下を見て見ると、一匹の猫が俺の足に頭突きをしている。
あ、可愛い。
この灰色に濃いグレーの模様、何だっけ?
アメショとか言ったかなぁ……アメリカンショートボブだっけ?
猫は尻尾をぴーんと立てて擦り寄って来た。
そのぴんとした尻尾だけで可愛い。
思わずデレデレしていたら、
『アルジに近寄るな!』
肩に乗ってたアンズが猫の目の前に飛び降りて威嚇しだした。
え?何?焼きもち?
可愛いなぁ、アンズちゃん。
大丈夫、俺の一番の癒しは君だよ。
「本性を表したら?
可愛子ぶってないでさ」
ガーリックも近寄って来る。
「えー、アタシのこの可愛い姿、気に入らないの?
仕方ないわねぇ」
え?猫が喋った?
ああ、魔族の人なのね。
納得していると、猫はくるんと一回転して人型になった。
おお、和風イケメン。
いや和風だから色男の方が合ってるかな?
なのに言葉が…………。
「ずっと待ってたのよ、やっと来た。
お待ちになっているから行きましょう」
言いながら、俺の背中をグイグイ押す。
「いや、ちょっと待って、いきなり何なの一体」
「えー、今言ったじゃない、貴方が来るのを待っていた主様から、道案内を申しつかった可愛らしいニャンコよ」
いや、絶対そんな長文言ってないよね?
『触るなって!』
アンズが猫に飛びかかるけど、ひらりと躱された。
「うーん、私的にもあまりコーに近づかないで欲しいかな」
何だろう、このアンズとガーリックの警戒は。
「わかったわよ、近づかなきゃいいんでしょ?
なら私は先に行くから、後ろからちゃんと着いて来てよね」
あー怖い怖い、と言いながらズンズンと道無き道を進んで行く。
「ちょっと待ったー、勝手な事言って勝手に進めないで。
主様って多分ドラゴンの事なんでしょ?
勿論会いに来たのだから道案内は有り難いけど、こっちにも都合が有るんだから一先ず待って!」
慌てて止めると「えー」と不満そうにしながらも止まってくれた。
「わかったわよー。
んもー、でも早くしてね。
ねー、早くー、は、や、くぅ~」
何だろう、この色男のオネェな猫、イラッとするんだけど……。
アンズを抱きしめて気持ちを落ち着け、山を登る組と居残り組に分けて僕達は山へ入って行った。
*****
道無き道を進み続ける事何時間?日が暮れちゃったよ。
「ほらー、早くしないから夜になっちゃったじゃない。
夜目も利かないでしょうから、今日はここで休みましょう」
いや、無理だって。
道も無い山をすいすい登るなんて普通の人間には無理だって!
……まあここに居る普通の人間って俺だけだけどね。
足自慢の三人は平気な顔をしているし、ガーリックは時に空を飛びながらなのでピンピンしている。
アンズは僕の肩の上だし。
へばってるのはおれだけで、俺のペースに合わせてるから遅くなったのはわかるけど、俺は人間なのですよ。
この世界の人族より体力有るとしても、所詮人間だものなんですよ。
『アルジ、大丈夫?
肉取ってこようか?』
「……食事の作り方……シルに教わった…………ボク作ろうか……?」
アンズやホッティに気を使わせてしまったけど、食事より何より……
「ごめん、疲れたからとりあえず寝る。
朝しっかり食べるからご飯はその時にお願い」
とにかく疲れた、食欲も湧かないくらい疲れた。
おやすみなさい…………。
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