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上を向いて歩こうよ
しおりを挟むオーガの住処に着いた。
今までの種族の住処と違って、村と言うか集落っぽい。
きちんと家が立っているからそう見えるのかな?
魔族って基本群れないんじゃなかったっけ?
ワーウルフは狼の習性で群れでいるってのはわかるけど、オーガも群れなの?
「師匠の元で修行しながら皆の家作ったんだけど、こうして見るとまだまだだなぁ」
「修行中だったから未熟だったわけだな。
落ち着いたら建て直してやるのも良いわけだろ?」
「ついつい近くに建てたけど、問題なさそうだな」
会話からして、元々バラバラに住んでたのを、オニギリ達が家を提供した事で近くに住む様になったのかな?
「そうだな、町作りが終わったら……いや、皆で町に行くなら問題ないのか?」
「そう言うわけだな。
完璧な皆の家を町に作ってやればいいわけだ!」
初期に建てた物で満足がいってないから、自分達の満足の為にも交渉頑張れと励まされた。
外で騒ぐ声が聞こえたのか、家の中から数人のオーガが出て来る。
うん、鬼だ。見事にオーガだ。
『よう、お前ら戻って来た…………』
手を上げて近づいて来ていたオーガ達はピタリと立ち止まって固まった。
どうしたんだろう?
こちらも近寄らず立ち止まると、オーガ達は後退りながら震える指でこちらを指差す。
『お……お前ら、なんて奴を連れて来てんだ!』
吸血鬼だ!吸血鬼が居るぞ!皆家から出るな!
口々に叫びながら逃げて行くオーガ。
「あー、やっぱりこう言う反応になるわけ」
「おーい、この吸血鬼は俺らの仲間だから怖がる事無いぞー!」
逃げ惑うオーガにオニギリが声をかけるも、一番体格の良い若者以外家に隠れてしまった。
『そ…そんな事言って騙してないだろうな……』
「俺らがお前ら騙してどうする。
ここに居る他の奴も皆仲間だ」
他の奴?と言いながら順番に視線を巡らす。
オニギリ、トンソク、ガーリック、サクラにワーウルフ、シルジット達人族、俺、そして俺の腕で視線が止まる。
『………!!ス…スライ…ム…………』
…言いながら気を失って倒れてしまった?
「え?何で?スライムって見ただけで気を失うような物なの?」
「うん、そうだね、私だってスライムには勝てないよ。
だって吸う血液も無いし、雷魔法で攻撃しても効かないし」
おお、ガーリックって雷魔法使えるんだ!って今は置いといて、
「いや、流石に普段は気を失う事まではないさ。
シーズンバトルが終わったからじゃないのか?」
「バトルが終わると気が弱くなるの?」
「弱くなるって言うか、戦いで燃え尽きて、暫くは穏やかになるってわけだな」
俺の質問に答えるオニギリ兄弟。
そうか、気持ち的穏やかになって居るところに、前触れもなく吸血鬼が現れて、畳み掛けるようにスライムが現れたから許容量超えた……のか?
アンズってどこまで最強なんだろう…。
*****
気を失ったオーガを、オニギリとトンソクが、近くの家の中に抱えていく。
その時兄弟間でちょっと言い合いが有った。
〈どちらが足の方を持つか〉
って。
この世界、基本的に純血種しか服を着ていない。
服と言っても人族と交流が有れば人族から譲ってもらったり、またサクラの様に見よう見まねで自分で作るそうだ。
実際カニスキ達は体に布を巻いただけだったし。
で、純血種以外の魔族はと言うと、動物の毛皮を腰に巻いてるだけなんですよ。
イメージ的に昔話の挿絵の鬼みたいな感じ?
聞いてみたら
『戦う時に体に布なんか巻いてたら邪魔だろ?
掴んで引っ張られたりしたら転けちまうし』(ワーウルフさん、年齢不詳・談)
元より男性しか居ないってのも関係有るのかな?
そしてこのオーガ、マイクロミニって言うの?
普通に立ってる時も見えそうだったのに、それを上半身と足を持って運ぶとなったら、足を持つ人は丸見えになってしまうんですね、これが。
……え?パンツ?褌?そんなものある訳ない。
まぁ、トンソクが持ったんだけど、下を向くと見えるし、真っ直ぐ前を向いても視界に入るって言うから僕は言ってあげたよ。
「まぁ……上を向いて歩こうよ」
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