【完結】異世界に召喚されて勇者だと思ったのに【改訂版】

これからどうする？

外に出るとシルジット達は昼食の準備、アンズとオニギリ達は鍛錬していた。

『アルジーー』
嬉しそうに跳ねながら、アンズが近寄ってくる。

「おう、やっと出て来たか」
「やっぱ凄いな、スライムは。
初めて戦ったわけだけど、本気でやっても勝てる気がしねえ」
「いや、貴方達オーガも凄いですよ。
やはり種族的な力量の差は有るものなんですね」
話しながらオニギリ兄弟 、サクラも寄って来る。

「コウイチ様、昼食の準備しておきました。
ここで食べてから次に出発しましょう」
シルジット達もこちらを見ている。
近寄って来る三人と、こちらを見ている4人の視線に引きこもり君はたじろぎ、俺の後ろに隠れた。

「お待たせしました。
ワーウルフの純血種の方も一緒に同行してくれる事になりました。
ほぼ馬車には乗らず、後ろから走って付いて来る事になりますが、よろしくお願いします」

簡単に説明すると、皆は「ワーウルフなら走るよね」と納得してくれた。

「ほら、挨拶だけして。
後は俺の後ろに隠れてて良いし、ご飯も離れて食べて良いから」
肘でツンツンと突くと、俺の陰からおずおずと顔だけ出した。

「………………ホットドッグ……よろしく……」
名前だけ名乗ると、ピャッと引っ込んだ。

……え？勿論俺が名付けましたよ。
ワーウルフ→狼男→犬→ドック→……

名前は覚え易いに越した事はない！

「昼ご飯も用意出来てるし、食べたら出発しましょう。
……って次はどこに向かうの？」

海に行った後、オニギリ達と合流するまでしか予定してなかったから、次の行く先がわからない。

「この辺りに村とか無いんですか？」
森を移動して回っているだろうサクラとワーウルフに聞いてみる。

「私達魔族に町や村などは有りませんが、このまま北に向かうとエルフの森が有りますね」

エロフ！……いや、まずそう言うのはオヤクソクだよね。

「やっぱりエルフって居るんだ」
ファンタジーのテッパンだよねー。

「エルフは魔法を極める者として、研究の為に纏まって生活して居るそうですね」
シルジットが補足してくれる。

「エルフの女性は魔法研究、男性は狩の名手ですね。
長命ですが、スライムと同じ様に特殊な種族でシーズンが無く、繁殖する事がない為に増える事はないのですが、結束は固いそうですよ」
「進化種では無いから最初から女性が居るんですか？」
「そうですね」

残念世界だけど、やっぱりオヤクソクはオヤクソクなんだね。
魔法特化で弓使いで長生き、そしてちゃんと女の人が居る！
カレーが食べれるかもと思った時と別のテンションが上がるわ。

『エルフの森の先は、リザードマンが居る乾燥地帯が有るよな』
「そこから外れるけど、俺達の仲間が居る場所も北の方だよな」
「んでもってそのまま山に行くとドラゴンの住処ってわけだな」

「！！！！！」

エルフに続きドラゴン！
リザードマンとドラゴンは違うんだ。
てっきりリザードマンの純血種がドラゴンだと思ってた。

成る程成る程、ならこれからのルートはシルジット達に任せて、俺は…

「じゃあどう言う道筋で行くかは、皆んなで話し合っていただけますか？
俺はホットドックと洞窟の中でご飯食べて来ます」

いや、俺の後ろに隠れていたホットドックが、会話している間にどんどん身を縮ませて、とうとう両手で服をぎゅーって掴んでしがみついて来てしまった。
はっきり言って苦しいです。

「ホットドック……自分で付けてて何だけど長いし言いづらいな……。
ホッティ、俺がご飯持って行くから先に中に入ってて良いよ」

話かけるとうんうんと頷く。
…勢いつきすぎて背中に頭突きされてます……。

「………………」

握った服をくいくいって引っ張る。
何か言いたい事が有るのだろうけど、ますます首が締まりますよ。
君小柄でも純血種なんだから、基本的に力強いんだから、くいくいってつもりでも実際はギューギューって感じなんだからね、勘弁して…。

「……スライム……一緒に…………」
「ん？アンズに何か用が有るの？
アンズー、一緒に来て」
『何何、アルジ』
「いや、俺じゃなくてホッティが何か用が有るんだって。
一緒に来てくれる？」
『了解ー』

ぴょんぴょん弾みながら近づいて来たアンズは俺の肩に飛び乗り、スリスリと頬擦りしてくる。
可愛い。

俺は三人分の昼食を持って洞窟の中に戻って行った。