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城下町へ

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俺ってもしかして図太いのか、ぐっすり眠ってしまった。
んー、お腹すいたな。

昨日部屋に案内された時に言われた様に、ベッドサイドのテーブルに有るベルを鳴らしてみる。

チリンチリーン

とてもささやかな音が鳴ったけど、聞こえるのかなぁ。
この部屋実家のリビングの倍以上の広さがあるから、24畳以上あるだろうし、聞こえないんじゃないのかな?

あのしょっぱい女神様の世界だから魔道具とかないだろうし…とりあえずもっと鳴らしてみるか。

チリンチリンチリンチリンチリンチリンチリン…

ベルを振ってると遠くから走ってくる足音が聞こえ、ノックの後ドアが開かれた。

おお、異世界オヤクソクのメイドさん。
とても顔色が悪いけど、大丈夫かなぁ。

「大変お待たせ致して申し訳ございません!」
「いえ、大丈夫ですよ。
それより顔色が悪いですけど、そちらこそ大丈夫ですか?」
気を使って聞いてみたら、微妙な顔で視線を外された。

「ええ…まぁ…」
「でもよくこんな小さい音で聞こえますね」
足音の感じからかなり遠くから走って来たみたいだし凄いなあ、と思いつつベルを振ってみる。

チリンチリーン
バタン‼︎

え?嘘?倒れた⁈

「ちょっ⁉︎誰か…誰か来て下さーーい‼︎」
「どうされました?」
洗面器擬きを持ったメイドさんが入って来て中の様子を見て全てを悟ったように冷静に言った。
「そのベルを手放して下さい」

洗面器メイドさんが兵士を呼んでくれて、倒れたメイドさんは部屋から運び出された。

洗面器メイドさんの言う事には、倒れたメイドさんは風魔法使いで、高域の音を拾う事が出来る魔法を使うそうだ。
限られた範囲ならささやかなベルの音でもはっきり聞こえるらしい。

なので至近距離でベルを鳴らしたのでメイドさんにすれば、耳元で爆音を鳴らされた状態になって失神したのだとか…。
悪い事をしたみたい。

洗面器メイドさんは水魔法使いで、顔を洗う為の準備をして倒れメイドさんと一緒に来るはずが、僕がベルをガンガン鳴らしたので、異常でも有ったのかと先に走って来たそうだ。

マジに悪い事をしたけど、知らなかったんだから仕方ないよね?

僕は洗面器の水で顔を洗いながら話を聞いた。

やっぱり顔は流水で洗いたいなぁ。


*****


部屋で頂いた朝食は、味付けされた鶏肉の様な物と丸いフランスパンみたいな物(きっと名前有るんだろうけど、パンの種類なんて詳しくないし)それと茹でた野菜のサラダ(見た事ある様な物の中に派手な原色の物も見えるけど食べれるのかな)
コンソメスープみたいなものと果物だった。

普通に美味しいけど、ばあちゃんっ子の俺としては、やはり朝は和食が食べたい。
ああ、もう二度とばあちゃんのご飯食べられないのか…帰りたい。


食後は城下町に行くことにした。

準備は丸投げしていいそうなので、城の中を見て回ろうかなとも思ったけど、兵士さんや城の中で働いてる人達にジロジロ見られるので居心地が悪くって。

話しかけてくれれば良いのに、遠くから見られるのはなんか嫌だ。
なので聞いてみると、案内と護衛を付けるなら城の外に出て良いとの事なので、行ってみる。

城下町はオヤクソクな中世ヨーロッパ?ってやつなのかな、中世ヨーロッパに行った事無いからわかんないけど、マンガやアニメでよく見る様な感じだ。
二階建ての土壁の建物が並んでて、案内された広場には色んな屋台が並んでる。

そして広場に来るまでにわかった事が一つ……


文字が読めない。


女神は言葉は通じるって言ったけど、それだけじゃん。
まぁ嘘ではないけど、魔法もチートもないんだから、文字が読めるくらいしといてよ。

案内はシルジットって学者っぽい男の人。
僕より五つくらい年上かな?
城下町に行くまでに話ししてみたけど、おっとりした癒し系の人だ。

おっとりはしているけど知識欲旺盛だそうで、大陸の地図を作るのが夢であちらこちら見て回りたいけど、魔族の活動が活発なので諦めていたそうだ。

「と言うわけでして、旅には私もご一緒させて頂くのですよ。
よろしくお願いします」
パーティーメンバーの一人の様だ。

「こちらこそ。色々教えて下さいね」
ニッコリ笑って頭を下げられたので、こちらも下げ返す。

お辞儀とか頭を下げる挨拶って、日本独特の物とか聞いた事がある様な気がするけど、深く考えても無駄だよね。

シルジットさんは植物の研究もしている様で、食べれる野草や、薬草などに詳しいとの事。
それは旅に助かる能力だね。

この世界は回復魔法なんかは無いらしい。
魔力使い切ったら死んじゃう世界だから、魔法で治療なんてしてたら、あっという間に寿命がつきそうだもんね。

後は水魔法も使えると。
薬作る時には水も必要だろうから、アリって言ったらアリだよね。
まぁ、旅の途中の怪我などは安心できるみたい。

そして広場へ。


おお、食欲そそるこの匂い。
え?朝食を食べたばかり?
いやいや、男子高生の食欲バカにしちゃあいけませんよ。
さあ、何食べよう。

まずはやっぱり肉だよね。
色んな種類の串焼きが有る。
見た感じ牛と豚?

タレで焼いた牛っぽいのと、多分塩焼きの豚っぽい物を買ってもらう。
お金持ってないからシルジットさんが財布です。

焼きたての肉にかぶりつく。
うん、ステーキ串。
美味しい。
ガーリック風味だったらさらに良かったのに。

そしてもう一つの方も…うん、豚バラ串塩。
こっちの方がシンプルで好きかも。

隣は酒の屋台だけど、未成年だし、飲んだ事ないけど、別にお酒飲みたいと思った事も無いのでパス。

串焼きや焼き魚、お酒の屋台が並んでるけど、ジュースは無いのかな?ちょっと口の中さっぱりさせたいんだけど。

「シルジットさん、飲み物の店って無いんですかねえ」
わからないなら聞く。
「水なら私が出しますし、果実水ならどの店でも扱っていますよ」

確かにどの屋台にも果物置いているけど、どうやら果物自体を売ってるのでは無く、注文が有れば絞ってジュースにしてくれるらしい。

おお、生搾りジュースか。早速ミカンっぽい果物を絞ってもらった。

… オレンジ色で見た目まんまミカンなんだけど何故かバナナの味がした…口の中が……
不味くは無いけどほら、麦茶だと思って飲んだら麺つゆだった時の感じ…は違うか?
粒あんのつもりで食べたら白餡だった感じ?

嫌いでは無いけど、想像と違う味に、地味なダメージ食らいました。

シルジットさんに出してもらった水を飲み、改めて屋台を回る。

ここら辺は甘い物が集まってる様だ。
チュロスっぽい物、クッキー、ドーナツ、水飴?みたいな物、ドライフルーツ…果物は暫く口にしたく無い。


昼ご飯はそのまま街の食堂で食べて、更に屋台で揚げパンや饅頭、午前中食べた別の屋台の豚バラ串擬きを食べ、口慰みの飴をいくつか買い、行儀悪いけどチュロスもどきを食べながら城に戻った。

服や装飾品も売ってたけど興味無いし。
お金を気にせずお腹いっぱい買い食いしてかなり気が晴れた。

やっぱり美味しいは正義だよね。
城に戻ったら夜はパーティーだそうで、また美味しい物が食べられそうだ。

我ながら食べ過ぎだと思うけど、美味しかったり珍しかったりで、いくらでも食べれるんだよね。

パーティーでまたたらふく食うためにも、部屋で一休み一休み。




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