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女神様と

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シンシリアは見た目の通り若い女神で、顕現してまだ間もなく、初めての世界作りがこの世界だそうだ。

とりあえず色々説明してくれたけど、まぁざっくりまとめると…


*最初に星に海と大地と植物などを作る

*次に動植物を設置、人族設置、魔族設置

*動物は植物を食べ、人族は動物食べ、人族が増えすぎないよう間引くのが魔族(食べるわけでは無い)

*人族は知恵と繁殖力がある代わり力と体力が無い(人族LV1とすると魔族10~30くらい?)

*魔族は力がある代わり知力が低く、繁殖力はほぼ無い(知識レベルは地球で3歳から10歳程)

「力が有って頭がよろしくないって…ヤバくない」
思わず口に出た。

《はい、大変なのですよ。
力第一主義で闘うのが趣味?みたいなもので、自分より強い者にしか従わないけれど、知能が無いので国を作るわけでもなくやりたい放題…》

「何故魔族に知識を与えないのですか?そうすれば済むのでは?」
最もな疑問だと思う。
そうすれば召喚なんかしなくてもいいやじゃないの?

《力が有り知識も備わると、人族であろうと魔族であろうと世界のバランスが崩れて最悪滅びる事になりますから》
「いや、そこはそうならないようにバランス調整すればいいのでは?」
つい突っ込んでしまったけど、当然の考えだよね?

《……………》
「………………?」
《………………………テヘ?》

え?何?笑ってとぼけるつもり?

「いやいや、笑い事じゃ無いでしょ、勝手に連れて来といて」
《まだそんな微調整出来ないんです。
なので貴方に魔族を纏める魔王となっていただきたいのです》
「随分勝手な…終わったら帰れるって事は…」
《すみません》
食い気味に勢いよく頭を下げられた。

側から見ると、幼女に頭を下げさせているのって、虐めてる様にしか見えないよね。
テンプレとして帰れないのはお約束ってやつなんだろうな。
だったらテンプレとして…

「魔法は使えるのですか?」
《魔法は有りますが、異世界の方には素養がないので使えません》

「何かスキルは貰えるんですよね?」
《人族、魔族共に言語が通じます。後祈りを捧げて私と会話する事ができます》
「まぁテンプレですよね。
他には?」

《……………》

え?女神様黙っちゃったよ。

《…………あ!体力を少し増やします。
一割程》

「………………………」

《あと、体力が回復しやすくなります。
怪我なども早く治ります…人族と比べて》

シンシリアの語尾が小さくなっていき、俺の眉間に皺が寄ってくる。

「………他には?」
《………………ありません…》

はーーっと大きくため息が出てしまったのは仕方ないでしょ。

「チートスキルとか、元の世界から物を召喚出来るとか、アイテムボックスとか、お約束なスキルいっぱい有るじゃないですか?」
《そんなの無理ですよぉ。まだ経験が足りないので》
「いや、大事でしょ、異世界ですよ?
異世界って言ったら、ハーレムとか、魔法で無双とか、チートでお金儲けしてウハウハとか、ハーレムとか!」

思わず熱くなってしまうよ、だってお約束でしょ?鉄板でしょ?何の為の異世界なんですか!

《ハーレムでしたら魔族統べるとモテモテになりますよ》
なに⁉︎やっぱり一男子高校生としてはそこが一番大切でしょ!

「魔族の人って綺麗なお姉さんとか、可愛い獣人とか沢山居るんですか?」

《…………………》

なぜ黙る⁈

《この世界は私が初めて作る世界なのです》
「…聞きました」
《私の力が及ぶ範囲で好きに出来る世界なのです》
なんだか嫌な予感。

《なので基本人型の魔族は……ほぼ男性……》

無駄な想像力でリアルに思い浮かべてしまった。
ノーキンのイケメン集団に埋もれる自分、何の罰ゲームですか?

「帰ります」
《えええええええ!》
「元の世界に戻して下さい」
《元の世界では貴方は亡くなっているのですよ》
「人間いつかは死ぬんです。
父さんや母さん、ばあちゃんを見守ってのんびり死後の世界を楽しみます」

そっちの方が断然いい!
絶対にノーキンイケメンに囲まれるよりマシ!

《そんな事言わないで下さいよ、体力が有り、柔軟性のある思考の持ち主で、異世界に行きたいと言う考えを持つ方を見つけるの苦労したんですよ》

俺の選ばれた理由?
異世界に行きたいとか考えてたっけ?
よく覚えてないけどちょっとくさってたから考えたかな?

ハーレムも無い、チートも無い、無双も無い、メリット何にも無いで異世界にいる必要ある?

「元の世界に帰して下さい」
《お願いします、魔族を統べて下さい》
「元の世界に帰して下さい」
《力の足りない私が悪いのは分かっています。
お願いですから力を貸してください》
「元の世界に帰して下さい」
《聞いてくださいよぉ》
「元の世界に帰して下さい」
《こんなにお願いしてるのに……ヒック》
あ、泣き出した。

《このまま人々を…ヒック…暴力に…ヒック…晒しておけな…ヒック…んですけど…ヒック…力が…力が……》

……俺が泣かしてるみたいじゃん。
まあ、違わないけど、泣きたいのはこっちだよ。

だって殺されたんだよ?
この世界の事情で。
なのに泣き落とし?
ずるく無い?

でも泣きやみそうにないし、ばあちゃんの声が頭の中でぐるぐる回るのよ。

『女子供を泣かすような男になるんじゃないよ』

神様って言っても女性だし、見た目幼女だし?

『女のわがままを笑って許せる男がモテるんだからね、心の広い男になるのよ』

母さんの声も聞こえる。

『犯罪者でも改心して繰り返さないなら、許す事も考えるべきだ。
生きていて、一つも罪を犯さない人間なんていないからな』

小さい頃に聞いたセリフ。
警察がそんな考えで良いのかよ、父さん。
しかも相手は人間じゃなくて神様だし。

「わかったよ、わかりましたよ!
魔王にでもなんでもなってやりますよ!」
半ばヤケクソで叫んだら、やっと泣き止んだ。

《本当ですか?…ヒック…ありが……ありがとうございますぅぅぅぅぅ》

あ、また泣き出した…いつまで続けるのコレ?




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