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召喚されました

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俺が召喚されたのは、タリタル国と言う大陸唯一の国。
人族の他に、魔族と動物の住まう世界とのこと。

この世界を作ったのは女神シンシリア。
なんと、この女神と交信ができるらしい。
良いのかそんなに簡単に神様と接して。

「王家の一族にはシンシリア様から、夢にて神託を告げられます。
しかしながら、夢ではこちらからの交信はできません。
今から行く神託の間は女神様の像を設置してお、毎日祈りを捧げる聖なる空間となっており、こちらでは女神様からの意思が有れば会話を交わすこともできます」

神様って、現世にそんなに簡単に世界に干渉して良いの?

「勿論誰でも、と言う訳ではありません。
王族、神官など、女神様に認められた者のみ会話をする事が出来るのです」

ファンタジー小説だとあるあるな神様と接するだけど、なんだかなぁって感じ。
この場合話的に、主人公にあたる俺も交信できるのでは?

「笹木野様、ここまでの事で何か質問などございませんか?」
「ああ、良くある話なので大丈夫です」
「おお、笹木野様の世界では召喚は一般的なのですか?」
「はぁ、まぁ良くある話です」

小説ではね。

「おおおお、叡智に溢れた素晴らしい世界なのですね」
酷く感動している大臣に、乾いた笑いを返していると神託の間に着いた。

「ここからは、王と笹木野様のみでお願いします」

大きな両開きの扉が騎士の手で開けられる。
割と広い部屋の奥には女の子を象った石像が一体、その前には絨毯が敷かれている。

「女神シンシリア様の像です。この前に跪き祈りを捧げます。さあ、笹木野様もこちらへ」

王様に言われるまま少女の像…いや、幼児の像の前に跪く。

「あの…この像が女神様なのですよね?」
思わず聞いてしまうよ。だって5、6歳くらいの女の子の像だよ?
女神様って美しいお姉さんじゃないの?

「こちらがシンシリア様の像ですが何か問題でもありますか?」
「いえ、確認しただけです…」
子供だろって突っ込んじゃダメだよね。

なんだかモヤモヤしていると、隣に跪いた王様が何か祈りの様なものを呟きだした。
王様を真似て胸の前で両手を組み眼を閉じる。
しばらくすると、目を閉じてても分かる程の眩しさを感じた。

《笹木野 孝一、目を開けなさい》

言われるままに目を開けると真っ白な空間に幼い女の子と二人で居た。
おお、やっぱり俺も交信できるんだ。
そうだと思った。

「…シンシリア様ですか?」
《はい、私がシンシリアです。
この世界を作り管理している者です。
今回は突然こちらの世界へ連れてきてしまい申し訳有りませんでした》

「あの足首を掴んだのは貴女の手ですか?」
《はい、私です。
こちらの世界に連れてくるに当たって貴方には死んでいただく必要がありまして…》
「死んで…って…随分一方的ですね。
何で僕なんですか?
いきなり異世界に連れてこられて魔王になれとかはともかく、死んでもらう必要とか、勝手過ぎだよ!
父さんや母さん…ばあちゃんだって悲しむし、俺だってまだまだ色々やる事があったのに!」

なんだか段々頭にきて怒鳴ってしまった。
女神は何も言わず俺が落ち着くのを待ってるようだ。

《…………落ち着かれましたか?
まずは謝らせて下さい。
私の不手際で世界のバランスが崩れるのを阻止する為に、貴方に多くの負担をかけてしまいます。
本当に申し訳ございません。
こちらの都合になりますが、何故貴方を召喚しなければいけなかったか説明させてください》

小さな女の子が真剣に謝っているのを見てると、落ち着かざるおえないよね。
こっちが虐めてるみたいに見えるもん。
俺はとりあえず話を聞くことにした。



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