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1章
17話 エピローグ
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デルイと対峙した次の日、俺たちはギルドにデルイが犯人であったと告げた。
当初は困惑していたギルドであったが、派遣隊がデルイの屋敷を調べたところ、被害にあった魔導書の存在が確認され、デルイが犯人であるということが認められた。
現在、デルイ及び関係者は事情聴取を受けている。久しぶりの大事件だったのか、ギルド内はてんやわんやしていた。
そんな様子を横目に流しながら、リザは口にポテトを運んでいた。
「そういえば私たちの報酬はどうなるのかしら?」
「ギルドが代わりに払ってくれる、みたいな話は少し聞いたけど」
「そうなの? だったらいいのだけど。はぁ、しかしそれが払われないと私たち、ただの無駄骨なのよねぇ……」
「そ、そこは信じようぜ。それよりも払われないと次に進めねえもんな」
「そこなのよねぇ。さっさとお金を貰って先に進みたいのだけどねぇ」
リザがポテトを一気に十本程度手に取り、口に運ぶ。
ずるい。
負けじとリザが取ったのと同等の量のポテトを手に取るが、リザがその手を叩く。
「お行儀が悪いと思うのだけど」
「……お前が先だろうがよ」
「私がそんな行儀の悪いことをするわけないでしょ?」
そう言いつつ、再び大量のポテトを掴んでいた。
「はぁ……」
溜息。
「……その駄目な子だなぁって溜息止めてくれるかしら?」
「事実は事実だろ。人に止めろと言う前に自分を正したらどうなんだ?」
「くっ……正論じみたことを」
「どストレートな正論以外の何物でもないだろうが……」
「うるさいわね、ポテトぐらいで」
「最初に言い始めたのはお前だろうが」
「何? やる気?」
リザが立ち上がる。
「あぁ、そろそろ下克上してやるよ」
立ち上がり、リザを睨みつける。正直、勝ち目は一切ないが……。
それでもこれ以上理不尽を押し付けられるのも限界だ。
リザとの間でバチバチと火花が舞う。
一発触発。
「あ、あの、いっ、いいですか?」
そこに、デルイの弟子のロリが水を差すーーー助け舟を出してくれた。
「何か用か? てか、事情聴取は終わったのか?」
リザから目を逸らし、ロリの方へ目を向ける。
「あ、はい。わ、私は関わっていなかったので……」
「そうなのか。それはよかった」
胸をなでおろす。
「で、何の用?」
リザが質問する。
「あ、あの……、その……リザ、さんですよね?」
「えぇ、まぁそうだけど」
「あ、あ、あの……わ、私を……」
ロリはそこまで言うと勢いよく頭を下げる。
「で、弟子にしてくれませんか」
ギルド中に響き渡る声。
あわただしく動いていた周りが一斉にこちらに注目する。
「そんな大きな声を出さなくても聞こえてるから大丈夫よ」
「あ、あの……すみません」
「弟子、ねぇ。正直私は弟子を迎えられるほどの自信があるわけではないのだけど……」
「え? で、でもそこの人は……」
「あぁ、こいつはただの助手よ。……助手と言うよりペットに近いかしら」
「???」
「お前なぁ、変なこと言うから混乱してるじゃないか」
「冗談よ、冗談。正直な話、教えられることは限られているから、それでよければという話よ」
「ほ、本当ですか」
ロリがキラキラとした表情でリザを見上げる。
「えぇ、二言は無いわ。それよりもデルイの方はいいの? 仮にも師弟関係にあった人間でしょ?」
「あ、あの……それは……」
「ちょっと意地悪過ぎたかしら。彼はあなたを、弟子を裏切った。弟子と言えど、人間に変わりない。裏切られれば、心だって離れるわ。いいわ、歓迎しましょう」
「あ、ありがとうございます」
ロリが深く頭を下げる。
「別に大したことではないのだけど……」
リザが珍しく困惑していた。
これだけストレートに感情表現されることに慣れていないのだろう。
そう思うと少し微笑ましさすら感じる。
少しワタワタしているリザの肩をギルドの人間が叩く。少しの会話の後、リザが口角を上げる。
おそらく報酬についての話だろう。
会話を終えたリザはニコニコとした表情で言う。
「さぁ、先に行きましょう」
当初は困惑していたギルドであったが、派遣隊がデルイの屋敷を調べたところ、被害にあった魔導書の存在が確認され、デルイが犯人であるということが認められた。
現在、デルイ及び関係者は事情聴取を受けている。久しぶりの大事件だったのか、ギルド内はてんやわんやしていた。
そんな様子を横目に流しながら、リザは口にポテトを運んでいた。
「そういえば私たちの報酬はどうなるのかしら?」
「ギルドが代わりに払ってくれる、みたいな話は少し聞いたけど」
「そうなの? だったらいいのだけど。はぁ、しかしそれが払われないと私たち、ただの無駄骨なのよねぇ……」
「そ、そこは信じようぜ。それよりも払われないと次に進めねえもんな」
「そこなのよねぇ。さっさとお金を貰って先に進みたいのだけどねぇ」
リザがポテトを一気に十本程度手に取り、口に運ぶ。
ずるい。
負けじとリザが取ったのと同等の量のポテトを手に取るが、リザがその手を叩く。
「お行儀が悪いと思うのだけど」
「……お前が先だろうがよ」
「私がそんな行儀の悪いことをするわけないでしょ?」
そう言いつつ、再び大量のポテトを掴んでいた。
「はぁ……」
溜息。
「……その駄目な子だなぁって溜息止めてくれるかしら?」
「事実は事実だろ。人に止めろと言う前に自分を正したらどうなんだ?」
「くっ……正論じみたことを」
「どストレートな正論以外の何物でもないだろうが……」
「うるさいわね、ポテトぐらいで」
「最初に言い始めたのはお前だろうが」
「何? やる気?」
リザが立ち上がる。
「あぁ、そろそろ下克上してやるよ」
立ち上がり、リザを睨みつける。正直、勝ち目は一切ないが……。
それでもこれ以上理不尽を押し付けられるのも限界だ。
リザとの間でバチバチと火花が舞う。
一発触発。
「あ、あの、いっ、いいですか?」
そこに、デルイの弟子のロリが水を差すーーー助け舟を出してくれた。
「何か用か? てか、事情聴取は終わったのか?」
リザから目を逸らし、ロリの方へ目を向ける。
「あ、はい。わ、私は関わっていなかったので……」
「そうなのか。それはよかった」
胸をなでおろす。
「で、何の用?」
リザが質問する。
「あ、あの……、その……リザ、さんですよね?」
「えぇ、まぁそうだけど」
「あ、あ、あの……わ、私を……」
ロリはそこまで言うと勢いよく頭を下げる。
「で、弟子にしてくれませんか」
ギルド中に響き渡る声。
あわただしく動いていた周りが一斉にこちらに注目する。
「そんな大きな声を出さなくても聞こえてるから大丈夫よ」
「あ、あの……すみません」
「弟子、ねぇ。正直私は弟子を迎えられるほどの自信があるわけではないのだけど……」
「え? で、でもそこの人は……」
「あぁ、こいつはただの助手よ。……助手と言うよりペットに近いかしら」
「???」
「お前なぁ、変なこと言うから混乱してるじゃないか」
「冗談よ、冗談。正直な話、教えられることは限られているから、それでよければという話よ」
「ほ、本当ですか」
ロリがキラキラとした表情でリザを見上げる。
「えぇ、二言は無いわ。それよりもデルイの方はいいの? 仮にも師弟関係にあった人間でしょ?」
「あ、あの……それは……」
「ちょっと意地悪過ぎたかしら。彼はあなたを、弟子を裏切った。弟子と言えど、人間に変わりない。裏切られれば、心だって離れるわ。いいわ、歓迎しましょう」
「あ、ありがとうございます」
ロリが深く頭を下げる。
「別に大したことではないのだけど……」
リザが珍しく困惑していた。
これだけストレートに感情表現されることに慣れていないのだろう。
そう思うと少し微笑ましさすら感じる。
少しワタワタしているリザの肩をギルドの人間が叩く。少しの会話の後、リザが口角を上げる。
おそらく報酬についての話だろう。
会話を終えたリザはニコニコとした表情で言う。
「さぁ、先に行きましょう」
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