【R18】ひかれ

カケラシティー

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⑩それから数日間

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 もしかしたら自分だと気付かれたかも知れない。

 そんな心配をしていた有司だったが次の日学校に行っても、聡からも佐々峰からもそれを責められることは無かった。

 どうやら気付かれていないのかと安心したが、あの時、確かに佐々峰と目が合ったという確信が有司の方にはあった。

 そもそも教室で全裸になりセックスまでした2人が何も無かったかのように授業を受けている。佐々峰は有司の事を気付いていても、無かった事にしているのではないかという疑惑が有司の中に湧いていた。そして、その事は少なからず有司を興奮させたりもした。
 
 その日くらいから有司は聡と段々疎遠になっていった。それは互いに避けているとかではなく、聡が佐々峰に夢中になっている事が原因だった。
 いつものように休み時間を一緒に過ごしていても、ほとんど会話をする事は無くなったし、聡がどこかへ行ってしまう事もあった。

 聡がどこかへ行く時、佐々峰の姿も教室から消えている事が多々あった。そんな事実は有司の心を激しく揺さぶる。この学校のどこかでセックスをしているかもしれないと考えると落ち着かない気持ちになった。

 だからといって、あからさまに聡の後を追う事も出来ず、有司は、聡が消えた後に、あてもなく校内をウロウロと2人の姿を探して周るくらいしか出来なかった。

 一度2人が、辺りに誰もいないのを確認しながら女子トイレに入って行く姿を見つける事が出来たが、流石に中に入る事は出来なかった。
 有司は入り口で耳を澄ませて見たが中からは少し物音がするくらいで佐々峰の声が漏れ聞こえる事は無かった。
 中の個室の扉が開く音が聞こえるのと同時に有司は隣の男子トイレに身を隠して外の様子を伺ったところ、歩いている佐々峰を見る事が出来た。佐々峰の顔はあの日の教室で見たのと同じ表情で、やっぱりセックスをしていたのだと有司は確信した。そして、その後の授業中は、例の隠しカメラで佐々峰の姿を録り続けた。

 そうやって、佐々峰に直に触れることは出来なくても、有司は着実に収穫を得ていた。
 有司の行為は以前と変わる事は無く、変わったのは佐々峰の有り様だけだった。
 特にあの日、教室で手に入れた佐々峰の全裸の画像は有司の嗜好の部分を満足させるものだった。佐々峰を好きにしている聡への嫉妬はあるものの、それをこうして盗み見ている事を有司は一種の優越感にすり替える事が出来ていた。
 自宅のPCに佐々峰の姿を映し出し、その温もりや弾力は感じられなくても、佐々峰の身体の曲線を指でなぞるだけで、有司は佐々峰を自分だけのものにしていた。

 一方で、佐々峰と聡の行為は徐々にエスカレートして行くようだった。2人は休み時間だけで無く授業中に姿を消す事もあった。
 クラスメイト達は、そんなあからさま行動であっても2人を結びつけて考える事はしていないようだった。狭い教室であっても、明らかに活動している層が違う2人が行動を共にする事に想像が辿りつかないのはもっともで、ましてやセックスまでしているとは考えもしないだろうと有司は考えていた。

 一度だけ友人Aが、有司に聡の事を尋ねてきたが、その内容は相変わらず聡が佐々峰のストーカーをしているかというものだったから、有司は「分からない」と答えると友人Aはつまらなそうに立ち去った。
 おおむね違うグループに聡をバカにするネタを土産に加わろうとしていたのだと有司は思ったが、聡の事を言わなかったのは、誰の為でも無く自分と佐々峰の為だという思いが強かった。

 そんな中、学校内でセックスをしている奴らがいるだとか、校舎の裏で裸になっている女子がいた。と言うような情報がクラスを沸かせた。
 彼等の優秀な情報網はあっという間にそれを広めて行くが、個人の情報までに行きつく事は出来ていないようだった。
 ただ、度々そこに、都市伝説的に佐々峰の名前が上がった。それは希望的であり攻撃的なもので、佐々峰の名前を出して、その文脈で噂を口にするものは、かつて佐々峰にフラられた者か、ただのゲス野郎に分類されてしまう為、その噂の寿命も長くは無かった。

 その様な環境の中、聡と佐々峰は行動を過激にしながらも見えない力に守られながら、大胆にも密かに互いの欲求をぶつけ合い、そこから溢れ出る物語を有司に与えたりしていた。

 やがて、学校は試験期間を終え1週間後に夏休みという長い休息時間を迎えようとしていた。
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