【R18】ひかれ

カケラシティー

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⑧土日を挟んで10日目

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 話を聞いた後、有司は3日間眠る事が出来なかった。月曜の朝、その重い体を引きずるように登校する。学校はまだ人がまばらだ。それもそのはず、まだ朝の7時である。部活の朝練でもしていない限りこんな時間から学校に来る生徒はいない。

 佐々峰が聡とセックスをした。あの森林公園で佐々峰は裸を聡に見せた。自らの性器をいじり、聡の前で絶頂に達した。
 そんなの、ただのビッチじゃないか。清楚で潔癖だと勝手に思っていただけで、本当は人に裸を見せて興奮するような淫乱女じゃないか。

 そんな風に思えればどんなに楽だろう。有司は歯を食いしばった。そんな佐々峰に惹かれている事実に心が乱れた。佐々峰の発する妖しい光に、気持ちが吸い寄せられるのが堪らなく苦しかった。

 佐々峰の身体を自由にする聡が恨めしかった。いつも教室の隅でひっそりと過ごしていた仲間が、自分の聖域にズカズカと足を踏み入れて行くのが許せなかった。
 いつも有司は佐々峰を見ていたはずなのに、佐々峰が発するメッセージを有司は気がつく事が出来ず、聡はそれを的確に読み取ったのだ。

 目が眩む。足元が平衡感覚を失う。もし何かしらのサインに気がついていれば
、佐々峰とセックスをしていたのは自分だったかも知れない。
 身体が地面に沈んでいく。もがいてももがいても、この名前の無い感情から逃れられない。
 有司は、まだ誰も来ていない教室に入った。足は自然に佐々峰の席に向かう。そこに立つだけで、有司の脳裏には様々な画像がフラッシュバックした。
 手が届く距離にいながら、触れる事は出来なかった。どんなに沢山の画像を手に入れても、その内面を透かす事は出来なかった。

『んっ!んあっ!あ!んん!』

 鼓膜の奥で、佐々峰の声が響き渡る。聡のペニスを膣で味わい、喉から溢れている声が。

“ガン!”

 有司は、佐々峰の机を蹴り上げた。消えてくれ。何もかも消え去ってくれと有司は思う。

 でも、その願いは決して叶わない。何故なら有司はどうしようもなく欲しているから、聡が手に入れたものを自分も手に入れたいと思っているから。
 だとしたら、手に入れるしかない。それは始めから分かっていた。その為に何をしなければならないかということも。

「お。じゃあな有司」
「うん。じゃあ」

 放課後、有司は学校が終わると足早に教室を出た。聡は、のんびりと佐々峰の様子を伺いながら帰り支度をしている。
 有司は、聡よりも早く行動しなければならなかった。
 学校を出ると、有司は森林公園に入った。2人がいた場所を画像からだいたいの検討をつけてそこへ向かう。

 公園内のトイレをとおり過ぎて、しばらくすると山林へ入って行く階段を見つけた。聡の記憶だと、この先にも階段はあったはずだが、ネットで地図を確認して、長さやシチュエーションから推測しその場所にかける事にした。何しろ検討している時間がない。佐々峰と聡が来る前に準備を終わらせなければならないのだ。

 駆け上がるように階段を登っていくと、途中で勾配が急になる地点があった。
 それは、有司の記憶とも重なり、聡に見せられた画像と背景が似ているように思える。恐らく初日の場所はここ。
 ただ、ここからが問題だった。ここから先、右へ行ったか左へ行ったか想像だけでは辿りつかない。有司は周りを見渡した。階段の周りは木の垣根のようになっていて、簡単に森林に立ち入る事が出来なくなっている。有司は、その垣根に少し間がある場所を見つけた。特に思考を巡らす事もせず、有司はそこを通って森林に入った。佐々峰と聡の行動をトレースするには、どうやらこの行動こそが正しかったらしく、有司は大きな幹の木下に辿り着いた。
 そこは、木々がポッカリと穴が空いたみたいに日が差し込むスペースがあり、人目にもつかない。恐らく、2人がセックスをしたのはこの場所で間違いないだろう。
 何よりも、有司を確信させたのは足元に捨てられていた2つのコンドームだった。それが先日、聡の使ったものであれば、間違いない。
 その表面で佐々峰の膣内を摩擦したであろうコンドームに有司は一瞬、心惹かれたが思い止まった。
 それよりも身を隠す場所。やがて来る佐々峰と聡の行為を盗み見る為の場所を有司は見つけなければならない。
 辺りを見渡すと少し先に窪んだ箇所がある。有司はそこへ行くと、そこは人工的に切り落とされた浅い段差になっていた。飛び降りて先程の木を振り返ると、そこは身を隠しながら臨むには最適な場所だった。有司は、ようやく安堵に胸を撫で下ろした。
 
 これで佐々峰を手に入れる事が出来る。ここから佐々峰のセックスを隠し録る事が出来る。有司の目的はそこにある。自分が佐々峰に触れられないのであれば、その全てを見る事で有司は佐々峰を手に入れようとしていた。
 それが聡の手によるものでも、欲望を剥き出したした佐々峰の姿を、本人の知らないところで掌握する事で有司は納得をしようとしたのだ。

 有司は動画機能のある高性能のデジタルカメラを準備しフレームチェックをした。望遠機能の確認をし、これであれ
ば充分に細部まで収められると確信した。

 後は佐々峰と聡が来るのを待つだけ。有司は陰に隠れてじっとその時を待った。

 だが、いつまでも2人の姿が現れる事は無かった。過ぎていく時間の中で、有司の頭の中には様々な考えが交錯していく。場所を間違えたのか、今日は何も無かったのか。それとも、場所を変えたのか。

 その答えを指し示すべく、有司のスマホに聡からのメッセージが届いた。

“部屋でじっくり5回もやっちゃった。サルでごめん!”

 震えが止まらない。手に入れるどころか、どんどん遠くへ離れていく。聡の部屋ではどんな高性能なカメラでも立ち入り出来ない。

 そして、何よりも有司を絶望させたのは、佐々峰が部屋という2人だけの空間で、有司のみを受け入れたのだという事実だった。


 
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