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③土日を挟んで4日目
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「佐々峰って西駅使ってるらしいじゃん」
「お前、佐々峰のことは、忘れろって」
話題は昨日の続きらしい。
「なんか、いかにも佐々峰らしいよなぁ。真面目にあの距離歩くなんて。俺も路線じゃ西駅だけど、遠回りして東駅使ってるわ」
「お前は西駅使えよ。オナニー ばっかで運動不足なんだろ?」
「オナニーは運動だろうが!?5回もしたらヘトヘトになるぞ?」
「5回!?それは流石に尊敬するわ」
「お前、やっと俺のこと認めたな」
昨日と同じような光景が繰り返される。満たされないままの彼等は、くだらない事を喋っては、すぐに忘れて日々をやり過ごしている。
少しだけ彼等の話している『駅』について触れよう。
彼等の通う学校は、山を切り開いたニュータウンに建てられた割と歴史の浅い高校だ。街の東側にある『東駅』は、鉄道会社の貢献もあって開発が進み拓けている。道路がキレイに舗装されており、この学校に通う生徒の殆どがこの駅を利用していた。
対して西側に位置する『西駅』は古くからある路線の駅で、住宅街にポツリとあり、今では地域住民しか利用しない寂れた駅だ。彼等の高校からこの2つの駅は直線距離ではあまり変わらないが、西駅との間には『森林公園』が広大な土地を占めており、学校指定の通学路ではその公園を通り抜ける事を禁止している為、西駅へ向かうには大きく迂回せねばならないのだ。
だから、よほどの事が無ければ西駅を利用する生徒はいない。
「でさあ、俺も今日から西駅使って帰ろうかと思ったんだわ」
「何の為に?」
「だからあ、佐々峰に近づく為に決まってるじゃんか」
「何それ!?やめろって!やばい!ウケる!」
友人Aは腹を抱えて笑っている。
「何で笑うんだよ?何事も行動が大事だろ?俺たちは行動しないから、こんななんじゃないか」
「行動の仕方だよ。あー腹痛て。それじゃあストーカーだろーが。あーやべー」
大袈裟に涙を拭く素振りまで見せてまだ笑っている。
「お前なあ、まだ何も始まってねえのにふざけんなよ?せいぜい、そうやって笑ってろな」
「あー、そうするわ。やっぱ、お前らといると飽きねーわ」
何故、今の会話で『お前ら』と自分までが含まれたのかを、有司は敏感に感じ取り嫌悪感を覚える。しかし、そんな事よりも聡の佐々峰を西駅まで追いかけると言った言葉の方が、有司の胸を騒つかせる。
有司は、過去に何度か駅まで歩く佐々峰を追いかけた事がある。聡達は佐々峰が学校指定の通学路を使っていると考えているのだろうが、実際は違う事を知っている。
佐々峰はいつも公園を横切って帰宅しているのだった。
頑なに校則であるとかを守りそうな佐々峰が、それに背き公園を歩くと言うことは有司にとっても違和感ではあったが、その姿はそんな思いをすぐに忘れさせた。
木漏れ日のさす森林公園。木々の緑の湿気が作る柔らかな空気の中を歩く佐々峰は、とても美しかった。
普段、学校で見る姿とはまた違う存在感を放ち、同じ空気を吸っている事すら幸福にさせるような興奮を有司に与えた。
もちろん、それも気付かれないようにカメラに収めた。しかし、後で見返しても同じ感想は持たなかった。それは場面を切り取るだけでは足りない、佐々峰が持つ空気を収める何かが無ければ手に入れる事の出来ないもの、おそらく有司が永遠に手に入れる事が出来ないものであろう事を気付かされる出来事だった。
それを感じ取る事が出来るかどうかは分からないが、聡はその日から佐々峰を追うように西駅へのルートで帰宅をした。
「お前、佐々峰のことは、忘れろって」
話題は昨日の続きらしい。
「なんか、いかにも佐々峰らしいよなぁ。真面目にあの距離歩くなんて。俺も路線じゃ西駅だけど、遠回りして東駅使ってるわ」
「お前は西駅使えよ。オナニー ばっかで運動不足なんだろ?」
「オナニーは運動だろうが!?5回もしたらヘトヘトになるぞ?」
「5回!?それは流石に尊敬するわ」
「お前、やっと俺のこと認めたな」
昨日と同じような光景が繰り返される。満たされないままの彼等は、くだらない事を喋っては、すぐに忘れて日々をやり過ごしている。
少しだけ彼等の話している『駅』について触れよう。
彼等の通う学校は、山を切り開いたニュータウンに建てられた割と歴史の浅い高校だ。街の東側にある『東駅』は、鉄道会社の貢献もあって開発が進み拓けている。道路がキレイに舗装されており、この学校に通う生徒の殆どがこの駅を利用していた。
対して西側に位置する『西駅』は古くからある路線の駅で、住宅街にポツリとあり、今では地域住民しか利用しない寂れた駅だ。彼等の高校からこの2つの駅は直線距離ではあまり変わらないが、西駅との間には『森林公園』が広大な土地を占めており、学校指定の通学路ではその公園を通り抜ける事を禁止している為、西駅へ向かうには大きく迂回せねばならないのだ。
だから、よほどの事が無ければ西駅を利用する生徒はいない。
「でさあ、俺も今日から西駅使って帰ろうかと思ったんだわ」
「何の為に?」
「だからあ、佐々峰に近づく為に決まってるじゃんか」
「何それ!?やめろって!やばい!ウケる!」
友人Aは腹を抱えて笑っている。
「何で笑うんだよ?何事も行動が大事だろ?俺たちは行動しないから、こんななんじゃないか」
「行動の仕方だよ。あー腹痛て。それじゃあストーカーだろーが。あーやべー」
大袈裟に涙を拭く素振りまで見せてまだ笑っている。
「お前なあ、まだ何も始まってねえのにふざけんなよ?せいぜい、そうやって笑ってろな」
「あー、そうするわ。やっぱ、お前らといると飽きねーわ」
何故、今の会話で『お前ら』と自分までが含まれたのかを、有司は敏感に感じ取り嫌悪感を覚える。しかし、そんな事よりも聡の佐々峰を西駅まで追いかけると言った言葉の方が、有司の胸を騒つかせる。
有司は、過去に何度か駅まで歩く佐々峰を追いかけた事がある。聡達は佐々峰が学校指定の通学路を使っていると考えているのだろうが、実際は違う事を知っている。
佐々峰はいつも公園を横切って帰宅しているのだった。
頑なに校則であるとかを守りそうな佐々峰が、それに背き公園を歩くと言うことは有司にとっても違和感ではあったが、その姿はそんな思いをすぐに忘れさせた。
木漏れ日のさす森林公園。木々の緑の湿気が作る柔らかな空気の中を歩く佐々峰は、とても美しかった。
普段、学校で見る姿とはまた違う存在感を放ち、同じ空気を吸っている事すら幸福にさせるような興奮を有司に与えた。
もちろん、それも気付かれないようにカメラに収めた。しかし、後で見返しても同じ感想は持たなかった。それは場面を切り取るだけでは足りない、佐々峰が持つ空気を収める何かが無ければ手に入れる事の出来ないもの、おそらく有司が永遠に手に入れる事が出来ないものであろう事を気付かされる出来事だった。
それを感じ取る事が出来るかどうかは分からないが、聡はその日から佐々峰を追うように西駅へのルートで帰宅をした。
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