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②はじまりの1日目
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「しっかし青春が足りねーよ」
「お前、しっかり今を見つめろよ、今この瞬間こそが青春だろ」
「それじゃ足りねーの。こうやってだべって、帰ってオナニー して、それの繰り返しじゃねえか」
「オナニー こそが青春の証だろ?」
「いらねえよ、むしろいらねえよ。必要なのはセックスだろ?みんなやってんぜ?みんな」
「少なくても俺らはやってねえよ、なあ有司?」
「うん」
「だからよ。だから足りねーって言ってんだよ俺は」
柊木聡と友人Aの軽妙なやり取りを有司はいつもそばで聞いていた。うだつの上がらない3人組は教室の隅でリア充を妬みながら、与えられない自らの立場を恨みながらも悲観することなく、こんな皮肉で乗り切っていた。
「あー。佐々峰とやりてーな」
聡が発した何気ない一言に有司の心臓は波打つ。
「佐々峰な。真面目そうなのに、あのエロい身体。そりゃやりてーはな。でもまあ無理だろ?学校中全ての男子が振られてる」
友人Aが聡が嗜めた。
「俺はまだ振られてねーぞ」
「聡にはそもそも挑戦権が与えられてねえだろ?お前は告る前に振られてる」
「かー、切な」
「そう、切ないの。俺らはそんなもん。俺らに出来るのは、あの姿でオナることぐらい。なあ?有司?」
「はは」
有司はこの友人Aが苦手だ。元々、昔から仲の良かった聡との間に入ってきて、このヒエラルキーの底辺で聡と有司をちゃっかり下に見てる。
「有司も佐々峰でオナるの?」
「いや、そんな事」
「お前!有司にそんな事言うなよ。俺らとは違うんだよ有司は」
「って事は聡はしてるんだな?佐々峰使って」
「俺はクラスの全女子制覇してるわ!別の意味でお前とは違うんだよ」
「何だよ、リア充かよ」
「ざけんな。妄充だよ。俺は」
「すげーな」
だから青春が足りないんだと、聡は話を一巡させた。
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。それぞれの席に戻ると午後の退屈な授業が始まる。
有司の座る、斜め前の席に佐々峰愛梨は座っていた。
さっきあんな会話をしていたせいで、いつも以上に有司は佐々峰を意識してしまう。
有司にとって彼女は初恋だった。決して手の届かない高嶺の花だが、見ているだけで心が満たされた。
しかし、今の有司は先程の会話のせいで違うスイッチが入っている。
有司はペンケースの中の特殊なペンを取り出し机の端に置いた。机の中でスマホを立ち上げBluetoothを接続させると画面に教室の風景が映し出される。有司は佐々峰の姿が入るように机のペンの角度を変える。ペンの中に液晶カメラを仕込んであるのだ。画面の中に佐々峰を確認すると有司は『録画』のボタンを押し、スマホを机の奥に隠した。
有司の佐々峰への想いは、有司を盗撮という行為に走らせた。あらゆる方法を用いて、様々な場面の佐々峰を記録してきた。一応、着替えやトイレと言った猥褻的な撮影はしてはいないが、全ての記録を有司は性的欲求の解消に使っている。
こうして授業の間に撮影をしても後ろ姿しか映らないからあまり意味が無く思えるのだが、有司にとっては最早、この行為が嗜好を刺激するのだ。
その時、小さな動きがあった。佐々峰が机から消しゴムを落としたのだ。足元に転がった消しゴムを、佐々峰は上体を傾けて拾う。肩にかけていた長い髪がパラパラと顔を覆い、消しゴムを拾う逆の手でそれをかきあげた。有司は息を荒くした。間違いなく素晴らしいモーションになったという確信があった。そうなると、有司は早く家に帰って動画を確認したい。興奮がひたすら昂まっていった。
「お前、しっかり今を見つめろよ、今この瞬間こそが青春だろ」
「それじゃ足りねーの。こうやってだべって、帰ってオナニー して、それの繰り返しじゃねえか」
「オナニー こそが青春の証だろ?」
「いらねえよ、むしろいらねえよ。必要なのはセックスだろ?みんなやってんぜ?みんな」
「少なくても俺らはやってねえよ、なあ有司?」
「うん」
「だからよ。だから足りねーって言ってんだよ俺は」
柊木聡と友人Aの軽妙なやり取りを有司はいつもそばで聞いていた。うだつの上がらない3人組は教室の隅でリア充を妬みながら、与えられない自らの立場を恨みながらも悲観することなく、こんな皮肉で乗り切っていた。
「あー。佐々峰とやりてーな」
聡が発した何気ない一言に有司の心臓は波打つ。
「佐々峰な。真面目そうなのに、あのエロい身体。そりゃやりてーはな。でもまあ無理だろ?学校中全ての男子が振られてる」
友人Aが聡が嗜めた。
「俺はまだ振られてねーぞ」
「聡にはそもそも挑戦権が与えられてねえだろ?お前は告る前に振られてる」
「かー、切な」
「そう、切ないの。俺らはそんなもん。俺らに出来るのは、あの姿でオナることぐらい。なあ?有司?」
「はは」
有司はこの友人Aが苦手だ。元々、昔から仲の良かった聡との間に入ってきて、このヒエラルキーの底辺で聡と有司をちゃっかり下に見てる。
「有司も佐々峰でオナるの?」
「いや、そんな事」
「お前!有司にそんな事言うなよ。俺らとは違うんだよ有司は」
「って事は聡はしてるんだな?佐々峰使って」
「俺はクラスの全女子制覇してるわ!別の意味でお前とは違うんだよ」
「何だよ、リア充かよ」
「ざけんな。妄充だよ。俺は」
「すげーな」
だから青春が足りないんだと、聡は話を一巡させた。
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。それぞれの席に戻ると午後の退屈な授業が始まる。
有司の座る、斜め前の席に佐々峰愛梨は座っていた。
さっきあんな会話をしていたせいで、いつも以上に有司は佐々峰を意識してしまう。
有司にとって彼女は初恋だった。決して手の届かない高嶺の花だが、見ているだけで心が満たされた。
しかし、今の有司は先程の会話のせいで違うスイッチが入っている。
有司はペンケースの中の特殊なペンを取り出し机の端に置いた。机の中でスマホを立ち上げBluetoothを接続させると画面に教室の風景が映し出される。有司は佐々峰の姿が入るように机のペンの角度を変える。ペンの中に液晶カメラを仕込んであるのだ。画面の中に佐々峰を確認すると有司は『録画』のボタンを押し、スマホを机の奥に隠した。
有司の佐々峰への想いは、有司を盗撮という行為に走らせた。あらゆる方法を用いて、様々な場面の佐々峰を記録してきた。一応、着替えやトイレと言った猥褻的な撮影はしてはいないが、全ての記録を有司は性的欲求の解消に使っている。
こうして授業の間に撮影をしても後ろ姿しか映らないからあまり意味が無く思えるのだが、有司にとっては最早、この行為が嗜好を刺激するのだ。
その時、小さな動きがあった。佐々峰が机から消しゴムを落としたのだ。足元に転がった消しゴムを、佐々峰は上体を傾けて拾う。肩にかけていた長い髪がパラパラと顔を覆い、消しゴムを拾う逆の手でそれをかきあげた。有司は息を荒くした。間違いなく素晴らしいモーションになったという確信があった。そうなると、有司は早く家に帰って動画を確認したい。興奮がひたすら昂まっていった。
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