私、“攻略対象者”に転生しました!〜それでも攻略していきます〜

きなこおはぎ

文字の大きさ
上 下
15 / 17
攻略1*攻略対象者たちと仲良くしましょう*

いや、だから視察ですって。

しおりを挟む
 シルビアはあれから少し緊張がほぐれたのか、外の景色を見て柔らかい笑顔を浮かべていた。
 窓越しの柔らかい陽の光に反射する、白銀の髪。白い肌。それに映えるピンクの唇。

 …美人すぎる。商家の娘に扮していても、貴族としての品が隠れてないように思える。

 こんな娘が私の婚約者だなんて。悪役令嬢にさえならなければ、彼女はこんなにも穏やかに笑う人なんだと、目の前の現実を受け入れつつある。


「殿下、もう少しで到着しますね」

「あぁ、そうだな。なぁ、ペルカ嬢、着いてからも殿下呼びはやめた方がいいと思うのだが」

「…そうですわね。では、なんとお呼びすれば?」

「そうだな…私のことはディーでいいだろう。ペルカ嬢のことは、シルビィ、と呼んでいいだろうか?」

「!…はい。それで構いません」


 私がシルビィ、と口にした途端、顔を赤くしてそっぽを向くシルビアは、年相応の女の子に見えた。

 …正直、可愛いがすぎると思う。赤くなったシルビアの顔につられるように、自分の頬に熱が集まるのを感じた。
 それを気付かれたくなくて、シルビアから目を逸らし、窓の風景を眺めていた。



 町に入ると、人の多さにまず驚いた。父上の政策の一つである、上下水道がしっかりされている為、町に嫌な匂いはしなかった。
 こういう、中世ヨーロッパ風って町が臭いことが多く、少し不安だった。
 上下水道がしっかりあるのは、城だけかもしれないと思っていたし。

 目的地に着くと、ゆっくり馬車が止まる。
 それを確認して、先に降りるとシルビアに手を差し出す。
 その手にそっとシルビアが手を乗せる。


「気をつけて、シルビィ」

「……はい、ディー」


 実はディーは、私の愛称だったりする。たまに母上から呼ばれたりもする。他に思いつく名前もなかったし、婚約者ならいいだろうと呼ばせてみたが、なかなかに恥ずかしい。だけど………。


「君に、ディーと呼ばれるのは心地いいな。これからもそう呼んでくれないか?」

「なっ!」


 ビックリしたシルビアが馬車の階段を踏み外し、私に倒れかかってきた。
 自然に体が動き、シルビアを抱きとめていた。


「ふぅ…怪我はないか?」

「……大丈夫、です」


 腕の中にいるシルビアは思っていた以上に華奢で、赤く恥じらってる姿は、とても可愛く私の目に映った。
 いつまでも見ていたい、とすら思ってしまう程に。でも、店先で抱きついたままは流石にまずいので、そっと彼女を離す。
 そしてまた手を出し、彼女をエスコートする体制を整える。


 彼女をエスコートしながら入店した店は、今をトキメク大商家の店だ。王家に多額の寄付をしている為、男爵の爵位を賜る予定なのだとか。

 …そう、この男爵を賜る商人の息子こそ、4人目の攻略対象者なのだ。

 成金で甘えん坊、腹黒キャラでとにかくヒロインを独占しようと頑張っていたな。
 …監禁までしようとした時は、腹黒ではなくヤンデレ属性なのでは?とプレイしながら思ったものだ。

 とにかく、4人目の攻略対象に会いたいが為にこの店を選んだ。


 シルビアもこの店の雑貨に目移りをしている様だ。
 急にピタッとシルビアの足が止まり、エスコートしていた私も足が止まる。
 どうしたのだろうと、彼女を見やると、彼女の目の前にコバルトブルーのガラス細工に金で綺麗に飾られた、ブレスレットがあった。

 まるで、私の瞳の色の様だと、勘違いしそうになる程、綺麗にグラデーションもしていた。


「…すまない、コレを包んでくれ」

「かしこまりました」


 すぐそこに控えていた店員に、そのブレスレットを包むよう、声をかける。
 弾かれたようにビックリしたシルビアが私を見る。


「でん、…ディー、買い物に来たわけではありません!」

「だが、贈らせてほしい。シルビィは婚約者、なのだろう?」


 それ以上はシルビアも何も言えず、真っ赤な顔に口をパクパクとさせている様子はなかなかに面白かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

ざまぁは終わったはずでしょう!?

こうやさい
ファンタジー
 気がついたら乙女ゲームの国外追放された悪役令嬢に転生していました。  けど、この子は少し特殊なので……。  ガイドラインに基づきファンタジーにしましたが、ここで終わりだとちょっとホラーだと思う。けど前世の記憶が乗っ取る系って元の人格視点だと結構当てはまるからそうでもない? 転生じゃなくてNPCが自我に目覚めたとかにしてSFとか……微妙か。  ある意味ではゲーム内転生の正しい形といえばそうかもしれない。強制力がどこまで働くかって話だよな。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな

朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。 !逆転チートな婚約破棄劇場! !王宮、そして誰も居なくなった! !国が滅んだ?私のせい?しらんがな! 18話で完結

過程をすっ飛ばすことにしました

こうやさい
ファンタジー
 ある日、前世の乙女ゲームの中に悪役令嬢として転生したことに気づいたけど、ここどう考えても生活しづらい。  どうせざまぁされて追放されるわけだし、過程すっ飛ばしてもよくね?  そのいろいろが重要なんだろうと思いつつそれもすっ飛ばしました(爆)。  深く考えないでください。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...