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攻略1*攻略対象者たちと仲良くしましょう*

いや、だから視察ですって。

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 シルビアはあれから少し緊張がほぐれたのか、外の景色を見て柔らかい笑顔を浮かべていた。
 窓越しの柔らかい陽の光に反射する、白銀の髪。白い肌。それに映えるピンクの唇。

 …美人すぎる。商家の娘に扮していても、貴族としての品が隠れてないように思える。

 こんな娘が私の婚約者だなんて。悪役令嬢にさえならなければ、彼女はこんなにも穏やかに笑う人なんだと、目の前の現実を受け入れつつある。


「殿下、もう少しで到着しますね」

「あぁ、そうだな。なぁ、ペルカ嬢、着いてからも殿下呼びはやめた方がいいと思うのだが」

「…そうですわね。では、なんとお呼びすれば?」

「そうだな…私のことはディーでいいだろう。ペルカ嬢のことは、シルビィ、と呼んでいいだろうか?」

「!…はい。それで構いません」


 私がシルビィ、と口にした途端、顔を赤くしてそっぽを向くシルビアは、年相応の女の子に見えた。

 …正直、可愛いがすぎると思う。赤くなったシルビアの顔につられるように、自分の頬に熱が集まるのを感じた。
 それを気付かれたくなくて、シルビアから目を逸らし、窓の風景を眺めていた。



 町に入ると、人の多さにまず驚いた。父上の政策の一つである、上下水道がしっかりされている為、町に嫌な匂いはしなかった。
 こういう、中世ヨーロッパ風って町が臭いことが多く、少し不安だった。
 上下水道がしっかりあるのは、城だけかもしれないと思っていたし。

 目的地に着くと、ゆっくり馬車が止まる。
 それを確認して、先に降りるとシルビアに手を差し出す。
 その手にそっとシルビアが手を乗せる。


「気をつけて、シルビィ」

「……はい、ディー」


 実はディーは、私の愛称だったりする。たまに母上から呼ばれたりもする。他に思いつく名前もなかったし、婚約者ならいいだろうと呼ばせてみたが、なかなかに恥ずかしい。だけど………。


「君に、ディーと呼ばれるのは心地いいな。これからもそう呼んでくれないか?」

「なっ!」


 ビックリしたシルビアが馬車の階段を踏み外し、私に倒れかかってきた。
 自然に体が動き、シルビアを抱きとめていた。


「ふぅ…怪我はないか?」

「……大丈夫、です」


 腕の中にいるシルビアは思っていた以上に華奢で、赤く恥じらってる姿は、とても可愛く私の目に映った。
 いつまでも見ていたい、とすら思ってしまう程に。でも、店先で抱きついたままは流石にまずいので、そっと彼女を離す。
 そしてまた手を出し、彼女をエスコートする体制を整える。


 彼女をエスコートしながら入店した店は、今をトキメク大商家の店だ。王家に多額の寄付をしている為、男爵の爵位を賜る予定なのだとか。

 …そう、この男爵を賜る商人の息子こそ、4人目の攻略対象者なのだ。

 成金で甘えん坊、腹黒キャラでとにかくヒロインを独占しようと頑張っていたな。
 …監禁までしようとした時は、腹黒ではなくヤンデレ属性なのでは?とプレイしながら思ったものだ。

 とにかく、4人目の攻略対象に会いたいが為にこの店を選んだ。


 シルビアもこの店の雑貨に目移りをしている様だ。
 急にピタッとシルビアの足が止まり、エスコートしていた私も足が止まる。
 どうしたのだろうと、彼女を見やると、彼女の目の前にコバルトブルーのガラス細工に金で綺麗に飾られた、ブレスレットがあった。

 まるで、私の瞳の色の様だと、勘違いしそうになる程、綺麗にグラデーションもしていた。


「…すまない、コレを包んでくれ」

「かしこまりました」


 すぐそこに控えていた店員に、そのブレスレットを包むよう、声をかける。
 弾かれたようにビックリしたシルビアが私を見る。


「でん、…ディー、買い物に来たわけではありません!」

「だが、贈らせてほしい。シルビィは婚約者、なのだろう?」


 それ以上はシルビアも何も言えず、真っ赤な顔に口をパクパクとさせている様子はなかなかに面白かった。
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