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攻略1*攻略対象者たちと仲良くしましょう*
死刑宣告
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いつまでこの婚約者問題に悩んでいたのだろう。
気がついたらその日の訓練や食事、入浴を済ませていたが完全に記憶がない。
それほどまでにショックを受けていた。
「アストラルの剣」で一番嫌いなキャラだし。
何をどう考えても婚約破棄できる気がしない。
だいたい自分がディーンを嫌いだからって、嫌いな者同士で結婚して幸せになるなって考え方がヤバいよ。
…王族との婚約だから簡単には破棄できないことくらい理解しているけど、シルビア嬢の考え方がどうしても好きになれない。
でも。まだ正式に父上から言い渡されたわけでもないし。ヴィンセントも名前は聞こえなかったと言っていた。
シナリオが変わっているかもしれないという僅かな希望に賭けよう。
次の日も朝の自主練を終え朝食を摂っていたら、執事のクリスが入ってきた。
「殿下、お食事中のところすみません」
「いや、大丈夫だ」
「食事が済み次第、陛下の執務室に呼ばれております」
「……分かった。もう済んだところだ。行こう」
昨日に話を聞いて今日呼ばれるのかよ。
本当はまだご飯食べたかったけど、スッと食欲がなくなってしまった。
父上の執務室は食事を摂っていた部屋からは少し遠い。
だからだろうか。執務室に行くまでのこの時間が、死刑執行を言い渡される囚人の気持ちを容易に連想させる。
「父上、ディーンです。失礼してもよろしいでしょうか?」
「…あぁ。入れ」
「失礼します」
コンコンと二回ノックした後にきこえる父上のお声は、さながら裁判官だ。
父上のそばで控えているアズール宰相閣下も裁判官補佐に見えるよ。
…あぁ、私は今からシルビア令嬢との婚約という名の死刑宣告を受けるのだろう。
「父上、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「お前に婚約者ができたのでな。その報告だ。昨日ヴィンセントから聞いていただろう?」
パチパチと瞬きが止まらない。
「なぜ、父上がそれを?」
「ここは私の王宮だからな。私の目となり耳となるものたちはたくさんいる、と言うことだ」
いや怖ぇーーよ。
王様怖ぇーよ。
「お前の婚約者になる令嬢だが………」
ゴクリ。緊張して喉が鳴ってしまう。この瞬間は時が遅く、止まったように感じた。
「………シルビア公爵令嬢だ」
ハイキターーーーーーーーーー!!!
分かっていましたよ。分かっていましたとも。覚悟はしていましたよ。
「それについて、二人に顔合わせをしてもらう。一週間後だ」
「…父上、婚約者なんてまだ私には早い気が」
「一週間後だ」
「…はい、父上」
それとなく反抗してみたけど、お前の意見は聞いてないと言わんばかりに書類に目を通しながら、念押しのように日にちを強く言ってきた。
そんな言われたらさぁ、九歳の子供は泣くよ?アラサーだけど。
死刑宣告されたなぁ。
その死刑宣告、謹んでお受けしますよ。
ディーンが執務室を後にした部屋では、国王とアズール宰相閣下が仕事を淡々とこなしていた。
「…陛下、ディーン殿下のご様子、どうされたんですかね」
「…子供の考えることは分からん。いくら賢いディーンでもな」
「聡明であらせられるからこそ、ご婚約に何かお考えでもあったのではないですか?しかし、シルビア様も聡明なご令嬢ですし、最近では大変お美しくなられたとか噂を聞きますね」
「…ふん。口がよく動くな。なら同じだけ手も動かせそうだな」
「…あなたもですよ?陛下」
ディーンの預かり知らぬ場所でのお話。
この時のディーンは顔を真っ青にしながら、王族教育を受けるべく移動していた。
有無も言わせてもらえなかった。
父上怖ぇーーーー!
気がついたらその日の訓練や食事、入浴を済ませていたが完全に記憶がない。
それほどまでにショックを受けていた。
「アストラルの剣」で一番嫌いなキャラだし。
何をどう考えても婚約破棄できる気がしない。
だいたい自分がディーンを嫌いだからって、嫌いな者同士で結婚して幸せになるなって考え方がヤバいよ。
…王族との婚約だから簡単には破棄できないことくらい理解しているけど、シルビア嬢の考え方がどうしても好きになれない。
でも。まだ正式に父上から言い渡されたわけでもないし。ヴィンセントも名前は聞こえなかったと言っていた。
シナリオが変わっているかもしれないという僅かな希望に賭けよう。
次の日も朝の自主練を終え朝食を摂っていたら、執事のクリスが入ってきた。
「殿下、お食事中のところすみません」
「いや、大丈夫だ」
「食事が済み次第、陛下の執務室に呼ばれております」
「……分かった。もう済んだところだ。行こう」
昨日に話を聞いて今日呼ばれるのかよ。
本当はまだご飯食べたかったけど、スッと食欲がなくなってしまった。
父上の執務室は食事を摂っていた部屋からは少し遠い。
だからだろうか。執務室に行くまでのこの時間が、死刑執行を言い渡される囚人の気持ちを容易に連想させる。
「父上、ディーンです。失礼してもよろしいでしょうか?」
「…あぁ。入れ」
「失礼します」
コンコンと二回ノックした後にきこえる父上のお声は、さながら裁判官だ。
父上のそばで控えているアズール宰相閣下も裁判官補佐に見えるよ。
…あぁ、私は今からシルビア令嬢との婚約という名の死刑宣告を受けるのだろう。
「父上、本日はどのようなご用件でしょうか?」
「お前に婚約者ができたのでな。その報告だ。昨日ヴィンセントから聞いていただろう?」
パチパチと瞬きが止まらない。
「なぜ、父上がそれを?」
「ここは私の王宮だからな。私の目となり耳となるものたちはたくさんいる、と言うことだ」
いや怖ぇーーよ。
王様怖ぇーよ。
「お前の婚約者になる令嬢だが………」
ゴクリ。緊張して喉が鳴ってしまう。この瞬間は時が遅く、止まったように感じた。
「………シルビア公爵令嬢だ」
ハイキターーーーーーーーーー!!!
分かっていましたよ。分かっていましたとも。覚悟はしていましたよ。
「それについて、二人に顔合わせをしてもらう。一週間後だ」
「…父上、婚約者なんてまだ私には早い気が」
「一週間後だ」
「…はい、父上」
それとなく反抗してみたけど、お前の意見は聞いてないと言わんばかりに書類に目を通しながら、念押しのように日にちを強く言ってきた。
そんな言われたらさぁ、九歳の子供は泣くよ?アラサーだけど。
死刑宣告されたなぁ。
その死刑宣告、謹んでお受けしますよ。
ディーンが執務室を後にした部屋では、国王とアズール宰相閣下が仕事を淡々とこなしていた。
「…陛下、ディーン殿下のご様子、どうされたんですかね」
「…子供の考えることは分からん。いくら賢いディーンでもな」
「聡明であらせられるからこそ、ご婚約に何かお考えでもあったのではないですか?しかし、シルビア様も聡明なご令嬢ですし、最近では大変お美しくなられたとか噂を聞きますね」
「…ふん。口がよく動くな。なら同じだけ手も動かせそうだな」
「…あなたもですよ?陛下」
ディーンの預かり知らぬ場所でのお話。
この時のディーンは顔を真っ青にしながら、王族教育を受けるべく移動していた。
有無も言わせてもらえなかった。
父上怖ぇーーーー!
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