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攻略1*攻略対象者たちと仲良くしましょう*

噂の婚約者

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 ヴィンセントと共に訓練に励みあうこと早四年。
 お互いに九歳になった私達は軽くだが剣を交えるような訓練を開始していた。

 力はやや体格の大きい私が有利だが、ヴィンセントの細かい技に今だに翻弄される。
 それでも負けたくない!
 かろうじでヴィンセントがカウンターの体勢に入るのが見えた。
 カウンターが入る寸前に一歩距離を取る。
 そして驚いた表情をしたヴィンセントまで、地面を踏み込み一気に距離を詰め、木剣を首元にあてる。


「…参りました、殿下」

「ハハッ!これで十五回戦中、私の九勝目だな!」

「殿下にはあのカウンター読まれていたんですね」

「いや?見えただけだ」

「…それだけで避けてカウンター返ししてくるとか。九歳でバケモノ才能開花ですね」


 四年の月日はここまでヴィンセントとの距離を縮めてくれた。
 汗をかきながら爽やかに毒を吐く親友に、怒気をふくむ笑いしか返せないなんて。


「お二人とも流石の模擬戦でした。しばし休息をとりましょう」

「あぁ」


 汗を拭いながら話題はお互いが受けている授業だったり先生の悪口だとか、いつもなら取り止めのない話ばっかりだったのだがこの日は違った。


「そういえばディーンの話を聞いたんだが」

「私の話?」

「あぁ。何でも婚約者が決まったとか」

「……それ詳しく」

「えっ??」


 2人きりのときは砕けた口調で話してもらえるくらい仲良くなったのだが、今はその喜びを噛み締めてる場合ではない。
 ガシッとヴィンセントの肩を掴んだ私の顔が怖かったみたいだ。少し青ざめている。
 だが、今はそれどころではない!
 ヴィンセントが言うには、アズール公爵が話していた会話をあろうことかヴィンセントと数人の侍従が聞いていたとのことだ。
 ご令嬢の名前までは聞こえなかったと、よく分からないフォローをされたが、そんなに落ち込んだ顔をしていただろうか。

 私の婚約者。と言うことは、ディーンルートの悪役令嬢。

 シルビア・ペルカ公爵令嬢。

 アズール公爵家と肩を並べる二大公爵、ペルカ公爵家。そこの令嬢だ。
 こいつもディーンを嫌っていて、ヒロインと幸せにさせるものかとあの手この手でイジメていたなぁ。
 しかも、太っていて性格悪くて醜いキャラクターだなと思ったことを思い出した。

 そんな令嬢とこの世界でも婚約せねばならんのか?!
 ゲームのシナリオを変えてきたつもりだが婚約者変更までとはいかなかったのか。

 え、ふつーに嫌だわ。婚約者ならシナリオに関係ない可愛いご令嬢が良い。
 でも公爵家だもんなぁ。
 父上は私のこの願いだけは聞き入れては下さらないだろうな。

 はぁ。どうしたもんか。コレばっかりは子供の自分にはどうにもできないんだろうな。
 嫌われていても婚約破棄はできない。
 好かれても婚約破棄できない。


 …え?コレ、詰んでない????
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