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攻略1*攻略対象者たちと仲良くしましょう*

好感度は上々?

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木剣を振るう訓練もそろそろ終わる頃だろうか?
急にジェイルがスッと膝をおり姿勢を正した。
何だ?とジェイルとは反対の方に視線を向けると、奥の方から父上とおそらくアズール公爵であろう凛々しい男性が歩いてきている。

「…父上」

「あ、お父さま」

私につられるようにヴィンセントも視線を追い、父上たちを見つけたようだ。


「ディーン。励んでいるようだな」

「はい。父上。立派なアストラルの剣になれるようこれからも励みます」

「ディーン殿下。この度は息子をお誘いいただきありがとうございます」


優しい微笑みを浮かべているこの男性。
ヴィンセントの父親。そしてこの国の宰相閣下ヨシュア・アズール公爵だ。
ヴィンセントは木剣を両手に抱えたまま、アズール公爵に近づいた。
国王も側にいるこの状況に緊張しているのだろう。
木剣を抱えている手が僅かに震えている。


「お父さま。お願いがあります。僕、これからもディーン殿下と訓練を共にしたいです」

「アズール公爵。私からもお願いします。ヴィンセントと共に訓練に励み、父上や公爵みたいな友人になりたいのです」

「…陛下に伺ってはおりましたが、本当に聡明なお方だ。ディーン殿下。貴方が五歳である事など忘れてしまいそうです」


何とも嬉しいヴィンセントの提案にすぐさま私もお願いした。
アズール公爵は私に視線を合わせるように屈み、そして優しく微笑んでくれている。
五歳ってか、前世の記憶あるから中身はアラサーなんですよね。


「こちらこそ、息子をよろしくお願いします。よろしいですか?陛下」

「いいだろう。共に励むことは悪いことではないからな」

「ありがとうございます。父上、公爵」
「ありがとうございます!」


食い気味に声が被った。ヴィンセントの方を見ると、私を見ていたようで視線が合うとお互い笑いあった。


訓練の後、ヴィンセントをお茶に招いた。
お母さまがお手入れをされている庭園はとても綺麗だ。


「ヴィンセント、コレ私が好きなお菓子だ。食べてみてくれ」

「はい、殿下」

「今日は訓練を楽しいと思えた。ありがとう」

「僕もです。殿下のことはお父さまから聞いていました。僕と同じ歳なのにもう王族の教育を受けられていると」


ヴィンセントは少しずつケーキをすくっては食べてくれている。
少し緊張しているようにも見えるが。
ゴクンと飲み込んだ音が聞こえ、ヴィンセントが私を見る。


「お会いして、分かりました。僕も頭はいいと言われてきましたが、殿下は僕なんかよりすごいんだって。負けたくないけど、殿下が言ってくれたように友人にもなりたいです」


かぁんわぁいいいいいぃー
でもあんた本当に五歳かよ。
五歳とは思えん発言だよ。
お前も中身アラサーか?

「なら、私とヴィンセントはライバルで親友だ!」


私の言葉にヴィンセントはものすごく嬉しそうな顔をして頷いてくれた。
だからその満面の笑顔、可愛いかよー



いやー今日はよかったよかった。
ヴィンセントの満面の笑顔見れたし?私と?友人になりたいって!なーりーたーいって!
疲れはしたけど、今日の収穫を考えると上々ですよ。
好感度はいい感じじゃないですか!
大きなベッドに沈みながら、いい夢が見れそうだと眠りについた。
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