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ドワーフ
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「そこにある、ボウル取ってくれませんか?」
「あぁ、これ?はい。」
目の先にある棚に手を伸ばし、そこの深いプラスチックの調理器具を取る。
「ありがとうございます。」
彼女はボウルを取り洗って切った野菜を放り込む。
「今日は晩飯何ですか?」
彼女は黙ったまま、違う野菜を切る。
そして少し経ってからゆっくりと口を開いた。
「…鍋。」
「…鍋?」
「自分、料理は苦手なんですよ。」
苦手なんだ…
俺も買い物行くだけで、料理はコールに任せきりだったからなぁ。
「自分も、料理は出来ませんよ。」
「へぇ、家族と暮らしていたんですか?」
彼女は手を止め、こちらを見た。
「いや、ルームシェア?みたいな感じでした。」
「誰と?」
「友達。まぁ、もう友達では無いと思いますが…」
「それって……「お姉ちゃん!お腹減った!」」
青年がキッチンに入り大声で言った。
「あぁ、もうすぐ出来るからお父さんと遊んできて。」
「えぇー、僕も手伝いする!」
「大丈夫よ、もう少しだし、あ、じゃあ箸と皿を人数分持って行ってくれない?」
「分かった!…お兄さんも食べて行くの?」
「え、まぁ…そうかな。」
「ふーん…」と言い青年は出て行ってしまった。
俺嫌われてるのかなぁ…
「すみません、味見してもらってもいいですか?」
「良いですよ。」
いい香りのする鍋から汁をすくって小皿に移す。
「はい。」と渡され、小皿に口をつけて、ぐいっと口内へと入れる…
「…ぐぅ!?」
俺は皿を落として、先程飲んだ汁を吐いてしまった。
俺はそこに膝から崩れ落ち、唖然とする。
「えっ…」
心臓が痛い…
「どうしましか!?味が悪かったですか!?」
彼女は近づき心配そうに俺の方を見る。
「いや…あの…」
自分にも何が起きたのかがさっぱり分からない。
吐いてしまった。
どういう事だ味がしなかった。
しなかったのに吐いた。意味が分からない。
頭の中がごちゃごちゃする…
「どうした!?ハウパー!?」
彼女のお父さんが、心配そうな声色でキッチンに入ってきた。
「あの…彼が吐いちゃって…」
「それって…」
お父さんは、そこにある鍋をすくい取り飲んだ。
「……普通だ…という事は…」
お父さんは俺に近寄り、今の状況が分かっていない俺の肩をそっと抱いた。
「この鍋、味はしたか?」
「いいえ…」
「今、心臓は痛いか?」
「はい…」
なんで、こんな質問を…
「前にも、こんな事はあったか?」
前にも………ある。
俺は、広場でリンゴを吐き捨ててしまった。
あの時も心臓は痛かった…
「あります……でも、味の方はよく覚えていないです…」
「そうか……君はドワーフを知っているか?」
「……はい。」
なんで、今そんな事を…
「お前は、多分ドワーフだ。」
「あぁ、これ?はい。」
目の先にある棚に手を伸ばし、そこの深いプラスチックの調理器具を取る。
「ありがとうございます。」
彼女はボウルを取り洗って切った野菜を放り込む。
「今日は晩飯何ですか?」
彼女は黙ったまま、違う野菜を切る。
そして少し経ってからゆっくりと口を開いた。
「…鍋。」
「…鍋?」
「自分、料理は苦手なんですよ。」
苦手なんだ…
俺も買い物行くだけで、料理はコールに任せきりだったからなぁ。
「自分も、料理は出来ませんよ。」
「へぇ、家族と暮らしていたんですか?」
彼女は手を止め、こちらを見た。
「いや、ルームシェア?みたいな感じでした。」
「誰と?」
「友達。まぁ、もう友達では無いと思いますが…」
「それって……「お姉ちゃん!お腹減った!」」
青年がキッチンに入り大声で言った。
「あぁ、もうすぐ出来るからお父さんと遊んできて。」
「えぇー、僕も手伝いする!」
「大丈夫よ、もう少しだし、あ、じゃあ箸と皿を人数分持って行ってくれない?」
「分かった!…お兄さんも食べて行くの?」
「え、まぁ…そうかな。」
「ふーん…」と言い青年は出て行ってしまった。
俺嫌われてるのかなぁ…
「すみません、味見してもらってもいいですか?」
「良いですよ。」
いい香りのする鍋から汁をすくって小皿に移す。
「はい。」と渡され、小皿に口をつけて、ぐいっと口内へと入れる…
「…ぐぅ!?」
俺は皿を落として、先程飲んだ汁を吐いてしまった。
俺はそこに膝から崩れ落ち、唖然とする。
「えっ…」
心臓が痛い…
「どうしましか!?味が悪かったですか!?」
彼女は近づき心配そうに俺の方を見る。
「いや…あの…」
自分にも何が起きたのかがさっぱり分からない。
吐いてしまった。
どういう事だ味がしなかった。
しなかったのに吐いた。意味が分からない。
頭の中がごちゃごちゃする…
「どうした!?ハウパー!?」
彼女のお父さんが、心配そうな声色でキッチンに入ってきた。
「あの…彼が吐いちゃって…」
「それって…」
お父さんは、そこにある鍋をすくい取り飲んだ。
「……普通だ…という事は…」
お父さんは俺に近寄り、今の状況が分かっていない俺の肩をそっと抱いた。
「この鍋、味はしたか?」
「いいえ…」
「今、心臓は痛いか?」
「はい…」
なんで、こんな質問を…
「前にも、こんな事はあったか?」
前にも………ある。
俺は、広場でリンゴを吐き捨ててしまった。
あの時も心臓は痛かった…
「あります……でも、味の方はよく覚えていないです…」
「そうか……君はドワーフを知っているか?」
「……はい。」
なんで、今そんな事を…
「お前は、多分ドワーフだ。」
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