リタヴィア

らくお

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ドワーフ

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とりあえず俺は、町に降りた。
金は全然無いけれど腹が減って仕方が無かったからだ。
「まじで腹と背中がくっつきそうなくらい背中が痛てぇ…胃はすっからかんなのに吐きそう…」
フラフラとした足でゆっくりと歩く俺は、果物屋に行ってリンゴを2つ買った。
「兄ちゃんガリガリだなぁー…ご飯食べてるのかい?」
果物屋の店主が心配そうに話しかけて来た。
「いやぁ…あまり…」
「しかも何で半袖なんだ?寒くねーのか?」
「寒いです…。」
「ほら、これやるよ。うちも金がねーからなー。」
店主はそう言い、俺に羽織る毛布をくれた。
「……良いんですか?」
「古いし俺のお下がりで悪いけど使ってくれ。」
「ありがとうございます。」
毛布と買ったものを持ち、そこから離れた。
あの人はいい人だ…!

「あー……さみぃ…」
やはり毛布1枚じゃ寒いや…
俺は初めて町の広場に来た。
町に降りることなんて買い物ぐらいしか無かったから、こんな広場があるなんて知らなかった。
とりあえず…リンゴ食お…
紙袋からリンゴを出してかぶりついた時だった。
心臓の辺りに激痛が走った。
俺は痛みに耐えきれずそこに倒れ込み、胸元を握る。
「ぐぅ……ぁっ…」
息苦しい…
口から先程食べたリンゴを吐き捨ててしまった。
「はぁ…はっ……ぁ…」
「あなた大丈夫?病院行った方がいいんじゃない?」
近くにいた老婆が話しかけて来た。
「…はぃ…まぁ……」
「そう?それならいいのだけど…」
と、老婆はゆっくり俺が座っていたベンチに腰をかけた。
その隣のスペースに俺もゆっくり腰を下ろし、呼吸を整える。
「最近話す相手も居ないし、ちょっと話し相手になってくれるかい?」
まぁ呼吸整えたいし、いっか。
「良いですよ。」
老婆は持っていた杖を地面にトントンと打って話し始めた。
「私にはね、50年前に結婚した旦那が居るんだけどね。」
「へぇ、そうなんですか…ついでにお歳は?」
「お婆さんに歳を聞くんじゃない!」
「あはは、すみません続きをどうぞ。」
老婆は、文を書くように話を進めていった。
「仲良く暮らしていたのだけどね、結婚して10年後に旦那は帰って来ない日が多くなったんだよ。
そして帰ってきた時に私はこう言ったんだよ、
『最近帰って来ない日が多いけどお仕事大変なの?』
あぁ、旦那は水売りの仕事をしていてね、山に汲みに行っては町で売ってを繰り返していたんだよ。
…それで、言ってやったらキレて私の事を叩いたんだよ。そして、
『お前に関係無い!』
って言われてね。まぁこっちも怒ってビンタしてやったんだけどね。
それからというもの、私のご飯を1口も食べずに水をひたすら飲むようになってさ、
私は最初、まだ怒ってるのかなって思ってたから黙ってたんだよ。
そしてさ近所の人に聞いたらさ、旦那が自分の売る水にまで手を出して、商人続けれなくなってさ、
私もここで気付いたんだよ、おかしいなって、だから聞いてみたんだ、
『なんで水ばっかり飲むのよ、そんなに腹が空いてるのなら私の作ったご飯を食え!』
って。そしたらさ、旦那が何も言わずに走って家を出て行ったのよ。
私は焦って何故か追っててさ気付いたら何処だか知らない場所にいてね、
『ここは?』って聞いたらね、旦那はさ
『今までありがとう。』って言ったんだよ。
何でそんなこと言うのよ。って言おうとしたら、次の瞬間旦那の胸から服を突き破って木の根が出てきたのよ。
私は呆気に取られて何も言えなかったんだけどね…
根は土の中に入っていってるしドンドン顔も侵食されていって、とうとう全部木になったの。
今じゃドワーフって呼んでいるのかしら?
多分旦那はドワーフになってて私に心配させたく無かったのね…
っていう話!面白かった?」
面白いどころか、話し上手だなこの人…
「はい、面白かったです。旦那さんは何処に?」
「うふふ。」と、老婆はくるりと後ろを振り返った。
俺もつられて振り向くと、すごく大きい木が立派にたっていた。
「この木…ですか?」
「えぇ…立派でしょう?この木は桜なの。春になったら見に来なさい。私も居るはずよ。」
「……はい、絶対見に来ます!」
「と、随分長居しちゃったかしら。それじゃあね、ご飯の準備をしないと…」
「さようなら…」

すっかり夜になって、いちだんと冷え込んできた。
仕方ない…我慢して寝よう…
そう思った時だった。
顔面にひんやりとした冷たい何かが顔に張り付いた。
触るとさらさらとした紙で、何か書いてあった。
「あ?暗くて見えね~…」
明日見よう!
そう思い眠りについた。
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