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Let's play!
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16:30
目が覚めると、俺はコンクリートの壁に囲まれた部屋に寝転がっていた。立ち上がって周りを見渡すと、一つの箱が置いてあった。これが配られた〝武器〟なのだろう。
「………」
中を調べてみると、一枚のバーコードが書かれている紙が入っていた。
「は? これが武器?」
しかしよく見てみると、〝このバーコードを手持ちの端末の「現在状況」からカメラで読み取ってください〟という文章があった。
俺はポケットに入っていた端末を取り出して電源を入れる。「現在状況」の操作項目の中に「カメラ」というものがあったのでそこからバーコードを読み取った。
〝罠操作アプリ「避け避け君」をインストールしました。〟
「罠操作? いったいどういう…」
〝説明を読みますか? はい イエス 〟
どちらも肯定じゃねえか! と叫びたくなったが、堪えてはいを押す。
〝地図上に現れる罠をタップすると、その罠の電源のオンオフを切り替えることが出来ます。そのため、いざというときの逃走経路や敵を罠にはめるという使い方も可能です〟
なるほど。俺の武器はこの迷宮に仕掛けられている罠と言うことか。しかし、この武器、罠のないところでは全く無力なのではないだろうか。
〝このバーコードは一度使うと効果が無くなるので処分する必要はありません。それでは、ゲームをお楽しみください〟
これで説明文は終わりだった。端末の地図を呼び出してみると、確かに迷宮のマップであちこちに罠の存在が示してあり、どれもオフとなっている。つまりゲーム開始時点で作動している罠は無いという事だ。
さて、この罠を操作するという武器は当然罠が無ければ意味がないわけで、その罠の多い場所こそが俺のホームグラウンドにすべき場所である。まずはそこに行けば生き残りやすいだろう。
「現在地は……地下三階か」
現在地は地下三階の西側にあった。罠が最も密集しているのは地下二階の中央部なので、当面の目標はそこを目指すことになるだろう。
俺はとりあえずこの開始地点の部屋から移動することにした。
きいい、と音をたてて金属製のドアが開いた。外も部屋の中と同じく、やはりコンクリートの壁で、曲がりくねった通路となっている。
配られた携帯端末の地図を呼び出して地下二階の罠が大量設置されているエリアを目指す。他のプレイヤーは侵入出来なくなる拠点とするためだ。このゲームは他のプレイヤーを殺さねばならないのだが、殺すのも殺されるのもまっぴら御免だ。ひとまずゆっくり腰を落ち着けてから考えたい。
今は迷宮内の全ての罠はオフの状態にしてある。俺のように戦う気のないプレイヤーが事故に遭うのを防ぐためというのと、いざというときに敵を罠に誘い込むためである。一度通って安全だと思った通路は実は罠で、油断して引っかかるーというのを狙っているのだ。
少し操作してみて、地図と罠アプリは連動させることが可能なのが分かったので、地図を見ながら罠のオンオフを設定できるようになった。それによると、罠が近い位置にあるので、少し心強い。
灰色の廊下に俺の歩く音が反響した。誰かこのゲームに積極的なプレイヤーに訊かれてやしないかとひやひやする。そこで、少しでも足音を小さくするようにそっと歩くことにした。
まさか自分が命を取られる心配をするとは昨日まで夢にも思わなかったが、意外とすんなり受け入れ、この状況下で動けているーと思う。だが、いざ人の命を奪ったり奪われそうになったりしたときに、果たして俺は即座に判断を下して行動することが出来るのだろうか。ここは社会での常識や倫理が通用しない、〝ゲーム〟の舞台となっている。大丈夫だと思っていても油断した瞬間に誰かに殺られるかもしれない。
そう思うと、廊下にある蛍光灯に照らされてできる自分の影が視界の端を動くのすら敵ではないかとびくびくするようになってしまった。
自分の武器である罠は攻撃には優れているが、自分を守るには難しいのではないか。例えば、そこの影から急に刃物を持ったプレイヤーが現れて逃げ切れなかったら、成すすべなく殺されるだろう。かなり不安な点はそこだった。もしかすると。〝ショップ〟や〝ボックス〟で新しい武器を入手することが出来るのかもしれないが……
ふと右手にドアがあるのを見つけ、立ち止まった。誰かが隠れでいるかもしれないという恐怖をどうにか抑えてドアを開ける。この先にアイテムがあれば……と思ったのである。もしプレイヤーだったら同盟するか、そそくさと逃げてしまいたい。何も無かったらそれでもいいが。
ドアを開けて俺が目にしたのは、黒い箱だった。
「なんだこれ……」
中に人がいることが分からないようにドアをきっちり閉め、俺はその箱に駆け寄った。地図で確認したが、罠ではないらしい。ということは……
「ボックスか⁉」
こんなに早く見つけるとは幸運だった。これで生存率を僅かなりとも上げられる、とわくわくしてその箱を空ける、が、中に入っていたのは赤色の鍵だけだった。
「は?」
中に説明の印刷された紙が一緒に入っていた。その薄っぺらい紙は半分に折りたたんであり、俺はそれを開いて内容を読んだ。
〈アイテム〉「赤の鍵」
これを所持している者は赤の扉を開けることができる。他に鍵は青、黄、緑、紫が存在する。
期待していた護身用の武器ではなかったが、重要そうな文字通りのキーアイテムである。これでかなり有利になったに違いない。俺は満足して外に出ることにした。
がちゃり。
ドアを開けた瞬間に、何かが当たる。ドアの向こうに誰かがいるのだ。
「ーっ!」
身構える。といっても有効な反撃は全くできないが。次の瞬間、ドアが完全に開き、向こうにいた〝誰か〟がスリングショットを俺に向けて立っているのが見えた。
〈橋野和樹(本名・北橋和樹)〉
ポイント 0
所有武器 罠操作アプリ
所有アイテム 赤の鍵
現在位置 地下三階西のフロア
同時刻
「ったく……」
助さんと名乗った大学生風の男は大きなポリカーボネイト製の楯を持って迷宮内を歩いていた。
「武器が楯なんてふざけてるよなあ……」
中に一緒に入っていた説明を思い出す。
〝〈武器〉防弾シールド
ポリカーボネイト製の楯です。銃弾を防ぎ、打撃にも耐えることができる頼りになる防具であると同時に、それで体当たりをすると、使用者の力や体重によりますが、相手にかなりのダメージを与えることができます。〟
防弾シールドなんて代物が用意されているのだから、当然銃を武器として持っているプレイヤーもいるはずだ。そういうやつには十分気を付けなければならないが、同時に同盟を組む相手としては非常に心強い相手になるだろう。
この〝ゲーム〟で殺しあうつもりはまったく無い。金持ちどもの外道な娯楽に付き合うほど人間をやめてはいないのだ。なんとか生き延びるため、同盟者を探さなくてはならないが……
〈助さん〉
ポイント 0
所有武器 防弾シールド
所有アイテム なし
現在地 地下一階北のフロア
同時刻
かつ、かつ、かつ。
ヒールが床を叩く音が廊下にこだまする。
(ヤバいヤバい、私これ死んだかも)
染めた金髪を揺らしてマイケル玉緒は廊下を当てもなく彷徨っていた。
(まさかこんな身を守れない武器だったなんて……)
〝〈アイテム〉毒薬
これはストロベリーヤドクガエルから抽出された猛毒である。これが体内に入った場合はその量が僅かでも死に至る。吹き矢に塗ったり敵の食べ物に塗ったりすると良いだろう。なお、取り扱いには十分な注意をしておかねばならない。〟
(でも武器と言えば武器か……)
誰か一人でも殺せたら100ポイント。つまり5千万円がもらえる。全員分のポイントならば五億まで稼ぐことも……
その時、ピンと頭にあるアイデアが浮かんだ。
そうだ、自分の手元にある武器なら他のプレイヤーを一気に毒殺できるではないか。これはピンチではない、チャンスなのだ。
(ひとまず休憩場所を探さないとね)
地図を見て、マイケル玉緒は歩き始めた。
〈マイケル玉緒〉
ポイント 0
所有武器 なし
所有アイテム 毒薬
現在地 地下一階南のフロア
19:21
こんな殺し合いは馬鹿げている。
コッコーはある部屋の中で静かに座っていた。あのルール説明を聞いたときから、どうにかしてこの〝ゲーム〟を潰してやりたいと思った。人間の命をゲームの駒程度にしか思っていない主催者の意に沿うような行動をとるのはまっぴら御免だった。
全員に掲示板を使って呼び掛けてみよう。そう思った時、丁度ポケットに入れておいた端末が振動して、掲示板に何か新着メッセージが出たことを知らせた。
取り出して電源を入れると、あるプレイヤー間の同盟が成立したことが書き込まれていた。掲載者はゲーム主催となっている。
「へえ、こいつらが組んだのか」
彼らが自分の考えに賛成して同盟を組んでくれたならば殺気立っている連中を諫めてなんとか平和的解決ができるのではないか。
もし相手が問答無用で攻撃を仕掛けてきたなら……
コッコーは立てかけておいた日本刀の柄を握った。もちろん支給されたもので、説明書きが添えてあった。
〝〈武器〉日本刀
非常に切れ味の良い武器。多少なまくらになっても重さで叩き斬ることは出来ないので注意。これを所持するあなたの力が強ければ相当の威力を発揮するだろう。〟
もし相手が攻撃してきたら、こちらも自分の命を守るためにこれで反撃しなくてはならない。これを使わないようにしたいものだ。
そう思いながら、コッコーはあらかじめ打ち込んでおいた掲示板に送る文章を、送信した。
〈コッコー〉
ポイント 0
所有武器 日本刀
所有アイテム なし
現在地 地下二階南のフロア
「プレイヤーがそれぞれ動き出したようですね」
「ああ、観客も世界中にネットで流している。勿論一部の人間のみにだが。賭けの方もいい感じに客が集まっている」
あるビルの二階で監視カメラの映像を見ながら二人が話していた。両方ゲームのスタッフである。
「しかしこれだけお膳立てして何も起こらなかったら白けますよ。大丈夫なんですか」
一人が尋ねると、もう一人は頷いた。
「念のため、火付け役となる一人を用意してある。まあ自然と戦いは始まるだろうけどね。ほら……」
指さした先では既にプレイヤー同士が出会い、一方が武器を向けて対峙していた。
目が覚めると、俺はコンクリートの壁に囲まれた部屋に寝転がっていた。立ち上がって周りを見渡すと、一つの箱が置いてあった。これが配られた〝武器〟なのだろう。
「………」
中を調べてみると、一枚のバーコードが書かれている紙が入っていた。
「は? これが武器?」
しかしよく見てみると、〝このバーコードを手持ちの端末の「現在状況」からカメラで読み取ってください〟という文章があった。
俺はポケットに入っていた端末を取り出して電源を入れる。「現在状況」の操作項目の中に「カメラ」というものがあったのでそこからバーコードを読み取った。
〝罠操作アプリ「避け避け君」をインストールしました。〟
「罠操作? いったいどういう…」
〝説明を読みますか? はい イエス 〟
どちらも肯定じゃねえか! と叫びたくなったが、堪えてはいを押す。
〝地図上に現れる罠をタップすると、その罠の電源のオンオフを切り替えることが出来ます。そのため、いざというときの逃走経路や敵を罠にはめるという使い方も可能です〟
なるほど。俺の武器はこの迷宮に仕掛けられている罠と言うことか。しかし、この武器、罠のないところでは全く無力なのではないだろうか。
〝このバーコードは一度使うと効果が無くなるので処分する必要はありません。それでは、ゲームをお楽しみください〟
これで説明文は終わりだった。端末の地図を呼び出してみると、確かに迷宮のマップであちこちに罠の存在が示してあり、どれもオフとなっている。つまりゲーム開始時点で作動している罠は無いという事だ。
さて、この罠を操作するという武器は当然罠が無ければ意味がないわけで、その罠の多い場所こそが俺のホームグラウンドにすべき場所である。まずはそこに行けば生き残りやすいだろう。
「現在地は……地下三階か」
現在地は地下三階の西側にあった。罠が最も密集しているのは地下二階の中央部なので、当面の目標はそこを目指すことになるだろう。
俺はとりあえずこの開始地点の部屋から移動することにした。
きいい、と音をたてて金属製のドアが開いた。外も部屋の中と同じく、やはりコンクリートの壁で、曲がりくねった通路となっている。
配られた携帯端末の地図を呼び出して地下二階の罠が大量設置されているエリアを目指す。他のプレイヤーは侵入出来なくなる拠点とするためだ。このゲームは他のプレイヤーを殺さねばならないのだが、殺すのも殺されるのもまっぴら御免だ。ひとまずゆっくり腰を落ち着けてから考えたい。
今は迷宮内の全ての罠はオフの状態にしてある。俺のように戦う気のないプレイヤーが事故に遭うのを防ぐためというのと、いざというときに敵を罠に誘い込むためである。一度通って安全だと思った通路は実は罠で、油断して引っかかるーというのを狙っているのだ。
少し操作してみて、地図と罠アプリは連動させることが可能なのが分かったので、地図を見ながら罠のオンオフを設定できるようになった。それによると、罠が近い位置にあるので、少し心強い。
灰色の廊下に俺の歩く音が反響した。誰かこのゲームに積極的なプレイヤーに訊かれてやしないかとひやひやする。そこで、少しでも足音を小さくするようにそっと歩くことにした。
まさか自分が命を取られる心配をするとは昨日まで夢にも思わなかったが、意外とすんなり受け入れ、この状況下で動けているーと思う。だが、いざ人の命を奪ったり奪われそうになったりしたときに、果たして俺は即座に判断を下して行動することが出来るのだろうか。ここは社会での常識や倫理が通用しない、〝ゲーム〟の舞台となっている。大丈夫だと思っていても油断した瞬間に誰かに殺られるかもしれない。
そう思うと、廊下にある蛍光灯に照らされてできる自分の影が視界の端を動くのすら敵ではないかとびくびくするようになってしまった。
自分の武器である罠は攻撃には優れているが、自分を守るには難しいのではないか。例えば、そこの影から急に刃物を持ったプレイヤーが現れて逃げ切れなかったら、成すすべなく殺されるだろう。かなり不安な点はそこだった。もしかすると。〝ショップ〟や〝ボックス〟で新しい武器を入手することが出来るのかもしれないが……
ふと右手にドアがあるのを見つけ、立ち止まった。誰かが隠れでいるかもしれないという恐怖をどうにか抑えてドアを開ける。この先にアイテムがあれば……と思ったのである。もしプレイヤーだったら同盟するか、そそくさと逃げてしまいたい。何も無かったらそれでもいいが。
ドアを開けて俺が目にしたのは、黒い箱だった。
「なんだこれ……」
中に人がいることが分からないようにドアをきっちり閉め、俺はその箱に駆け寄った。地図で確認したが、罠ではないらしい。ということは……
「ボックスか⁉」
こんなに早く見つけるとは幸運だった。これで生存率を僅かなりとも上げられる、とわくわくしてその箱を空ける、が、中に入っていたのは赤色の鍵だけだった。
「は?」
中に説明の印刷された紙が一緒に入っていた。その薄っぺらい紙は半分に折りたたんであり、俺はそれを開いて内容を読んだ。
〈アイテム〉「赤の鍵」
これを所持している者は赤の扉を開けることができる。他に鍵は青、黄、緑、紫が存在する。
期待していた護身用の武器ではなかったが、重要そうな文字通りのキーアイテムである。これでかなり有利になったに違いない。俺は満足して外に出ることにした。
がちゃり。
ドアを開けた瞬間に、何かが当たる。ドアの向こうに誰かがいるのだ。
「ーっ!」
身構える。といっても有効な反撃は全くできないが。次の瞬間、ドアが完全に開き、向こうにいた〝誰か〟がスリングショットを俺に向けて立っているのが見えた。
〈橋野和樹(本名・北橋和樹)〉
ポイント 0
所有武器 罠操作アプリ
所有アイテム 赤の鍵
現在位置 地下三階西のフロア
同時刻
「ったく……」
助さんと名乗った大学生風の男は大きなポリカーボネイト製の楯を持って迷宮内を歩いていた。
「武器が楯なんてふざけてるよなあ……」
中に一緒に入っていた説明を思い出す。
〝〈武器〉防弾シールド
ポリカーボネイト製の楯です。銃弾を防ぎ、打撃にも耐えることができる頼りになる防具であると同時に、それで体当たりをすると、使用者の力や体重によりますが、相手にかなりのダメージを与えることができます。〟
防弾シールドなんて代物が用意されているのだから、当然銃を武器として持っているプレイヤーもいるはずだ。そういうやつには十分気を付けなければならないが、同時に同盟を組む相手としては非常に心強い相手になるだろう。
この〝ゲーム〟で殺しあうつもりはまったく無い。金持ちどもの外道な娯楽に付き合うほど人間をやめてはいないのだ。なんとか生き延びるため、同盟者を探さなくてはならないが……
〈助さん〉
ポイント 0
所有武器 防弾シールド
所有アイテム なし
現在地 地下一階北のフロア
同時刻
かつ、かつ、かつ。
ヒールが床を叩く音が廊下にこだまする。
(ヤバいヤバい、私これ死んだかも)
染めた金髪を揺らしてマイケル玉緒は廊下を当てもなく彷徨っていた。
(まさかこんな身を守れない武器だったなんて……)
〝〈アイテム〉毒薬
これはストロベリーヤドクガエルから抽出された猛毒である。これが体内に入った場合はその量が僅かでも死に至る。吹き矢に塗ったり敵の食べ物に塗ったりすると良いだろう。なお、取り扱いには十分な注意をしておかねばならない。〟
(でも武器と言えば武器か……)
誰か一人でも殺せたら100ポイント。つまり5千万円がもらえる。全員分のポイントならば五億まで稼ぐことも……
その時、ピンと頭にあるアイデアが浮かんだ。
そうだ、自分の手元にある武器なら他のプレイヤーを一気に毒殺できるではないか。これはピンチではない、チャンスなのだ。
(ひとまず休憩場所を探さないとね)
地図を見て、マイケル玉緒は歩き始めた。
〈マイケル玉緒〉
ポイント 0
所有武器 なし
所有アイテム 毒薬
現在地 地下一階南のフロア
19:21
こんな殺し合いは馬鹿げている。
コッコーはある部屋の中で静かに座っていた。あのルール説明を聞いたときから、どうにかしてこの〝ゲーム〟を潰してやりたいと思った。人間の命をゲームの駒程度にしか思っていない主催者の意に沿うような行動をとるのはまっぴら御免だった。
全員に掲示板を使って呼び掛けてみよう。そう思った時、丁度ポケットに入れておいた端末が振動して、掲示板に何か新着メッセージが出たことを知らせた。
取り出して電源を入れると、あるプレイヤー間の同盟が成立したことが書き込まれていた。掲載者はゲーム主催となっている。
「へえ、こいつらが組んだのか」
彼らが自分の考えに賛成して同盟を組んでくれたならば殺気立っている連中を諫めてなんとか平和的解決ができるのではないか。
もし相手が問答無用で攻撃を仕掛けてきたなら……
コッコーは立てかけておいた日本刀の柄を握った。もちろん支給されたもので、説明書きが添えてあった。
〝〈武器〉日本刀
非常に切れ味の良い武器。多少なまくらになっても重さで叩き斬ることは出来ないので注意。これを所持するあなたの力が強ければ相当の威力を発揮するだろう。〟
もし相手が攻撃してきたら、こちらも自分の命を守るためにこれで反撃しなくてはならない。これを使わないようにしたいものだ。
そう思いながら、コッコーはあらかじめ打ち込んでおいた掲示板に送る文章を、送信した。
〈コッコー〉
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所有武器 日本刀
所有アイテム なし
現在地 地下二階南のフロア
「プレイヤーがそれぞれ動き出したようですね」
「ああ、観客も世界中にネットで流している。勿論一部の人間のみにだが。賭けの方もいい感じに客が集まっている」
あるビルの二階で監視カメラの映像を見ながら二人が話していた。両方ゲームのスタッフである。
「しかしこれだけお膳立てして何も起こらなかったら白けますよ。大丈夫なんですか」
一人が尋ねると、もう一人は頷いた。
「念のため、火付け役となる一人を用意してある。まあ自然と戦いは始まるだろうけどね。ほら……」
指さした先では既にプレイヤー同士が出会い、一方が武器を向けて対峙していた。
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