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第3部(終章)
皇帝殺害
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黒い物体が、身体の脇を物凄いスピードで通過した。
風圧でよろめいた蘇芳の身体を、後ろから花鶏が抱き留める。
「あ、あとり」
「先生しっかりして!東雲ッ、拘束しろ」
東雲は大きな肢体をくねらせて江雪を包囲し、そのまま胴体で雁字搦めにしようとした。
その瞬間、天井からふわりと気配が下りてきたと思うと、それは人の姿を取り、風のように緑の裾をそよがせながら、東雲に向かって両手を突き出した。
東雲が背後の回廊に面した壁に叩きつけられ、そのまま壁を破壊して外へ転がり出る。
外にいた人間たちから悲鳴が上がった。
花鶏の腕の中で呆然と身を固くする。江雪の台詞がエンドレスで頭の中を巡っていた。
(今の、俺のこと、俺の秘密を知ってる……?そんなのあるわけない、あいつはゲームの登場人物で、そんなの知るわけ)
「先生」
耳元で呼ばれて、びくっと身体が跳ねた。そうだ花鶏……花鶏もさっきの言葉を聞いたはず。
「さっきのは違くて、江雪の世迷言です、私は蘇芳で、だから、信じてください花鶏、私は貴方を騙すつもりは」
「先生俺を見て!」
ぱしんと両頬を手で叩くように包まれた。ぎょっとして口を閉じた蘇芳を、花鶏の透きとおる黒目が覗き込んでくる。おろおろと目を逸らそうとする蘇芳を許さず、顔を固定してじっと視線を絡め取られてしまった。
「カデンルラで俺が言ったこと覚えてる? 俺には貴方だけ。天地神明に誓って俺は先生のもの。何があっても貴方を信じるよ……怖がらないで」
肺に溜まった重たい空気が抜けていく。
(……そうだ、大丈夫。花鶏にとっての蘇芳は俺なんだ。誰が何といおうと、花鶏が認めてくれたらそれでいい)
軽く頷いてみせると、花鶏は念のため確かめるように目を見てから、蘇芳の身体を解放した。
「……済んだかな。もう話しかけてもいいかい?」
花鶏が聞えよがしな舌打ちをした。
「殿下」
「今のは不可抗力」
主人の気持ちに呼応してか、東雲もイラつきながら室内に戻って激しく威嚇している。
威嚇の先にいるのは江雪、ではなく、その肩の上に浮遊している小柄な少女の姿をした……沙羅だ。
(沙羅の自我はもうないのかもしれないな)
薄っすら湛えた笑みも感情から生まれたものではなく仮面のようだ。
白い髪が空中に揺蕩う様子はまるで水の中を泳ぐ金魚のように美しい。
「なんだ、あれは……」
壁際に退避していた雨月が、腕の中に薔琵を庇いながら沙羅を見て呟く。
原作でははつりと協力して沙羅の魂を救った雨月だが、目の前にいるのは人外の<水蟲>となった彼女だ。
明らかに今、東雲から江雪を守っていた。
あり得ない。蟲は人間を守ったりなどしない。ただ一個の例外を除いては。
「主上を殺めたのか」
蘇芳の言葉に、ガタっと椅子にぶつかる音がした。
「蘇芳、どういうことだそれは。父上がなんだって? 江雪!説明してくれ」
蘇芳が口を開きかけた時、江雪がわざとらしい溜息を吐いた。
「雨月殿下……今更そんな。殿下が最後にお父上とお会いしたのはいつでしたか?」
「は……?何を」
「花鶏殿下に至っては、いや、これは私のせいでもありますね。ただの一度も会ったことがないのでしたか」
江雪はやれやれと首を横に振った。
「この十五年、誰がこの国の統治をしてきたと? わが父、江雲と、彼の教育した優秀な頭脳たちですよ。残念ながら私は父の御眼鏡には適わなくてね。彼の後継者は別に用意されているのですが、まあともかく」
江雪は世間話でもするように続けた。
「父の見込んだ後継者が次の為政者というわけです。たとえ誰が皇位に就こうが、実質、国を回す人間が別にいるのは、よくあることです。カデンルラの新しい国主は人格者で民からの支持もあついが、裏で国政を牛耳っているのは元奴隷の側近らしいと専らの噂ですしね」
雨月にとってカデンルラの国内事情など、耳を素通りしているようだった。
「後継者……?誰なんだ、それは。いや待て、父上の件が先だ。珀、来なさい。父上のもとへ行く」
「『これ』はお見逃しくださると?」
江雪が手で差す先にいるのは浮遊する沙羅だ。雨月は沙羅が視界に入った途端、顔を背けた。
「お前がこの事態を引き起こしたのは明白だ。追って沙汰を下す。それまで城内から出ることは許さん」
江雪は悠々と答えた。
「行く宛もありませんから、どうぞお気になさらず」
苛立ちと不安を纏って出て行こうとする雨月を押しとどめる。
「どきなさい、蘇芳」
「殿下、この場から立ち去るということは、江雪の反逆を見逃すも同然です。分かっておいでのはず。彼女を……沙羅を消滅させなければ事態が収拾しません。私に手立てが」
「その最後の希望が<秘跡の巫女>だったのだ。何度言わせる」
ぐいと押し返されてしまった。
沙汰を下すと言いながら、雨月は衛兵も呼んで江雪を拘束しようとも、珀を差し向けることもしない。
(冷静な判断ができてない、目の前に元凶があるのに、それをどうにかしないで父親の安否確認に行くなんて……!)
珀が困り顔で蘇芳を見た。東雲が弾き飛ばされた時も慌てて駆け寄っていたし、蘇芳というより東雲の味方なのだろう。
押された拍子の隙を突いて、雨月は出て行ってしまう。後から薔琵も急ぎ足で追いかけていく。すれ違いざまに目礼した彼女も、不自然なまでに沙羅を見ようとしなかった。
「古来、蟲というのは穢れや悪意の総称だ。君はよく知っているじゃないか、蘇芳。理性ではなく、本能が忌避して、無いものとして扱おうとする。東雲をぶつけてくる花鶏殿下が異常なのだ」
花鶏が進み出ると、東雲もまとわりつくようにして主人に従った。
「さっき言ったのは事実か」
花鶏が重い口調で問う。
「蘇芳が偽物ということですか?ええ、隣の本人に聞いてみたらいかがです」
「先生ではなく、父上のことだ。……殺したのか」
江雪が微笑んだ。
「雨月殿下より話が早くて助かります。といっても、ずっと寝たきり状態だったのです。当時、ご子息は皆まだ若く、後嗣の儀もまだだった。国内の混乱を避けるために、表向き小康状態であることにして、裏では政まつりごとのすべてを宰相である江雲が取り仕切っていました。死んだのはついさっきですが、まさに眠るように召されましたよ」
「嘘を吐け」
花鶏がハッと嘲笑した。
「沙羅が<睡蓮>に何をしたのか、この目で見てるんだ。そんな妄言、信じられるか」
無慈悲に心臓を奪い取り、食らったであろう沙羅の姿。花鶏に目隠しされたおかげで直視せずに済んだが、その光景は想像だけで鳥肌が立つ。
江雪は蹴倒された椅子を戻して座ると、いかにもリラックスした様子で背もたれに寄り掛かった。
「…… この場でやりあっても霊獣が勝てないのは分かったでしょうし、私も逃げる気はありません。黒曜宮で旅の疲れを癒されては?」
花鶏の目に好戦的な光が宿った。
「霊獣なら他にもいる。東雲だけなら不足というなら、彼らも連れてくるまでだ」
「およしなさい花鶏殿下。他の御兄弟が、この状況で、貴方を信じて私に霊獣を差し向けると思いますか?」
なお食い下がろうとする花鶏の腕を掴んで、蘇芳は「それもそうですね」と返した。
何か言いたげな花鶏に目で制して、外に引っ張っていく。
部屋を出る時、ふと足を止めた。
「江雪様、さっき目的は私だといいましたね。どういう意味です」
江雪は首を捻って顔だけをこちらに向けた。
「君ではなく、蘇芳だ。あれを戻して、世界をもとの形に戻したい。君のせいで、想定しなかった方向へ進んでいる世界をね」
風圧でよろめいた蘇芳の身体を、後ろから花鶏が抱き留める。
「あ、あとり」
「先生しっかりして!東雲ッ、拘束しろ」
東雲は大きな肢体をくねらせて江雪を包囲し、そのまま胴体で雁字搦めにしようとした。
その瞬間、天井からふわりと気配が下りてきたと思うと、それは人の姿を取り、風のように緑の裾をそよがせながら、東雲に向かって両手を突き出した。
東雲が背後の回廊に面した壁に叩きつけられ、そのまま壁を破壊して外へ転がり出る。
外にいた人間たちから悲鳴が上がった。
花鶏の腕の中で呆然と身を固くする。江雪の台詞がエンドレスで頭の中を巡っていた。
(今の、俺のこと、俺の秘密を知ってる……?そんなのあるわけない、あいつはゲームの登場人物で、そんなの知るわけ)
「先生」
耳元で呼ばれて、びくっと身体が跳ねた。そうだ花鶏……花鶏もさっきの言葉を聞いたはず。
「さっきのは違くて、江雪の世迷言です、私は蘇芳で、だから、信じてください花鶏、私は貴方を騙すつもりは」
「先生俺を見て!」
ぱしんと両頬を手で叩くように包まれた。ぎょっとして口を閉じた蘇芳を、花鶏の透きとおる黒目が覗き込んでくる。おろおろと目を逸らそうとする蘇芳を許さず、顔を固定してじっと視線を絡め取られてしまった。
「カデンルラで俺が言ったこと覚えてる? 俺には貴方だけ。天地神明に誓って俺は先生のもの。何があっても貴方を信じるよ……怖がらないで」
肺に溜まった重たい空気が抜けていく。
(……そうだ、大丈夫。花鶏にとっての蘇芳は俺なんだ。誰が何といおうと、花鶏が認めてくれたらそれでいい)
軽く頷いてみせると、花鶏は念のため確かめるように目を見てから、蘇芳の身体を解放した。
「……済んだかな。もう話しかけてもいいかい?」
花鶏が聞えよがしな舌打ちをした。
「殿下」
「今のは不可抗力」
主人の気持ちに呼応してか、東雲もイラつきながら室内に戻って激しく威嚇している。
威嚇の先にいるのは江雪、ではなく、その肩の上に浮遊している小柄な少女の姿をした……沙羅だ。
(沙羅の自我はもうないのかもしれないな)
薄っすら湛えた笑みも感情から生まれたものではなく仮面のようだ。
白い髪が空中に揺蕩う様子はまるで水の中を泳ぐ金魚のように美しい。
「なんだ、あれは……」
壁際に退避していた雨月が、腕の中に薔琵を庇いながら沙羅を見て呟く。
原作でははつりと協力して沙羅の魂を救った雨月だが、目の前にいるのは人外の<水蟲>となった彼女だ。
明らかに今、東雲から江雪を守っていた。
あり得ない。蟲は人間を守ったりなどしない。ただ一個の例外を除いては。
「主上を殺めたのか」
蘇芳の言葉に、ガタっと椅子にぶつかる音がした。
「蘇芳、どういうことだそれは。父上がなんだって? 江雪!説明してくれ」
蘇芳が口を開きかけた時、江雪がわざとらしい溜息を吐いた。
「雨月殿下……今更そんな。殿下が最後にお父上とお会いしたのはいつでしたか?」
「は……?何を」
「花鶏殿下に至っては、いや、これは私のせいでもありますね。ただの一度も会ったことがないのでしたか」
江雪はやれやれと首を横に振った。
「この十五年、誰がこの国の統治をしてきたと? わが父、江雲と、彼の教育した優秀な頭脳たちですよ。残念ながら私は父の御眼鏡には適わなくてね。彼の後継者は別に用意されているのですが、まあともかく」
江雪は世間話でもするように続けた。
「父の見込んだ後継者が次の為政者というわけです。たとえ誰が皇位に就こうが、実質、国を回す人間が別にいるのは、よくあることです。カデンルラの新しい国主は人格者で民からの支持もあついが、裏で国政を牛耳っているのは元奴隷の側近らしいと専らの噂ですしね」
雨月にとってカデンルラの国内事情など、耳を素通りしているようだった。
「後継者……?誰なんだ、それは。いや待て、父上の件が先だ。珀、来なさい。父上のもとへ行く」
「『これ』はお見逃しくださると?」
江雪が手で差す先にいるのは浮遊する沙羅だ。雨月は沙羅が視界に入った途端、顔を背けた。
「お前がこの事態を引き起こしたのは明白だ。追って沙汰を下す。それまで城内から出ることは許さん」
江雪は悠々と答えた。
「行く宛もありませんから、どうぞお気になさらず」
苛立ちと不安を纏って出て行こうとする雨月を押しとどめる。
「どきなさい、蘇芳」
「殿下、この場から立ち去るということは、江雪の反逆を見逃すも同然です。分かっておいでのはず。彼女を……沙羅を消滅させなければ事態が収拾しません。私に手立てが」
「その最後の希望が<秘跡の巫女>だったのだ。何度言わせる」
ぐいと押し返されてしまった。
沙汰を下すと言いながら、雨月は衛兵も呼んで江雪を拘束しようとも、珀を差し向けることもしない。
(冷静な判断ができてない、目の前に元凶があるのに、それをどうにかしないで父親の安否確認に行くなんて……!)
珀が困り顔で蘇芳を見た。東雲が弾き飛ばされた時も慌てて駆け寄っていたし、蘇芳というより東雲の味方なのだろう。
押された拍子の隙を突いて、雨月は出て行ってしまう。後から薔琵も急ぎ足で追いかけていく。すれ違いざまに目礼した彼女も、不自然なまでに沙羅を見ようとしなかった。
「古来、蟲というのは穢れや悪意の総称だ。君はよく知っているじゃないか、蘇芳。理性ではなく、本能が忌避して、無いものとして扱おうとする。東雲をぶつけてくる花鶏殿下が異常なのだ」
花鶏が進み出ると、東雲もまとわりつくようにして主人に従った。
「さっき言ったのは事実か」
花鶏が重い口調で問う。
「蘇芳が偽物ということですか?ええ、隣の本人に聞いてみたらいかがです」
「先生ではなく、父上のことだ。……殺したのか」
江雪が微笑んだ。
「雨月殿下より話が早くて助かります。といっても、ずっと寝たきり状態だったのです。当時、ご子息は皆まだ若く、後嗣の儀もまだだった。国内の混乱を避けるために、表向き小康状態であることにして、裏では政まつりごとのすべてを宰相である江雲が取り仕切っていました。死んだのはついさっきですが、まさに眠るように召されましたよ」
「嘘を吐け」
花鶏がハッと嘲笑した。
「沙羅が<睡蓮>に何をしたのか、この目で見てるんだ。そんな妄言、信じられるか」
無慈悲に心臓を奪い取り、食らったであろう沙羅の姿。花鶏に目隠しされたおかげで直視せずに済んだが、その光景は想像だけで鳥肌が立つ。
江雪は蹴倒された椅子を戻して座ると、いかにもリラックスした様子で背もたれに寄り掛かった。
「…… この場でやりあっても霊獣が勝てないのは分かったでしょうし、私も逃げる気はありません。黒曜宮で旅の疲れを癒されては?」
花鶏の目に好戦的な光が宿った。
「霊獣なら他にもいる。東雲だけなら不足というなら、彼らも連れてくるまでだ」
「およしなさい花鶏殿下。他の御兄弟が、この状況で、貴方を信じて私に霊獣を差し向けると思いますか?」
なお食い下がろうとする花鶏の腕を掴んで、蘇芳は「それもそうですね」と返した。
何か言いたげな花鶏に目で制して、外に引っ張っていく。
部屋を出る時、ふと足を止めた。
「江雪様、さっき目的は私だといいましたね。どういう意味です」
江雪は首を捻って顔だけをこちらに向けた。
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