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第3部(終章)
ホラー的演出
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ぶはっと水面から顔を出し、必死に腕を振り回して遠ざかると、背中が岩肌にぶつかった。
(待て待て待てっ、ホラーは無理、俺の許容範囲にないからっ!)
げほげほと口から水を吐いて咽込み、岩壁に縋りついた。手の平をごつごつした壁に擦り付ける。纏わりつく髪の毛の感触がまだ生々しく残っている。ほんの一瞬、目を閉じた若い女の顔が、揺れる黒髪の中心に見えた気がして、背筋が震えた。
「花鶏っ、花鶏!どこだ!」
足がつかないほどの水深がある。
蘇芳は両手で水をかき混ぜるようにして浮かびながら叫ぶと、声がこだまとなって反響した。
花鶏は一緒に落ちたはずだ。必死に見回すと、地中に落ちたはずなのに、うっすらと明るい。ぼわっと音がして、青い焔が近くで燃え上がった。びくりとして見ると、岩壁にかかったいくつもの松明が青くゆらゆらと、空間を照らしている。
水中の中で月光が差し込んでいるように見えたのはこれだったらしい。
そこは空洞で、岸らしき乾いた地面と、蘇芳の浸かったため池の二つの区画があるほか、その向こうには枝分かれした細い通路が真っ黒い口を開けている。
「花鶏!」
声がぐわんと反響するばかりで、応えがない。急いで岸に上がろうとした時、後ろから突き出た腕に、裾を掴まれ、蘇芳は危うく溺れそうになった。ひゅっと心臓が凍りつく。
「うわぁっ」
「げほっ、あ、す、蘇芳どの!し、し、した」
ばしゃばしゃと水面を叩いてパニックに陥っている波瀬の襟首を、蘇芳は引っ掴んだ。
「落ち着け、暴れるな!岸まで泳げるか?泳げるな?無理でも泳げ!」
「え、ええっ!いやだから、この下にっ」
「死体だな、分かってる。何もしてこないから、早く岸に上がって花鶏達を探すぞ!」
波瀬の顔が引きつった。青い松明のせいではなく、顔面が蒼白だ。がちがちと歯を鳴らして、水面下に蘇芳の服を掴んで引っ張る。
「蘇芳殿……」
「なんだ!?」
「足に何かが当たってんだけど」
「……藻が絡まってるだけだ、行くぞ」
「掴まれてるんですよぅ」
情けない声を出した瞬間、波瀬の頭が水面に潜った。いや水中に引きずり込まれたのだ。
「波瀬!?……おい、嘘だろ」
断言する。これは原作にないシーンだし、そもそも『瀧華国寵姫譚』はホラージャンルではない。
蘇芳は天を仰いで唸った。気泡がぼこぼこと浮いてくる。今すぐ花鶏を探したい。しかし波瀬を見捨てることもできない。
(くそ、なるようになれ!)
上衣を脱いで放ると、勢いをつけて一気に潜水した。
蘇芳に潜水の経験はない。それでも覚悟を決めて足をばたつかせて波瀬を追いかける。幸い、波瀬は腕を前に突き出すように底へ沈んで……引きずり込まれていたから、何とかその手首を掴むと、ぐいっと上半身をそらして波瀬の身体を上に引っ張った。
波瀬の身体がわずかに軽くなる。暗い水中に、藻のような長い髪が見えた気がした。
「ぶはっ、す、蘇芳殿」
「このまま岸までいくぞ!」
顔を乱暴に拭って平泳ぎの要領で岸に向かう。波瀬の首根っこを摑まえたまま何とか岸へ辿り着くと、蘇芳は背後を振り返った。波瀬も横で仰向けのまま、息も絶え絶えになっている。
背後の大きな水溜まり……洞窟の中の池には、仄かに発光する薄紅色の睡蓮が緑の葉とともに浮かんでいた。
日光の差さない中、どうやって光合成を行っているのか、瑞々しい花弁は睡蓮の名の通り、ひっそり閉じられていた。
青白い松明の灯りと、内側から発光する花の群れ、揺らめく黒い波間……幻想的な光景だったが、如何せん、手に残る人毛の感触と水中で垣間見た<何か>が脳裏にこびりついている。
これがホラーゲームなら、蘇芳と波瀬はすったもんだの挙句水底に引きずり込まれる端役AとBだろう。
実際、波瀬はBを実演してくれたばかりだ。
「蘇芳殿っ、感謝します、俺、あんたに一生ついていきますよ」
泣きそうな声で、ぐったりした蘇芳を引き摺って水面から離しながら、波瀬が礼を言った。
ああ、と応えようとした蘇芳に、
「花鶏殿下とのあれやそれも、聞かなかったことにしとくんで、安心してください。俺、こう見えて口は堅い方なんで!」
仰向けにずるずる引き摺られながら、絶句した。
「あれ、気付いてませんでした?……途中から、花鶏殿下はたぶん俺が起きてるの気付いてましたよ」
蘇芳は両手で顔を覆った。
気付いていた?あの時、あの……花鶏と布団の中での、弊風を隔てたあれを。
「……鼾をかいてたじゃないか」
「途中から起きてましたよ、というかよく他人が傍で寝てるのにあんな、あ、いや、何でも」
悲壮感を漂わせた蘇芳の表情に気付いて、波瀬は口ごもった。蘇芳はずきずきする頭で、あらゆる感情を押し込めて冷静さを取り戻そうとした。百パーセント、自分たちが悪い。波瀬は全く悪くない。
「気を遣わせて申し訳ない」
「やめろって。そりゃ吃驚したけど、まあ……昔からあんた達のことを見てきたし、ある意味、納得しちまったよ。だって距離がなぁ」
近すぎるんだよなあ、とぼやく声に返す言葉もなかった。波瀬は言いにくそうに付け足した。
「だけど、あんまり殿下を虐めてやらない方が……最後の方なんて、ちょっと可哀想だったし」
(先に仕掛けてきたのは花鶏の方なのに!? まるで俺があの子を虐めたみたいじゃないか)
可愛がっていただけだ。憤懣やるかたなく、羞恥心も相まって蘇芳はむすっとした顔で沈黙した。
岸といっても、洞窟内部にあって水に侵されていない地面というだけだ。面積はそう広くない。
背後の蓮池、閉じてしまった天井、周りを囲む岩窟と青白い松明を見回し、波瀬はぶるっと震えた。
「蘇芳殿、ここって俺たちが落ちた場所ですか?地下ってこんなことになってるもんですかね、それにさっきの水の中にいたあれは」
「ここが探していた睡蓮の群生池だ。さっきのあれは……なんというか、元は人間で、今はこの場所の主の眷属と言ったところかな」
「……すいません、何が何やら」
「歩きながら話そう。花鶏、殿下たちを探さないと。一緒に落ちたはずなのに」
「まさか殿下も俺みたいに水中に引きずり込まれたんじゃ」
蘇芳は針を刺された様な痛みを感じながら、すぐに首を横に振った。
「いや、殿下には東雲もついている。それに私よりも後から落下するのを見た。水に落ちたなら分かるはずだ……他の二人は?」
周囲にそれらしき人影はない。末草とはつりは、地上に置き去りにされたのか。
「そういえば、末草殿が身分を騙っていたと言いましたね、ありゃどういうわけです?」
蘇芳は濡れそぼった衣をできるだけ脱いで身軽になると、長い髪を絞ってひとまとめにした。青い松明が照らすいくつか通路がどこへ通じているのか見当もつかず、残していた蟲札もぐっしょり濡れて字が滲み、使い物にならない。
(ガイドがいない鍾乳洞の探索なんて、自殺行為だ)
それでも、花鶏がこの中のどこかにいるなら、早く合流して見つけ出さなくては。
「末草と言うのは睡蓮の別称なんだ。だから最初から妙に気になってたところに、昏睡患者の中に本物のまとめ役がいたら、疑って当然だろう」
「睡蓮って……あの睡蓮?」
背後を指差す。優雅に揺蕩うひっそりとした眠りの華。
「違う……『月代恋月記』に出てくる花の精<睡蓮>だ。彼は殿下が思ってるような理想の恋人なんかじゃない。定期的に生贄を求める<蟲>の蛹だ。孵化したら天災級の<水蟲>になる。先見の占い師たちが予見した国難というのはこれなんだよ。昔、六つある里のうち、四つを生贄にして眠らせていたはずの<睡蓮>が、何かの理由で目を覚ました」
話についていけない波瀬を急かして、蘇芳は松明を手に取ると、一番端の通路を進む。しらみつぶしに行くしかない。
「その睡蓮が、この地下洞窟のどこかにいるはずだ。……最悪なのは、もし花鶏が先にそいつと鉢合わせでもしたら」
「ど、どうなるんです」
「そんなの知るわけないだろ!俺の知る原作にないんだから」
ひぇ、と波瀬が首を竦めた。神経質になっている蘇芳に色々聞きたいことがあるものの、怖くてできない。
(里の同行役を青葉に任せておけばよかった)
豪放磊落とした波瀬だが、それは賑やかで温かい健全な環境が好きというだけだ。摩訶不思議で訳の分からない状況に、ピリピリした上司と一緒に放り込まれると、途端に肝が小さくなってしまう。水中で足首を掴まれた感触が蘇り、ごくっと唾をのんだ。
(この人は怖くないのか……)
松明をかざしながら、ぶつぶつ呟き暗闇に突き進んでいく蘇芳の細い背中を呆然と見る。そこにある恐れは、花鶏の安否以外にないらしい。
蘇芳の優先順位一位は花鶏殿下だ。それなのに、さっき波瀬を見捨てず<あれ>のいる水の中に助けに来てくれた。
訊きたいことは山ほどあるが、もし花鶏に何かあったら、蘇芳は正気でいられないかもしれない。
波瀬は何とか気持ちを奮い立たせ、蘇芳の後を追った。
(待て待て待てっ、ホラーは無理、俺の許容範囲にないからっ!)
げほげほと口から水を吐いて咽込み、岩壁に縋りついた。手の平をごつごつした壁に擦り付ける。纏わりつく髪の毛の感触がまだ生々しく残っている。ほんの一瞬、目を閉じた若い女の顔が、揺れる黒髪の中心に見えた気がして、背筋が震えた。
「花鶏っ、花鶏!どこだ!」
足がつかないほどの水深がある。
蘇芳は両手で水をかき混ぜるようにして浮かびながら叫ぶと、声がこだまとなって反響した。
花鶏は一緒に落ちたはずだ。必死に見回すと、地中に落ちたはずなのに、うっすらと明るい。ぼわっと音がして、青い焔が近くで燃え上がった。びくりとして見ると、岩壁にかかったいくつもの松明が青くゆらゆらと、空間を照らしている。
水中の中で月光が差し込んでいるように見えたのはこれだったらしい。
そこは空洞で、岸らしき乾いた地面と、蘇芳の浸かったため池の二つの区画があるほか、その向こうには枝分かれした細い通路が真っ黒い口を開けている。
「花鶏!」
声がぐわんと反響するばかりで、応えがない。急いで岸に上がろうとした時、後ろから突き出た腕に、裾を掴まれ、蘇芳は危うく溺れそうになった。ひゅっと心臓が凍りつく。
「うわぁっ」
「げほっ、あ、す、蘇芳どの!し、し、した」
ばしゃばしゃと水面を叩いてパニックに陥っている波瀬の襟首を、蘇芳は引っ掴んだ。
「落ち着け、暴れるな!岸まで泳げるか?泳げるな?無理でも泳げ!」
「え、ええっ!いやだから、この下にっ」
「死体だな、分かってる。何もしてこないから、早く岸に上がって花鶏達を探すぞ!」
波瀬の顔が引きつった。青い松明のせいではなく、顔面が蒼白だ。がちがちと歯を鳴らして、水面下に蘇芳の服を掴んで引っ張る。
「蘇芳殿……」
「なんだ!?」
「足に何かが当たってんだけど」
「……藻が絡まってるだけだ、行くぞ」
「掴まれてるんですよぅ」
情けない声を出した瞬間、波瀬の頭が水面に潜った。いや水中に引きずり込まれたのだ。
「波瀬!?……おい、嘘だろ」
断言する。これは原作にないシーンだし、そもそも『瀧華国寵姫譚』はホラージャンルではない。
蘇芳は天を仰いで唸った。気泡がぼこぼこと浮いてくる。今すぐ花鶏を探したい。しかし波瀬を見捨てることもできない。
(くそ、なるようになれ!)
上衣を脱いで放ると、勢いをつけて一気に潜水した。
蘇芳に潜水の経験はない。それでも覚悟を決めて足をばたつかせて波瀬を追いかける。幸い、波瀬は腕を前に突き出すように底へ沈んで……引きずり込まれていたから、何とかその手首を掴むと、ぐいっと上半身をそらして波瀬の身体を上に引っ張った。
波瀬の身体がわずかに軽くなる。暗い水中に、藻のような長い髪が見えた気がした。
「ぶはっ、す、蘇芳殿」
「このまま岸までいくぞ!」
顔を乱暴に拭って平泳ぎの要領で岸に向かう。波瀬の首根っこを摑まえたまま何とか岸へ辿り着くと、蘇芳は背後を振り返った。波瀬も横で仰向けのまま、息も絶え絶えになっている。
背後の大きな水溜まり……洞窟の中の池には、仄かに発光する薄紅色の睡蓮が緑の葉とともに浮かんでいた。
日光の差さない中、どうやって光合成を行っているのか、瑞々しい花弁は睡蓮の名の通り、ひっそり閉じられていた。
青白い松明の灯りと、内側から発光する花の群れ、揺らめく黒い波間……幻想的な光景だったが、如何せん、手に残る人毛の感触と水中で垣間見た<何か>が脳裏にこびりついている。
これがホラーゲームなら、蘇芳と波瀬はすったもんだの挙句水底に引きずり込まれる端役AとBだろう。
実際、波瀬はBを実演してくれたばかりだ。
「蘇芳殿っ、感謝します、俺、あんたに一生ついていきますよ」
泣きそうな声で、ぐったりした蘇芳を引き摺って水面から離しながら、波瀬が礼を言った。
ああ、と応えようとした蘇芳に、
「花鶏殿下とのあれやそれも、聞かなかったことにしとくんで、安心してください。俺、こう見えて口は堅い方なんで!」
仰向けにずるずる引き摺られながら、絶句した。
「あれ、気付いてませんでした?……途中から、花鶏殿下はたぶん俺が起きてるの気付いてましたよ」
蘇芳は両手で顔を覆った。
気付いていた?あの時、あの……花鶏と布団の中での、弊風を隔てたあれを。
「……鼾をかいてたじゃないか」
「途中から起きてましたよ、というかよく他人が傍で寝てるのにあんな、あ、いや、何でも」
悲壮感を漂わせた蘇芳の表情に気付いて、波瀬は口ごもった。蘇芳はずきずきする頭で、あらゆる感情を押し込めて冷静さを取り戻そうとした。百パーセント、自分たちが悪い。波瀬は全く悪くない。
「気を遣わせて申し訳ない」
「やめろって。そりゃ吃驚したけど、まあ……昔からあんた達のことを見てきたし、ある意味、納得しちまったよ。だって距離がなぁ」
近すぎるんだよなあ、とぼやく声に返す言葉もなかった。波瀬は言いにくそうに付け足した。
「だけど、あんまり殿下を虐めてやらない方が……最後の方なんて、ちょっと可哀想だったし」
(先に仕掛けてきたのは花鶏の方なのに!? まるで俺があの子を虐めたみたいじゃないか)
可愛がっていただけだ。憤懣やるかたなく、羞恥心も相まって蘇芳はむすっとした顔で沈黙した。
岸といっても、洞窟内部にあって水に侵されていない地面というだけだ。面積はそう広くない。
背後の蓮池、閉じてしまった天井、周りを囲む岩窟と青白い松明を見回し、波瀬はぶるっと震えた。
「蘇芳殿、ここって俺たちが落ちた場所ですか?地下ってこんなことになってるもんですかね、それにさっきの水の中にいたあれは」
「ここが探していた睡蓮の群生池だ。さっきのあれは……なんというか、元は人間で、今はこの場所の主の眷属と言ったところかな」
「……すいません、何が何やら」
「歩きながら話そう。花鶏、殿下たちを探さないと。一緒に落ちたはずなのに」
「まさか殿下も俺みたいに水中に引きずり込まれたんじゃ」
蘇芳は針を刺された様な痛みを感じながら、すぐに首を横に振った。
「いや、殿下には東雲もついている。それに私よりも後から落下するのを見た。水に落ちたなら分かるはずだ……他の二人は?」
周囲にそれらしき人影はない。末草とはつりは、地上に置き去りにされたのか。
「そういえば、末草殿が身分を騙っていたと言いましたね、ありゃどういうわけです?」
蘇芳は濡れそぼった衣をできるだけ脱いで身軽になると、長い髪を絞ってひとまとめにした。青い松明が照らすいくつか通路がどこへ通じているのか見当もつかず、残していた蟲札もぐっしょり濡れて字が滲み、使い物にならない。
(ガイドがいない鍾乳洞の探索なんて、自殺行為だ)
それでも、花鶏がこの中のどこかにいるなら、早く合流して見つけ出さなくては。
「末草と言うのは睡蓮の別称なんだ。だから最初から妙に気になってたところに、昏睡患者の中に本物のまとめ役がいたら、疑って当然だろう」
「睡蓮って……あの睡蓮?」
背後を指差す。優雅に揺蕩うひっそりとした眠りの華。
「違う……『月代恋月記』に出てくる花の精<睡蓮>だ。彼は殿下が思ってるような理想の恋人なんかじゃない。定期的に生贄を求める<蟲>の蛹だ。孵化したら天災級の<水蟲>になる。先見の占い師たちが予見した国難というのはこれなんだよ。昔、六つある里のうち、四つを生贄にして眠らせていたはずの<睡蓮>が、何かの理由で目を覚ました」
話についていけない波瀬を急かして、蘇芳は松明を手に取ると、一番端の通路を進む。しらみつぶしに行くしかない。
「その睡蓮が、この地下洞窟のどこかにいるはずだ。……最悪なのは、もし花鶏が先にそいつと鉢合わせでもしたら」
「ど、どうなるんです」
「そんなの知るわけないだろ!俺の知る原作にないんだから」
ひぇ、と波瀬が首を竦めた。神経質になっている蘇芳に色々聞きたいことがあるものの、怖くてできない。
(里の同行役を青葉に任せておけばよかった)
豪放磊落とした波瀬だが、それは賑やかで温かい健全な環境が好きというだけだ。摩訶不思議で訳の分からない状況に、ピリピリした上司と一緒に放り込まれると、途端に肝が小さくなってしまう。水中で足首を掴まれた感触が蘇り、ごくっと唾をのんだ。
(この人は怖くないのか……)
松明をかざしながら、ぶつぶつ呟き暗闇に突き進んでいく蘇芳の細い背中を呆然と見る。そこにある恐れは、花鶏の安否以外にないらしい。
蘇芳の優先順位一位は花鶏殿下だ。それなのに、さっき波瀬を見捨てず<あれ>のいる水の中に助けに来てくれた。
訊きたいことは山ほどあるが、もし花鶏に何かあったら、蘇芳は正気でいられないかもしれない。
波瀬は何とか気持ちを奮い立たせ、蘇芳の後を追った。
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