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第一章・学園編
第五話
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「フェ、不死鳥⁉︎」
不死鳥と言えば、S級モンスターの中でも数少ない伝説級の存在の一体として認定されている。
そして呼び名は各地で異なっていて、モンスターのカテゴリーでは不死鳥とされている。
さらにモンスターのカテゴリーに入ってたり、精霊や聖獣、霊獣など色々なカテゴリーにも含まれていて、どのカテゴリーが適切なのか長年議論されているとか。
これらは色んな文献で調べたものだが、まさかこうして直で相見えるとは。
「あ、あの、何故不死鳥である貴方がここに?この辺りで目撃情報は今までなかったのに。」
この辺りに生息してるモンスターは、ランクが一番高くてもB級くらいしか目撃されていない。S級モンスターがいるとなると、直ぐにその情報が出てくるはずなのだが。
《…ふむ、まずはそこからか。余がここに住み始めたのはつい最近のことでな。余の分身である子を産むのに故郷に帰る余裕がなかったのだよ。》
「そ、そうですか。というより、不死鳥は卵を産むのですね。」
不死鳥は寿命を迎えると、自身の炎で消し炭になりそこから幼体として蘇ると聞いたことがある。
そのため、卵を産んで子孫繁栄をするとは考えにくいとされてきた。
《確かに余は幾らでも蘇ることができる。しかしながら不滅というわけではないため、こうして子孫を残すというのだ。》
なるほど、蘇るけど不滅ではない。
つまり不死鳥を倒す方法があるというのか。
言われてみれば、精霊に物理攻撃は無効化されるが魔法攻撃だと効果はあるし、死霊体も聖属性魔法で倒すことができる。
どうしたら不死鳥を倒せるのかが気になるところだが、ここは聞かないでおこう。
《さて、そろそろ話を戻すとしようか。まず其方の器のことなのだが。》
おっと、すっかり忘れてた。
僕から器としての才を見出したとかだっけ。
《先ほども言ったが、其方には余と契約するに値する器の可能性がある。其方のような者を遭逢するのは何年、いや何百年ぶりかのう。》
うーむ、正直話についていけてない。
とりあえず僕には不死鳥と契約できる可能性があるというのは分かった。
「あの、それで僕はどうすればいいのでしょうか。」
《うむ?まだ分からぬか。余がお主と契約するのだ。余と契約すれば、お主には余の加護を受け取ることが可能。お主にとっては悪い話ではないぞ。》
悪い話じゃないか…。
でもS級モンスターの加護って、一体どんななのだろうか。
知性を持つ高位のモンスターの中には自身の加護を与えることができるのがいると本で読んだことがあるが、詳しいことは分からない。
御伽噺に出てくる勇者や伝説となってる冒険者などには加護を受け取ってる者がいるのは知ってはいるが、まさか自分が加護を受け取るなんて、正直信じられない。
…でもなんか気になる。僕にだけ旨味があるというか、不死鳥にはこれといった旨味になるものが分からない。
「失礼ですが、話を聞く限り僕にだけ旨味があるのですけれど。なにか企んでませんか。」
もし向こうがなにか企んでて、後々自分が後悔するなんてことにはなりたくない。
後悔するくらいなら今のうちに徹底的に相手の企みを知るべきだろう。
「企み?そんなものはないぞ。お主には余の分身を助けてくれた恩があるのでな。」
恩?なんのことだ。
《お主がいなければ、余の分身は畜生どもに盗まれてた。お主がいてくれたからこそ余の分身は盗まれずに済んだ。だからこそお主には恩を返したいのだ。》
不死鳥が澄んでるような目でこちらを見ながら言ってくる。
見た限りなにか企んでるような目には見えない。
とりあえず、ここは信じることにしよう。これ以上疑ったところで仕方ないし。
「分かりました。それで、契約の方法はどのようにすれば?」
《うむ、それにはお主の血が必要となる。軽く指先を切り血を一滴出せばよい。》
そういうわけで僕は抜剣して、指を軽く切って血を滲ませる。正直こういうのは好きじゃない。
《うむ、それでは始めるとしようか。》
そう言って不死鳥は自分の翼部分から黄金色の血を滲ませ、その血を卵に塗りつけ、紋様のように描いていく。
「あの、何をしてるのですか?」
《お主が契約するのは余の分身。今の余はもう長くは生きられないのでな。そこで分身とお主を契約関係とする。》
ここにきて新しい情報が出た。そういうのは先に言ってほしい。
「あの、卵はいつ孵化するのですか。」
《お主と契約が完了した瞬間に孵化するようにした。その時の分身は余と比べて能力はちと低いが、強いことには変わらぬ。》
つまり幼体から最強だから問題ないぞ、ってことね。なんか少し不安になってきたのだが。
ここまで順調にいってるようだが、思えば伝説級の存在と契約できるなんて夢のようだ。
(でも契約したところで、僕本当に強くなれるのかな。)
僕は自分が木偶の坊であると思ってるし、実際そうでもある。
剣の腕も魔法の腕もどれも中途半端、そんな僕が本当に強くなれるのだろうか。
「あの…。」
《どうした?》
僕は自分の言いたいことを腹から出して言った。
「僕と契約して本当によろしいのでしょうか。僕よりも優れた人と契約すれば、きっと貴方にもいいことがたくさんあると思います。」
《……お主のことを業火を通じて見た。お主の過去のこともな。周りから欠陥やら器用貧乏だのと呼ばれてることも、お主自身がそれを認めてることもな。だがお主は余の分身を助けた。余はそんなお主に、ただ恩を返したいだけなのだ。》
不死鳥は優しく僕にそう言った。
ただ恩を返したい、か。不死鳥は自分なりに恩を返したいのか。
「…ありがとう、ございます。」
なんだか目頭が熱くなってきた。
久しぶりに優しくされた気がする。
《…懐かしいものだな。》
「ん、なんか言いましたか?」
《…それでは契約を始めるぞ。お主の血を紋様の中心に付けよ。》
なにか言ってた気がするが、まぁいいか。
僕は言われた通り、卵に描かれた紋様の中心に自身の血を塗り付ける。
すると指先から温かい感触が伝わってきて、それは段々と全身を駆け巡っていく。
卵と触れ合ってるところが光り輝き、数秒たって少しずつ光が弱まっていく。
光が完全になくなると、紋様もうっすらと消えていく。
《これで契約が完了した。ご苦労であったな。》
そう言われ、僕は卵から指を離す。
(これで契約完了か。なんだか前より身体が軽い気がするけど。)
それだけではない。頭もスッキリな感じがするし、前よりも力が入る感じがする。
言ってた通り、身体能力は強くはなってるようだ。
ピキピキ
不死鳥の卵にヒビが入り割れる音がする。この様子だともうすぐ孵るだろう。
パキャン
卵が割れると同時に、炎でできた身体の生き物が生まれる。
《うむ、どうやら孵ったようだな。》
卵から産まれた生き物だが、鳥の形をした炎にしか見えない。これって本当に生き物なのだろうか。
そう思ってると、僕の胸目掛けて突っ込んでくる。すると、生き物は僕の胸の中にスルリと入っていく。
「あれ、どこ行ったんだ。僕の身体の中?」
《暫くは契約を交わしたお主の身体の中に居続けるぞ。お主に害はないから安心しろ。》
いや、素直に安心しない。というよりいつ自分が燃えるか心配なんだが。
不死鳥と言えば、S級モンスターの中でも数少ない伝説級の存在の一体として認定されている。
そして呼び名は各地で異なっていて、モンスターのカテゴリーでは不死鳥とされている。
さらにモンスターのカテゴリーに入ってたり、精霊や聖獣、霊獣など色々なカテゴリーにも含まれていて、どのカテゴリーが適切なのか長年議論されているとか。
これらは色んな文献で調べたものだが、まさかこうして直で相見えるとは。
「あ、あの、何故不死鳥である貴方がここに?この辺りで目撃情報は今までなかったのに。」
この辺りに生息してるモンスターは、ランクが一番高くてもB級くらいしか目撃されていない。S級モンスターがいるとなると、直ぐにその情報が出てくるはずなのだが。
《…ふむ、まずはそこからか。余がここに住み始めたのはつい最近のことでな。余の分身である子を産むのに故郷に帰る余裕がなかったのだよ。》
「そ、そうですか。というより、不死鳥は卵を産むのですね。」
不死鳥は寿命を迎えると、自身の炎で消し炭になりそこから幼体として蘇ると聞いたことがある。
そのため、卵を産んで子孫繁栄をするとは考えにくいとされてきた。
《確かに余は幾らでも蘇ることができる。しかしながら不滅というわけではないため、こうして子孫を残すというのだ。》
なるほど、蘇るけど不滅ではない。
つまり不死鳥を倒す方法があるというのか。
言われてみれば、精霊に物理攻撃は無効化されるが魔法攻撃だと効果はあるし、死霊体も聖属性魔法で倒すことができる。
どうしたら不死鳥を倒せるのかが気になるところだが、ここは聞かないでおこう。
《さて、そろそろ話を戻すとしようか。まず其方の器のことなのだが。》
おっと、すっかり忘れてた。
僕から器としての才を見出したとかだっけ。
《先ほども言ったが、其方には余と契約するに値する器の可能性がある。其方のような者を遭逢するのは何年、いや何百年ぶりかのう。》
うーむ、正直話についていけてない。
とりあえず僕には不死鳥と契約できる可能性があるというのは分かった。
「あの、それで僕はどうすればいいのでしょうか。」
《うむ?まだ分からぬか。余がお主と契約するのだ。余と契約すれば、お主には余の加護を受け取ることが可能。お主にとっては悪い話ではないぞ。》
悪い話じゃないか…。
でもS級モンスターの加護って、一体どんななのだろうか。
知性を持つ高位のモンスターの中には自身の加護を与えることができるのがいると本で読んだことがあるが、詳しいことは分からない。
御伽噺に出てくる勇者や伝説となってる冒険者などには加護を受け取ってる者がいるのは知ってはいるが、まさか自分が加護を受け取るなんて、正直信じられない。
…でもなんか気になる。僕にだけ旨味があるというか、不死鳥にはこれといった旨味になるものが分からない。
「失礼ですが、話を聞く限り僕にだけ旨味があるのですけれど。なにか企んでませんか。」
もし向こうがなにか企んでて、後々自分が後悔するなんてことにはなりたくない。
後悔するくらいなら今のうちに徹底的に相手の企みを知るべきだろう。
「企み?そんなものはないぞ。お主には余の分身を助けてくれた恩があるのでな。」
恩?なんのことだ。
《お主がいなければ、余の分身は畜生どもに盗まれてた。お主がいてくれたからこそ余の分身は盗まれずに済んだ。だからこそお主には恩を返したいのだ。》
不死鳥が澄んでるような目でこちらを見ながら言ってくる。
見た限りなにか企んでるような目には見えない。
とりあえず、ここは信じることにしよう。これ以上疑ったところで仕方ないし。
「分かりました。それで、契約の方法はどのようにすれば?」
《うむ、それにはお主の血が必要となる。軽く指先を切り血を一滴出せばよい。》
そういうわけで僕は抜剣して、指を軽く切って血を滲ませる。正直こういうのは好きじゃない。
《うむ、それでは始めるとしようか。》
そう言って不死鳥は自分の翼部分から黄金色の血を滲ませ、その血を卵に塗りつけ、紋様のように描いていく。
「あの、何をしてるのですか?」
《お主が契約するのは余の分身。今の余はもう長くは生きられないのでな。そこで分身とお主を契約関係とする。》
ここにきて新しい情報が出た。そういうのは先に言ってほしい。
「あの、卵はいつ孵化するのですか。」
《お主と契約が完了した瞬間に孵化するようにした。その時の分身は余と比べて能力はちと低いが、強いことには変わらぬ。》
つまり幼体から最強だから問題ないぞ、ってことね。なんか少し不安になってきたのだが。
ここまで順調にいってるようだが、思えば伝説級の存在と契約できるなんて夢のようだ。
(でも契約したところで、僕本当に強くなれるのかな。)
僕は自分が木偶の坊であると思ってるし、実際そうでもある。
剣の腕も魔法の腕もどれも中途半端、そんな僕が本当に強くなれるのだろうか。
「あの…。」
《どうした?》
僕は自分の言いたいことを腹から出して言った。
「僕と契約して本当によろしいのでしょうか。僕よりも優れた人と契約すれば、きっと貴方にもいいことがたくさんあると思います。」
《……お主のことを業火を通じて見た。お主の過去のこともな。周りから欠陥やら器用貧乏だのと呼ばれてることも、お主自身がそれを認めてることもな。だがお主は余の分身を助けた。余はそんなお主に、ただ恩を返したいだけなのだ。》
不死鳥は優しく僕にそう言った。
ただ恩を返したい、か。不死鳥は自分なりに恩を返したいのか。
「…ありがとう、ございます。」
なんだか目頭が熱くなってきた。
久しぶりに優しくされた気がする。
《…懐かしいものだな。》
「ん、なんか言いましたか?」
《…それでは契約を始めるぞ。お主の血を紋様の中心に付けよ。》
なにか言ってた気がするが、まぁいいか。
僕は言われた通り、卵に描かれた紋様の中心に自身の血を塗り付ける。
すると指先から温かい感触が伝わってきて、それは段々と全身を駆け巡っていく。
卵と触れ合ってるところが光り輝き、数秒たって少しずつ光が弱まっていく。
光が完全になくなると、紋様もうっすらと消えていく。
《これで契約が完了した。ご苦労であったな。》
そう言われ、僕は卵から指を離す。
(これで契約完了か。なんだか前より身体が軽い気がするけど。)
それだけではない。頭もスッキリな感じがするし、前よりも力が入る感じがする。
言ってた通り、身体能力は強くはなってるようだ。
ピキピキ
不死鳥の卵にヒビが入り割れる音がする。この様子だともうすぐ孵るだろう。
パキャン
卵が割れると同時に、炎でできた身体の生き物が生まれる。
《うむ、どうやら孵ったようだな。》
卵から産まれた生き物だが、鳥の形をした炎にしか見えない。これって本当に生き物なのだろうか。
そう思ってると、僕の胸目掛けて突っ込んでくる。すると、生き物は僕の胸の中にスルリと入っていく。
「あれ、どこ行ったんだ。僕の身体の中?」
《暫くは契約を交わしたお主の身体の中に居続けるぞ。お主に害はないから安心しろ。》
いや、素直に安心しない。というよりいつ自分が燃えるか心配なんだが。
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