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第1章幸せな日々、そして・・・

光の精3(アルベルト視点)

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もちろん貴族の男女間でファーストネームを呼び合うのは婚約者か配偶者に対してだけなのは知ったうえで言っている。
彼女もそのことを分かっているのだろう。
そして僕が挨拶の時に名を名乗らなかったことから、家名で呼ぶ道は閉ざされていることも意識しているに違いない。
そう確信させるほど彼女は戸惑っている。
 「はい、ここではそう呼んでいただいて構いませんわ。
 ですが、ほかのところではお互いあらぬ疑いをかけられると困りますので家名でお呼びください。
 貴方のお名前も教えていただけませんか。」
逡巡した後、けん制するように彼女は告げた。
アストレイアと名乗った少女はなかなか賢いようだ。
でも、ここでこちらの手を見せるようなことはするつもりはない。
決定的な申し込みをして、すぐにでも婚約を結ぼう。
そう決意して、
 「僕はアルだよ。
 あらぬ疑いって婚約者と思われるってことかな?
 僕はそれでもかまわないけどね。
 それに敬語が外れていないよ。」
と攻めてみたが・・・。
 「ごめんなさい、アル様。
 でも王宮の温室に頻繁に出入りするような人が、簡単に婚約者を決めてはいけないわ。」
告白まがいのセリフを意に介すこともなく、断られた。
こんなにストレートに忠告じみた断り方をされたことがなく、頭を抱えたくなったがそんな姿を見せるわけにはいかない。
 「そうそう、そのほうが気楽でいいよ。
 婚約者の話は結構本気だったんだけどなあ。
 だれが妻になろうと変わらないから、ちょっとでも僕の僕の好みの子ならいいと思ってるし。
 そうは思わない?
 貴族なんてさ。」
感情を含めず、問い返す。
これは偽らざる本心だ。
僕の妻となる人にはそれなりの危険も覚悟してもらわなければいけないけれど、それ以上に良い暮らしができる。
どの貴族の娘を娶っても、政治勢力に影響がある点では思いあっていたとしても政略結婚には変わりない。
無用な争いを避けるため、王太子妃にはおとなしくしていてもらえればそれでよかった。
それに僕の地位を愛している少女たちと思いあうなどということはできるはずがないのだ。
 「そんなことないわ。
 政略結婚なら親の意向を聞くべきだし、恋愛をして結婚するなら飛び切り素敵な恋をすべきだもの。
 貴方が言っているのは価値あるものへの冒涜よ。」
だが、今まで淑女然と必要以上に感情を表さなかったアストレイアが、非難するようなきつい口調と瞳で訴えかけてくる内容に心を揺さぶられる思いがした。
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