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「あら、ジェフリーも王宮に用事があったの?」
  ノア様に正式な呼び出しを受け、お茶会に参加するため王宮の回廊を歩いていると、第3騎士団副騎士団長のジェフリーが向かいから歩み寄ってきたので声をかける。今日は確か彼も休暇を取っていたはずである。何か急用でもできたのだろうか。
「これはこれは団長。団長こそ珍しいですね、王宮に立ち寄るなんて。私は可愛い甥に呼び出されたんですよ。せっかく本来の休暇が取れると思ったのですが、お茶会を開くから参加してほしいとかで」
「そうだったのね。私も同じ用件で呼び出されているのよ。むしろ、私のためにあなたが呼び出されたといってもよいわね。せっかくのお休みに申し訳ないことをしたわ。それと、ここは王宮、あなたのことはフェルむーと公爵と呼んだほうが良いかしら。騎士団内では気にしていなかったけれど」
 彼の答えを聞き、ノア様が身内を招待するといっていた意味がわかった。確かに彼なら適任だろう。私が気兼ねすることがない人物であるだけでなく、王弟殿下でもあるのだから。35歳という適齢期でありながら、結婚もせず騎士団(それも近衛ではない)に所属し、与えられた領地の経営も完ぺきにこなす、変わり者ながら有能な公爵だと誉高い。ちなみに、堂々たる体躯と堀の深い顔立ちという彫像にしたいぐらいの美形である。私が騎士団長という立ち位置でなかったならば、会話をすることすらままならない身分であるにもかかわらず、気さくで特別扱いをされることを拒む彼の性質もあいまって今では友人と呼べるぐらい親しくしてもらっている。けれど、ここは王宮。誰が見ているかわからないのだ。一線を引くことが必要なのではと探りを入れる。勝手に他人行儀な態度を取ろうものなら、1週間は差し入れなしになるに決まっているから。甘いものの誘惑には勝てない。
「いやですね、ノアはそんなこと気にしませんよ。今日のは私的なお茶会でしょう。堅苦しい夜会でもないんだし、その必要はありません。それとも団長は最近はやりのケーキいらないんですか」
「わかったわ。でも、一応様子は見させてもらいますからね」
 やっぱりだ。危うく、ケーキを逃すところだった。
「って、そろそろ時間じゃないの。急いで西の庭園に向かいましょう」
 装飾を兼ねた壁の掛け時計に目をやるとすでに開始時刻の10分前を指している。ジェフリーを促し、指定された場所へと急いだ。
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