平民騎士団長は恋を知らない~~ 王太子が私にぞっこんなんてしんじられません~~

青蘭鈴花

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 「何が狙いですか」
 ノア様に身を寄せ、語気が荒くなるのもかまわずとっさに詰問していた。
 「特に狙いはないよ。敷いて挙げるな僕が君と舞踏会に参加したいというだけのことだ。でも、アンジュには良い話じゃない?誰よりも早く出世できるよ。そういうの、好きでしょ」
 不敵に微笑まれ数泊思考が働かなくなる。
 確かに、出世は魅力的だ。だからこそ、学園を首席で卒業することにこだわったし、実績になりそうなことはどんなに小さなことでも引き受けた。そのかいあって、異例の速さで騎士団長という役職を得ることができたのだ。
 だからと言って、なぜノア様のパートナーにならなければいけないのか。そもそも、王太子が婚約者を決めていない今、私がパートナーを努めるほど愚かなことはない。上級貴族の令嬢たちに目の敵にされるに決まっている。それならば、騎士服姿でそっと会場に紛れ込んで、あちらこちらでささやかれる噂話を収集したほうがよほど出世の役に立つ。これは、断る以外、選択肢はないだろう。
 「いま、断ろうと思ったよね。全く、アンジュは思い通りにならない。ソニア嬢なんて頼んでもいない熱烈なラブレターを毎日送りつけてくるっていうのに。何が嫌なの?ただ、にこにこ笑って挨拶に来る貴族と離すだけなのに。将来国を預かるなら、経験しておいて損はないと思うよ。そのあとの問題は、僕のほうでかたずけておくし。だから、そう返事を急がないで、受け取れるものは受け取っておいてよ、ね?」
 優しい声でどんどん逃げ道をふさいでいく。私だって、断ることが不敬なことは百も承知だ。けれど、私がなりたいのは甘い蜜を吸うだけの騎士団幹部ではない。実力を認められた、国の誇りと言われるような騎士。その目標と舞踏会への参加がどうしても、つながらなかった。
 けれど、ノア様はなんといったか。国を預かる、出世・・・。今までの発言から一つずつピースを拾い上げ、考えてみる。
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