ルミナリアはあまえんぼ

赤井茄子

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不埒なる侵入者※

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「うふふふ、ふふふふ…………ふふ……」

 メーベルト家のとある一室、夫婦の部屋……いや、正確に言えばいつもレオパルドが眠りにつく寝室にて。天蓋を降ろした豪奢なベッドの上で、白っぽい餅がもぞもぞと蠢いていた。
 ………言わずもがな、レオパルドのシャツに埋もれたルミナリアである。

「はぁ、はぁ、レオパルド様の匂い……く、くふふっ、あぁ!最高ですわぁ!!」

 先程までレオパルドが着用していた白いシャツを鼻に押し当て、思い切り息を吸う。胸いっぱいに愛しい男の香りを堪能しながら、ルミナリアは薄紫色の瞳を恍惚に潤ませた。
 普段は、例のコレクション溢れる秘密の部屋でしか出来ない禁断の行為。しかし、今晩レオパルドは会合とやらに出かけており、帰還は朝方と聞いている。まさに、ルミナリアにとっては絶好の機会であった。

「ん、ちゅ………ふふ、うふふ。私の唾液が染み付いた衣服を着ていただけるという事実だけで五回は果ててしまいそう……!ふぁ、ぁんっ……」

 シャツに唇を押し付け、紅い舌で時折舐め上げながら、白い指先を濡れてグショグショになった自身の秘部へ這わせていく。
 いつもレオパルドが夜に過ごす部屋の中、彼が眠る布団の上、彼のシャツを嗅ぎながら自慰に耽る……なんと甘美なひと時だろうか!秘密の部屋で致すものとはまた違う、どこまでもレオパルドの香りに包まれた至福の行為に、ルミナリアはより一層没頭していった。

「ぁっ………はぁあん……ぁ、あ、アッぁ……!」

 それ故、寝室の扉が開く気配に全く気づけなかった。
 黒い人影がゆっくり、ゆっくりと淫蕩に耽る彼女に近付いていく。しかし、匂いを嗅ぐことに没頭するルミナリアは気付かない。
 そして、ベッド脇に辿り着いた黒い人影が、ゆっくりと覆いかぶさり――――嬌声を上げる唇を、手のひらで塞いだ!

「ンッ!?んん、んーーーー!?」

 突然口を塞がれ、叫び声を上げたルミナリアの視界を何かが覆う。肌触りから、スカーフか何かのようだ。
 抵抗虚しく包まっていたシャツもネグリジェも全てはぎ取られ、ルミナリアは謎の人物にのし掛かられた。視界が塞がれているため詳しくは分からないが……音と肌触りから謎の人物が衣服を脱ぎ捨てた事は分かり、彼女は青ざめた。

 自分がレオパルド以外の男に、犯されようとしている!

「…………ッぅ………ソッ……ふぐ!!」

 腹心の部下を呼ぼうとした瞬間、口の中に指を突き入れられルミナリアの叫びは不発に終わった。そのまま舌を摘まれ、擦られ、桜色の唇から唾液がダラダラと零れ落ちていく。

「ん、んんっ……ん、んーー!!」

 不躾な指がするすると体を撫でたあと、濡れそぼった場所に指を一本突き入れた。骨ばった長い指に柔らかい中をかき回され、ぐちゅ、ぐちゅ、という粘着質な水音が響き渡る。身動き出来ぬまま、ルミナリアは謎の男に口と秘部を延々と責め立てられていった。時折、熱い舌がまろい乳房や首筋を這い回り、それがさらに彼女を苛んでいく。

「ぁ、ふぁ………ッあぁん、あ、もう……わたくし………ッ」
「ク、はは。何処の誰とも知れん男に組み敷かれて達するのだな。貴様はやはり淫婦だ……!」
「ぁ、ああっ激しッ………あぁ、あぁああッ!!!!」

 黒い視界が白く弾け、ルミナリアは涎を垂らしながらビクビクと体を痙攣させた。その白い肢体を押さえつけ、謎の男はゆっくりと胸から臍、腿の付け根へ舌を這わせ…………先程まで男の指を呑み込んでいた蜜壺に分厚い舌を一気に突き入れた。

「あぁあぁーーーーーー…………!!」
「……ふ、舌が這入っただけで絶頂したのか?この、淫乱…!」
「やぁ、らって………らって、そんなの……はじめて、なんらものぉ……!」
「貴様の信望者共や、種馬の夫は……はぁ、…こういうことを、しなかったのか?」
「れ、れおぱるど、さま……は……ぁん!わたくし、が…………おきらい、ですもの……ッそんなとこ、舐めたりしな………きゃあぁ!あ!そんな……吸ったら、ぁああん!」
「………………………ッ」

 ヂュゥウゥッと思い切り蜜口に吸いつかれ、ルミナリアは足を跳ね上げながら再び絶頂した。そんな彼女に構うことなく、不埒なる侵入者はさらに舌を小刻みに揺らして尖り始めた緋豆を突き回す。普段とは違う、強すぎる快感にルミナリアの思考はどんどんと蕩けていった。


「はぁ、はぁ………ぁあ……こんな、すごい……」
「まだまだこれからだ………そら、もっとイイ思いをさせてやる。その淫らな足を開け……!」
「あっ……そんな………ぁあ!」

 蜜口に、暑く猛った欲望を押し付けられたのを感じ、ルミナリアは恍惚にぶるりと身を震わせた。しかし―――――次の瞬間、その美しい顔から表情が抜け落ちた。

「種馬になれる男なら誰だって……良かったんだろう?だから、私などに足を開くんだ。なぁ、ルミナリ…………ッぐふ!?」


 ルミナリアは男の腹を思い切り蹴りつけ、素早く体を反転させ男の腹に乗り上げる。………形勢逆転、不埒なる侵入者はあっという間に女王の支配下に落ちてしまった。突然の展開に狼狽える男の気配を感じながら、麗しき女王はゆっくりと背筋を伸ばし―――――愚かな彼を目隠し越しに睥睨した。

「如何な私と言えど、それは聞き捨てなりませんわ」

 窓から差し込む月明かりが、彼女の白く透けるような素肌を照らし出す。男は一瞬己の立場も忘れ、呆けた顔でルミナリアを見上げた。それほどまでに………彼女は今、神々しい気品に満ち満ちていた。
 豊かな胸を反らすと、数多の男女を虜にしてきた魅惑の声が部屋中に響き渡る。

「私に『種をつける』男は、この世で最も栄誉ある者ですの。そのことをどうやら理解していらっしゃらないようですわね。種馬教育が足りなかったかしら?……ねぇ、レオパルド様」 
「…………………ッな!?いつから気付いて」
「あら、私も随分と見縊られたものですわね。勿論、『最初から』ですとも」

 桜色の唇がゆったりと弧を描く。目隠しをしたままでも分かる、彼女は今、実に悠然と微笑みレオパルドを見下ろしていた。
 一方、形勢逆転された不埒なる侵入者……もとい、夫のレオパルドは奥歯を噛み締めながらルミナリアを睨み上げた。その刃物のような視線を感じ、彼女の背筋がゾクゾクと歓喜に打ち震える。

「うふ、ふふふ!たまには目隠しというのも良い物ですわね。視覚が覆われた分、肌で………レオパルド様の熱い視線を、沢山感じますわぁ……!!!」
「くっ………この、………魔性め!!」

 震える腰を掴み、レオパルドは反り勃った肉棒をルミナリアの膣奥へ一気に押し込んだ。そして、力任せにガツガツと腰を打ち付ける。愛液と先走りの混ざった淫らな液体が飛び散り、レオパルドの濃い繁みや太腿を濡らしていった。

「ふぁ、あぁああん!?そんな、いきなりッ……奥までぇ………れお、レオパルドさまぁ!!」
「………えらそうな、事を言う……割に!腰が震えているぞ……あ、ぁあぐ…ッルミ、ナリアァ!!」

 上下に激しく揺さぶられ、白銀の髪が月明かりの中で舞い踊る。先程まで威厳に満ち溢れていた女王の頬は薔薇色に染まり、桜色の唇からは恍惚とした嬌声が絶え間なく零れ落ちていった。
 麗しの魔女ルミナリアは目隠し越しに薄紫色の瞳を潤ませ、自身の下で夢中になって腰を打ち付ける愛しい種馬をうっとりと見下ろす。

「うふ、ふふふ……ぁあん!レオパルド様、貴方はわたくしの……わたくし、だけの!種馬ですわ。私に種をつけて良いのは貴方だけ、私が産むのは貴方の子だけ……はぁん!レオ…パルド様………ぁあ、あ、あ!!」
「……………………ッなら、孕め!孕むといい!下賤な私に種付けされて……ッ、種馬の子を孕んでしまえ!!ルミナリア……!!」
「ぁあ、………ぁあぁああ!!!はい!はい!!孕みますわ、喜んで孕みますわ!!ぁあん!レオパルド様の種ならいくらでも………!はぁ、嬉しいッ………レオパルドさまぁぁぁあーーー!!!」

 白い背中が一際大きく震えた瞬間、ルミナリアの奥へレオパルドの精が放たれた。歓喜とともにそれを一滴残さず呑みこみながら、魔女はうっとりと微笑んで……逞しい胸板にふわりと倒れ込んだ。そして、桜色の唇を夫のそれに押し付ける。

「ん、ふふ……最高でしたわ。………また明晩、たくさん注いで下さいまし……『旦那様』」

 どさくさ紛れに三度目のキスが成功し、ルミナリアは夢見心地でそっとその場を離れ――――られなかった。………レオパルドが、腰を掴んだまま再び下から突き上げ始めたのだ。

「へ?……ぁ、あん!あぁン!!」

 部屋中に肉同士がぶつかる音が響き、ルミナリアは再び嵐のような快感に放り出され目を白黒させた。目隠しは外していなかったので、それがレオパルドにバレることはなかったが。

「ど、どうし……て……はぁ、あんっ……レオパルドさま、どうして……!?」
「私は、下賤の種馬だからな……こんな、たった一度で………足りるものか!!この夜は、私が……ッ、満足するまで、続けるぞ。ルミナリア!」
「あ、そんなぁ……こんなご褒美、私、あぁん!ど、どうにかなって、しまいますぅ……ぁあ、ふぁぁああん!レオパルドさまぁぁあ!!」


 こうして、開き直った種馬レオパルドによる情熱的な『種付け行為』は明け方まで続き、ルミナリアは色んな意味でお腹いっぱいにされてしまったのであった。



◆◇◆


 朝日を感じ、ルミナリアが重い瞼を上げると………そこには、愛しのレオパルドの寝顔があった。

「うふ、ふふふ。素敵な夢ですこと……」

 夢だと思い込んだ彼女が、そっとレオパルドの首筋に擦り寄る。すると、逞しい腕でゆっくりと抱き込まれ、ルミナリアは内心で歓喜の叫び声を上げた。触れ合う肌の質感から体温まで、現実感が凄まじい。妄想力に自信のあるルミナリアでも驚いた程だ。

「レオパルド様……」

 寝息をたてる唇にそっと口づけると、より一層強く抱き込まれる。苦しいくらいだが、あまえんぼのルミナリアにはこれくらいが丁度いい。

「大好きですわ、レオパルド様ぁ……!」

 心地よい体温と凄まじい幸福感に包まれて、ルミナリアは再び微睡みの海へと沈んでいった。





 次に目を覚ますと、レオパルドは既にいなかった。しかし、布団に残った温もりから確かにレオパルドがそこにいたことを感じ、ルミナリアは即座に布団に顔面を押し付け匂いを嗅ぎまくった。
 そんな主人の姿に全く動じない男装の侍女ソルは、着替えや湯浴みの準備を整えつつ嬉しそうだ。

「やりましたね、ルミナリア様!ついに旦那様と一晩同じベッドで眠ったんですよ!!これは両思いまでかなり近いのでは?」

 そう、今まではレオパルドが嫌がるだろうからと、ルミナリアは頑なに朝まで同衾することを拒んでいたのだ。マゾなれどそこは割と繊細なマゾナリヤなのである。
 気色満面なソルと対象的に、ルミナリアは………絶望的な表情で布団を抱え、ほとほとと涙を流し始めた。

「うっ、う………ソル!どうしましょう!?こんな、こんなことって………!!!」
「え、どうなさったんですかお嬢様。何か昨晩酷いことでも……」
「いいえ、昨晩は最高の夜でしたわ!!そうではないの!これ…………ッ」

 先程までレオパルドが眠っていたであろう布団をかき抱き、ルミナリアは悲痛な声で叫んだ。


「折角のレオパルド様の匂いが!!私の匂いと混ざってぼやけているの!!!ソル!何とかなさい!!!」

「はぁぁあぁあ無茶言わんでくださいーーーー!!!」

 爽やかな朝の一時。
 哀れなソルの至極真っ当な叫びが、今日も平和なメーベルトの屋敷に響き渡ったのであった。
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