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不可思議な報復

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 湯上がりのポルカは、脱衣所の真ん中で頭を抱えていた。その片手には薄くてヒラついた服、そしてもう片方には紐のついた布が乗っかっている。

「何で……?」

 ひとっ風呂浴びる前、この着替え籠の中には寝間着と下着(もちろんどちらも普通の)をキチンと置いた筈だった。
 それが、何故にスケッスケのネグリジェと紐のパンツに入れ替わってしまったのか。

 しかも、問題はそれだけではない。

「何で……耳と尻尾まで……!?」

 丁寧に畳んで置かれたネグリジェの上には、本日ポルカが買ってきたウサギの耳カチューシャと付け尻尾が、これまた丁寧に配置されていた。
 明らかに、『風呂あがりにはコレを着てコレを着けるべし』という意思表示メッセージだった。

 誰の意思表示メッセージか。
 それは勿論、この家の主妖精たるジルのだ。

『テメェ、マジで今晩覚えてろよぉお……!!』

 恨めしげに睨んでいた姿が、ポルカの頭の中を過る。
 つまり、このスケスケネグリジェと紐パンツを着てウサギ耳尻尾を付けることが、今回ジルの考えた“報復”ということだろうか?
 ポルカは一先ず、試しにネグリジェを指先で摘んで広げてみた。

 ものの見事にスッケスケである。

 白く滑らかな薄布は、よく見れば艶のある糸で繊細な刺繍が施されていた。
 蔓と葉っぱが絡んだ意匠で、丁度乳首のあたりに花の文様が咲くようになっている……!

 ――これを着て寝たら、速攻腹を冷やして風邪を引きそうだよ。

 因みに紐のパンツは、真ん中に切れ目が入っていて隠せるものも隠せない。
 ポルカに言わせればこれは『穴あきパンツ』と同じくらい使い道のない代物だ。
 けれどもたぶん、スケスケのネグリジェと同じく態とこういう形にしてあるのだろう。

 恐ろしく繊細な衣装である。
 そして、とんでもなく助平である。

「……アタシみたいなのが着たら絶対ちんちくりんになりそうだねぇ……」

 例えばこの衣装を、胸がボンッ! と出て腰がキュッ! と締まった婀娜っぽいお姉ちゃんが着たならば――見た男を片っ端から悩殺するような色気が炸裂したに違いない。

 一方、ポルカは断崖絶壁。
 全体的に見ても貧相で、仮にコレを着たところで……そもそも出るものがない。
 音を付けるならば、ストーン!だ。

 目に毒である。
 絶対着ないほうがいいに決まっている!

 しかし今はコレ以外に着るものがない。
 それにジルの“報復”を拒否出来るような立場でもない。

 ――せいぜい笑われて来よう。ウン、一回見て大笑いすりゃ、ジルも納得するに違いないヨ!……死ぬほど恥ずかしいけど!!

 物凄く重いため息をつき、ポルカはのろのろと……本当にのろのろと、そのスケスケのネグリジェに袖を通した。
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