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昔々のポルカ話①※

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 こうして押し倒されアレコレされていると、思い出すのはジルが地上にいた頃の……結婚式を挙げたその日の夜。
 田舎らしい簡素な寝台の上で膝を突き合わせ、ポルカはなるべく明るい声でこう言った。


「遠慮とかしなくてイイよ。体は丈夫だし、それに……初めてじゃないからさ」

 偽装とはいえ結婚した男女が、初夜に何もしないのは不自然極まりない。「偽装なのだから、無理はしなくても」と言ったのだが、そう説得されればポルカは頷く他なかった。嘘をついているという後ろめたさはあったものの、やはり……『好いた男に抱いてもらえる』という甘美な誘惑には、敵わなかったのだ。
 だからせめて、顔に似合わず生真面目なジルが変に気負わないよう、ポルカはキチンと話をしたのだった。

 ――ポルカは、生娘ではない。

 ポルカがもっと若かった頃、近くの山に大きめの魔獣が現れた。それを狩るために、一時期荒くれ者の傭兵や冒険者が村に雪崩れこんだことがあったのだ。
 そして当時、大衆食堂兼酒屋で給仕をしていたポルカが、娼婦に間違われて二階に引きずり込まれる事件が起こった。
 血相を変えた女将さんと大将が警らを連れて駆けつけた時には……まぁ、言うに憚られる状態だったという。 因みに下手人の男は警らに捕まり、しっかりと罰を受けたらしいが、お陰様でポルカにはきずがついてしまった。

「と、いう訳だから、一応開通済みなんだよ。あっでも病気とかそういうのは無かったから、安心しとくれ!」
「……」

 なるべく軽ーく、なるべくふわーっとぼかしつつ語ったつもりだったのだが……ジルは何やら物凄い形相で黙り込んでしまった。ポルカは心配になって、彼の顔を覗きこんでみる。
 朝焼け色の綺麗な瞳から伝わる感情は、苦悩と――怒りだった。それを見た瞬間、ポルカは『やっぱりなぁ』と思ったのだ。

「……やっぱりこんなんじゃあ、抱く気にはならないだろ?」

 口調と顔に似合わず、生真面目でどこか潔癖な所もあるこの妖精のことだ。この話を聞いて、ポルカを抱く気が萎んでも仕方がない。

 それでも別に、ポルカは構わなかった。
 だって、もう婚姻は済ませてしまったのだから。

 あの綺麗なものが見つかるまで、ポルカの嘘がバレるまで、もう彼は、『ポルカの夫』だ。それだけで、天にも昇るほど……ポルカは充分に幸せを感じている。

「あー、ほら、最初に言ったろ?無理してするこたぁないヨ!それにジルだって、今日は珍しく色んな人間と話して疲れたろ?アタシは自分の部屋に帰って休むから、アンタもゆっくり休ん」
「――五月蝿え黙れ」

 ぐるんと視界が回って、気付けばポルカは妖精の下に組み敷かれていた。そしてあれよあれよと言う内に裸にされて……まぁ、そこからはお察しの通りである。
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