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第1章
55 ラオスとイラザの暴走 *R18かも
しおりを挟む「「─シャウ」」
ラオスとイラザに抱きついて泣いていたシャウは、今までに聞いたことないほどの甘く響く2人の声に顔を上げる。
涙でぼやけた視界に2人の顔が近づいてくるのが分かって、自然と目を閉じていた。
すると、両側からシャウの頬に伝う涙を吸い取られた。そしてその後ゆっくりと顔中にキスをされる。
シャウは涙が止まると、2人のキスがくすぐったくて、クスクスと笑ってしまった。
2人が側にいてくれる、それだけで心が温かくて幸せを感じていた。
目を開けると、2人が真剣な顔をして指勝負をしていた。それはいつも先攻後攻を決めるためにする指勝負なのだけれど、それをなぜ今しているのだろうか。疑問に思って見ていると、決着がついたのかラオスが勝ったようだ。
ラオスはとても嬉しそうにしているし、イラザは滅茶苦茶不機嫌になっていた。
「何してるの?」
「ああ、シャウ、キスしよっか?」
「えっ」
シャウの疑問に答えてくれたのは満面の笑みを浮かべたラオスだったけれど、質問して返ってきた言葉に驚愕した。
「好きな人とならキスしてもいいんだろう?」
「……」
「俺はシャウが好き。シャウも俺が好き」
改めてそう言われて、シャウは恥ずかしさから顔が紅くなっていくのを感じた。
紅くなった顔をラオスは目線が合うように手を添えて上げると、ラオスの目が甘く熱を帯びた。
その目に見つめられてシャウは目が離せなくなった。
「だから、キスをしよう」
その言葉と共にラオスの顔が近づいてきた。
シャウは近づいてきたラオスにゆっくりと目を閉じることで応えた。心臓がすごい勢いでドクドクと動いていた。
緊張して身体を固くしていると、唇にふにっと優しく触れる温かくて柔らかい感触がした。
それは前にキスしたラオスの唇の感触だった。
一度触れた唇はその後何度もシャウの唇を啄む。
優しく触れられているだけなのに、息が苦しくなってきた。
「っふ…」
息を吸うために口を開けると、するりと熱いものが入ってきた。
「あっ…」
驚いたシャウの声を飲み込むように、ラオスの舌がシャウの舌を絡めとった。シャウの舌を擽るように嘗めて、そしてシャウの口の中を味わうかのようにゆっくりと動く。
そのもどかしさにじわじわと追い詰められるように、シャウの息は上がっていく。
舌を吸われ、熱い舌がシャウの上顎を擽り、また舌を絡めとられる。
「……ん、…ふっ」
徐々にゾクゾクしたものを感じ始めていると、片手に何かが触れたような気がした。
それはとても熱くて濡れていて、指を這うようにして動いていた。
指と指の間をその熱い何かが這うと、ゾクリとしたものを感じた。
2カ所からゾクリとしたものを感じ始めて、シャウは頭がぼうっとしてきた。
「……あっ……、はぁ……」
自分の口から漏れた声が甘く掠れていて、ぼやけた頭の片隅でびっくりしていた。
そんなときに、突然ラオスがシャウから離れた。
不思議に思って目を開けると、イラザがシャウの目の前に現れた。
不機嫌そうな顔のままシャウの唇を軽く拭うと、シャウをじいっと見つめてきた。
ぼうっとした頭が少しして落ち着いてくると、イラザが拗ねているのだということが分かってきた。
確かにラオスとキスしていたときはイラザのことを忘れていた。というか、そんなことを考えられなくなっていただけなのだけど。
それでも仲間外れにしてしまったと思ったシャウは自分からイラザにキスをしていた。
チュッと軽く触れるだけのキスをして、イラザを見ると顔を紅くしていた。
それが可愛いなあと思っていたら、イラザに噛みつくようにキスをされていた。
「ん…………ぁ…………」
始めから激しく舌を絡めとられて、口の中をイラザの舌が執拗に動き回る。
舌を甘噛みされ、吸いつかれ、嘗め回され、シャウは息が上がっていった。
何度も何度も舌を絡め、上顎を擽られ、舌をなぞるように嘗め上げられる。
その度にまたゾクリとしたものが背中に走った。
手も先ほどとは逆の手に同じ熱くて濡れているものが這って、そこからもゾクリとしたものを感じた。
「……はっ………んぁ……」
どんどん強くなるゾクゾクに身体が火照りだした。
そして、シャウの獣耳を擽る手が増え、そこからもなぜかゾクゾクしたものが走った。
「…あ……んぅ…」
ゾクリとしたものに声が勝手に出てしまう。
イラザとのキスの合間にもれる声は鼻に抜けてとても甘えているような声になっていた。
そんな声に恥ずかしさを感じるほどシャウの意識ははっきりとしてなくて、与えられる感覚に翻弄されていた。
「シャウ」
キスの合間に囁かれるイラザの声に、腰がゾクリとした。
「……あ………はぁ…」
「シャウ」
「あっ……ん…」
続けて耳元で囁かれたラオスの声に、腰から力が抜けた。
力が抜けたシャウを片手で支えたイラザはゆっくりと椅子にシャウを寝かせた。
その間もイラザはキスをしたまま、シャウと一緒に横になる。
すると、シャウの胸の辺りで動く何かを感じた。
始めは気のせいかと思っていたら、徐々にしっかりと意志を持って動くものがどちらかの手だと分かった。しかも両方の胸の上をまったく違う動きをする手に、流石にシャウの意識が戻ってきた。
意識がしっかりしてくると、胸で動き回る手の感覚をより意識してしまい、今まで感じたことのないしびれるようなものを感じて恐くなった。
「………んん……」
散々ラオスとイラザに翻弄されたシャウは、うまく身体に力を入れることが出来なかった。
このままだとどうなってしまうのか、不安になってきたシャウはどうしたらいいか分からなくて涙が浮かんできた。
「何してんだ。お前ら」
そこに地を這うような恐ろしい声が響いた。
その声にラオスとイラザがビクリと震え、シャウから離れた。
声からも誰が来たか分かっていたけれど、涙で滲んだ視線の先にひと睨みで気絶してしまうほどの怒りを浮かべた父さんが立っていた。
父さんはシャウを見て、ラオスとイラザを見て、より眦を吊り上げた。
「俺はシャウと話し合うためにシャウの側に居ろと言ったよな? なんでシャウが泣いているんだ?」
父さんの言葉に、身体を縮こませていた2人はシャウを振り返って、驚き慌てふためいた。
「シャウ? 泣いてるのか?」
「シャウ、どうして泣いているのですか? どこか痛いのですか?」
「…………」
シャウは先ほどの恐さを思い出して2人を睨みつけた。
それを見た父さんは、ラオスとイラザを見ると睨めつけた。
「シャウはお前達を受け入れなかったということか?」
「受け入れて貰えた」
「ちゃんとシャウから許可を貰えました」
ラオスとイラザが父さんに必死に訴えていた。
「その割にはシャウが睨みつけているようだが?」
「「シャウ」」
同時に縋るようにシャウを見つめてきたことに、少しだけ絆される。
仕方なく、でも、2人と共に生きると決めたことだけは自分の口から父さんに伝えなきゃと思って父さんに向き直る。
「父さん、僕はラオスとイラザが好きなんだ。だから2人と一緒になってもいい?」
父さんに確認すると大きく息を吐きだしてから、シャウに向かってやっと笑ってくれた。
「ああ、シャウが決めたのなら俺とミイシアは応援すると決めているからな」
「ありがとう、父さん」
やっと動けるようになったシャウは父さんに抱きついた。
優しく頭を撫でてくれた父さんは、もう一度優しくシャウに問いかけた。
「それでどうして泣いていたんだ?」
「……それは」
さっきまでの自分を冷静に考えられるようになったシャウは、あまりにも恥ずかしいことをしていたことに気づいて顔が紅くなり言葉を続けられなかった。
そのシャウの様子を見ていた父さんは何かを感じ取ったのか、またラオスとイラザを睨みつけた。
「シャウを恐がらせたんだな」
父さんの言葉を受けて、2人はショックを受けたように愕然としていた。
「お前達にはまだ早いんだよ。婚前交渉は許さん」
「「ガルアさん」」
ラオスとイラザが悲痛な叫びを上げる。
「シャウも簡単に身体を許すなよ」
「っ! 父さんのバカー!」
あんまりな父さんの言葉に、シャウも叫んでいた。
ラオスとイラザに好きと伝えられて、2人と共に居られると幸せを感じていたはずなのに、なんでこんなことになってしまったのだろうと、これからを思うとちょっと不安になったシャウだった。
それでも、2人がずっと側にいてくれる。
それだけは確かな未来にシャウは自然と笑っていた。
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