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第1章 番外編 ラオス*イラザ目線side
2 消毒 イラザside *R18かも
しおりを挟む「イラザ?」
腕の中にいるシャウが体を震わせ不安げに見上げてくる。
ラオスの突然の行動に混乱や恐怖を感じているであろうシャウを安心させるために、イラザは一先ず自分の怒りの感情を隠し、優しく笑いかける。
「シャウ? 大丈夫ですか?」
イラザの言葉にホッとしたのかシャウの体の震えが治まった。
「大丈夫。怪我なんてしてないよ、見てたでしょ?」
ニコッと無邪気に笑うシャウに聞きたかったことはそれではないのにと、ため息がもれる。
「怪我の心配をしたわけではないのですが、まあいいです」
シャウが気にしていないのであれば良かった。
そう、それについては良かった……良かったけれど!!
シャウのファーストキスがラオスに奪われただなんて、許せることではなかった。
フツフツと先程の怒りがぶり返してきて、あの時、すぐに止められなかった自分が不甲斐なくて、様々な感情がイラザの中をごちゃごちゃに掻き回していた。
ふわっと、突然、シャウがイラザの獣耳を撫でてきた。
シャウの手が獣耳に触れた瞬間、ピクンと大きく反応してしまったことが恥ずかしくて悟られる前に俺は目を閉じた。
シャウはイラザの反応に一度躊躇した後、ゆっくりゆっくり優しく撫で始めた。
(気持ちいい……)
苛立っていた気持ちが落ち着いていくのが分かった。
昔から俺が苛ついていたりすると、いつの間にかシャウが寄ってきて今と同じように獣耳を撫でてくれた。
撫でられると、不思議と気持ちが落ち着いて、穏やかな気持ちになる。
撫でられてイラザの気持ちが落ち着いてくると、シャウが撫でるのを止めてしまった。
手が離れていったのが残念で目を開けると、シャウが覗き込んでいて、その微笑んでいる姿が可愛くて笑いかえしていた。
「では、帰りましょうか」
「うん」
自然な流れでシャウと手を繋ぎ歩き出そうとしたとき、シャウが転がっているラオスを見ているのに気がついた。
「ラオ…」
「シャウ」
ラオスに呼びかける声に被せるように声をかけ、俺は繫いだ手を引き、シャウを腕の中に引き寄せた。
そして、顎を持ち上げシャウと目線を合わせる。
「あんな奴は放っておけばいいんです」
自分の声がまた怒りで低くなっていることに気付きながらシャウに言うと、シャウは目を見開いて頷く。
今、シャウがラオスのことを気にするのが気にいらない。
とにかく、すぐにでもシャウとラオスを引き離したくて、繫いだ手を強引に引いて家に向かって歩き出した。
黙々と歩き続け、木々が覆い繁る獣道を抜けると、小川が見えてきた。
川が見えたことで、シャウの顔を拭きたくなった。ラオスが舐めた所を綺麗に拭き取りたい。
ぼんやりしているシャウを川の近くにある丸太に座らせる。
俺は持っていた布を川の水で濡らし絞ると、シャウの隣に座った。
そして、濡らした布でそっとシャウの顔を拭いていく。
「ごめん、汚れてた?」
「少しだけね、ああ、目も閉じて」
「ん」
いつものお節介という名の世話焼きだと思ったのか、素直にイラザが拭くのを受け入れる。
それが今は嬉しくて、優しく丁寧に顔を拭いていく。
シャウの唇を拭こうと、唇を見た瞬間、先程のラオスとの光景が蘇ってきた。
力の限りゴシゴシと拭きたくなる衝動を抑え、そっと濡れた布で唇を拭っていく。
綺麗にしたシャウの濡れた小さな唇を見ていると、この柔らかそうな唇にラオスがキスしたのかと思うと、怒りと嫉妬で胸が苦しくなる。
シャウの中のラオスとの記憶を消し去ってしまいたい。
どうすれば消せるのか…? どうすればなくせるのか……考えを巡らしていると、上書きすればいいじゃないかと思いついた。
キスをキスで上書きする。
その考えが過ぎったときから、どうしようもなくシャウに触れたくて触れたくて堪らなくなっていく。……ただ、俺がシャウに触れてもいい理由を探していただけなのかも知れないが。
これは必然だと思った。
イラザはシャウを驚かせないようにそっと触れるかどうかくらいの柔らかさで、まぶたの上、頬、鼻先へと唇で順番に触れてゆき、最後にゆっくり唇にキスする。
そして優しく優しくシャウの唇を擽るように舌で嘗める。
「ん?」
不思議そうにしてはいるが嫌がる様子がないので、イラザは少しだけ大胆にお願いしてみることにした。
「シャウ、口開けて」
言われたとおり口を開けたシャウの素直な反応が嬉しくて、優しく唇を重ね、そっと舌を差し入れる。
そして、驚かせないように上顎や、歯列、口の中のいろいろな所を嘗めつつ、奥にあるシャウの舌を見つけて自分の舌を絡みつける。
シャウの唾液はとても甘く蜜のように感じる。
舌も柔らかくて熱くてとても美味しい。
何処もかしこもシャウは美味しくて美味しくて、夢中になって味わう。
「んっ…」
シャウから苦しげな息が漏れ聞こえた。
息継ぎ出来ていなかったことに気付き、唇を離すと、耳元で優しく教えてあげることにした。
「鼻で息すればいいんですよ」
自分の声が低く掠れていて、息継ぎのために喘ぐシャウのその可愛い姿に自然と口元が緩む。
小さく息を吸ったシャウの唇をまた塞ぎ舌を絡めとっていく。
「……ん……あ…」
時折聞こえてくるシャウの声に、もっともっと溺れて欲しくて、口づけを深くしていく。
何故今まで触れたいと思わなかったのだろう。
いや、触れてはいけないのだと思い込んでいたのかもしれない。
そう思い込まされていたのかも……しれなかった。
腕の中にいるシャウが、全てを俺に預けてくれているシャウが可愛くて可愛くてしょうがなかった。
「かわいい」
可愛い可愛いシャウ。俺の気持ちが届いた?
少し意識を飛ばしているみたいだけれど、ちゃんと覚えているんだよ?
大切な俺の、俺の…お姫様。
もう我慢なんて出来ないよ?
だってシャウがラオスに触れてしまった。
だったら俺にだって触れる権利はある。もう誰にも譲る気はない。
触れていいと許しが出たのだからシャウには責任をとって受け入れてもらわないといけないよね?
「も…う…」
まだまだ味わい足りなかったけれど、シャウが言うなら、今日はもう許してあげる。
シャウの濡れた唇を嘗めとり、最後にちゅっとキスをする。
「もう目を開けていいよ」
「うん」
俺の言葉を最後まで守って閉じていた瞳を開けたシャウの、濡れた瞳にまた口づけしてしまいそうになるのを耐えながら微笑んだ。
ちゃんとシャウに理由を説明しておかないとね? シャウが混乱してしまうのは可哀想だから。
「消毒」
「…消毒?」
「そう、消毒したんだよ。これでばい菌は除去できた」
ぼんやりしているシャウはこじつけだと分かりそうな言葉も素直に信じてしまう。
「ありがとう」
ニコッと笑ってお礼を言われると、イラザはちょっと罪悪感を感じ、シャウから目線を逸らしてしまったけれど、
「どういたしまして」
俺以外の悪い奴からは必ず守ってあげるから許してねと心の中で思いつつ、柔らかく笑ってシャウの頭を撫でた。
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