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21 ダウールside
しおりを挟むあーあ。
久しぶり会えたのに、フィーリアがよそよそしい。
セチュンが俺のところにフィーリアのことを伝えに来たのは午前の執務の最中だった。珍しい訪問に驚いたが、セチュンの表情があまりにも心配そうな顔をしていて、これはなんとしても会いに行かなければならないと思った。
今まではアルタイが片づける先から仕事を山積みにするから、ろくにフィーリアに会いに行けなかった。
しかも、フィーリアとの約束というか取引があるから、他の妃候補者と食事をとらなければならない。その時間を捻出するために、結局フィーリアに会いに行く時間がとれなかった。
ああ、でも、フィーリアに名前を呼ばれたのは嬉しかった。
ついニヤけそうになって、すぐ表情を引き締めたのだが、情けない顔をフィーリアに見られただろうか。
はあー。
それにしても、俺はなぜこんなに仕事に追われているのだろうか。
即位したばかりで、仕事が山積みな事くらい予想はしていたが、それにしてもフィーリアとの時間がとれないのでは本末転倒ではないだろうか。
この状況になった原因を思い出し、ため息が出る。
フィーリアのために用意した環境で、楽しく過ごしてもらって、そして違う関係になる。
兄妹ではなく、恋人同士として。
そのために苦労して王にまでなったというのに、ムーリャン嬢が暴走して、仕事が滞り、俺はフィーリアに会えず、フィーリアは体調を崩すし、ウルミス嬢には泣かれるしで、散々な状況だった。
……ムーリャン嬢か。
カレルタ豪主と会って聞いたムーリャン嬢の人物像と、実際にやって来たムーリャン嬢は真逆といってもおかしくない印象だった。
いくら演技だといっても、あれはやり過ぎだ。
ムーリャン嬢に絡まれている文官や警備兵からの不満が溢れているとも聞いているし、ウルミス嬢に対する攻撃もやり過ぎだった。
そもそも文官や警備兵へ接触する必要なんてないはずなのに、……しかもどうやら見目のいい男ばかりを誘惑していると聞く。
まあ、俺との会食も、食事することよりも誘惑を目的としているかのように服はギリギリ隠れているくらいのものばかりで、すぐに俺の膝の上に乗ろうとするわ、身体を寄せ付けてくるわ、寝室に誘ってくるわで、それを躱すのに精神がガリガリと削られていっていた。
改めて考えると……ほんとに俺、何をやっているのだろうか。
俺はフィーリアと会いたいのに、結局会っているのは他の妃候補者ばかり。
フィーリアに男として意識してもらうところから始める予定だったのに、そんな時間もありはしない。
本当に予定外のことばかり。
……とにかく、時間がないのがいけないんだ。
フィーリアと会う時間を作るためにも、ムーリャン嬢のことをはっきりさせなくてはな。
それにはまずカレルタ豪主と会わなくてはならないのだが、連絡がつかない。さすがに返答が遅すぎるので、直接人を差し向けようと思っていた。
……はあー。
それにしてもあんなに落ち込んだフィーリアは初めて見た。いつも華が咲くように笑うフィーリアが、暗く儚く、触れば消えてしまうような笑顔で何か思いつめているのが分かったのに。
俺には結局何も言ってくれなかった。
そんなに俺は頼りにならないのだろうか……。
「陛下? どうされましたか?」
突然立ち止まった俺に、ハウリャンは訝しげに声をかけてきた。
「ああ、すまん。何でもない。アルタイが待っているなら、早く戻らないとな」
アルタイは俺に容赦がない。
協力関係にあると思っていたんだが、俺の邪魔をわざとしてるのではと思えるくらい仕事をふってくるのだ。
アルタイと会っているくらい、フィーリアと会えるのはいつになるのだろうか。
ため息しか出てこなかった。
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