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一章

一、天界

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「よし!今日のは超大作だぜ。」
 
 このところ、やつはゲームに夢中なのだ。
マイ……何て言ったかな。画面の中で小さなブロックを積み上げては、理想の家だのなんだのとはしゃいでいる。
十年程前、人間界に降りた時に手に入れたらしい、このパソコンとかいう物体と一日中向かい合っているのだから、私や仲間達があきれるのも無理はなかった。

「ゼウスはまたあれか」
仕事を終えたポセイドンは溜息ためいきをつきながら一瞥いちべつした。

「見回りはちゃんとしてるんだろうな?」

「あぁ」

えらく気の抜けた返事が返ってきたが、それも、もう慣れた。

「海は異常なかったぜ。もうすぐ定例会議ていれいかいぎの時間だ。本来ゼウスが来ないと始められないんだからな。いい加減、自分のやるべき事をちゃんとやったらどうなんだ」

「あぁ」
 
 四角い物体から目を離そうとしない姿に腹が立ったが、奴は俺の兄というだけではなく、この世界の創造神そうぞうしんなのだ。かげで反発する声はあっても、面と向かって文句を言える者は少ない。

 以前はもっとこの世界の事を考えていたし、人間界の様子にも気を配って善悪ぜんあくのバランスが崩れないように監視かんししていたのに、最近はこのさまで、もっぱら仮想の世界をつくるばかりだ。
 
あのゲームを手に入れてから、すっかり変わってしまった。

 立ち上がる様子のないゼウスを尻目しりめに、ポセイドンは大きな翼をバサバサと鳴らし上空へと羽ばたいていった。



  
        
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