7 / 25
現実世界①
しおりを挟む
ぱっとりつが目を開くと、そこはいつもの図書室だった。
ぺたんとりつは床に座り込む。今のはなんだったのか。
りつが座り込んだ床には、時の館に置いてきてしまったはずの青い本が転がっていた。
りつは大きく深呼吸をする。
慣れ親しんだ図書室の髪の匂い。
時計を確認すると、魔法使いの女性が言っていたやうに、ちょうど15分時間が巻き戻っていて、針は17時45分を指している。
「帰らなきゃ」
りつは慌てて本を拾い、閲覧席に戻った。本の間に楽譜が挟まっていることを確認し、ランドセルを背負う。
ここまで古く、誰も触れていない本だ。貸出申請をしなくても1日ぐらいならバレない。
りつは本を抱え、図書室を後にした。
6月になり日中は暖かくなってきたどころか、暑いぐらいだか、夕方になれば心地よい風が吹く。
りつは興奮した脳みそを冷やしてくれるそよ風に感謝しつつ、真っ赤に染った夕空を眺めた。
今日の放課後に起こった全てが夢のようだった。たぶん、居眠りをして夢を見たんだと言われればそうかもしれないとも思う。でも、夢にしてはやけにリアルで、未だにりつの指先には鍵盤を叩いた感覚が残っている。
「明日も会えるかな」
魔法使いの女性とリートに。
大嫌いだったはずの放課後がほんの少しだけ楽しみになる。
いつもは重い家までの足取りも、今日ばかりは軽やかだった。
翌朝、カーテンの隙間から差し込む朝日でりつは目を覚ます。
半分眠ったままの脳を覚醒させるために勢いよくカーテンを開くと、気持ちのいい快晴が広がっていた。
「よし」
時計を見るといつもよりもだいぶ早い。目覚ましが鳴るのはまだ先だ。
りつはクローゼットの奥に閉まっていたダンボールを確認する。中に詰まっているのは大量の楽譜と教本。
パンパンに紙が詰まったダンボールは酷く重たく、りつは汗だくになりながら何とか引っ張り出した。
箱を開けて1番上に入っていたピアノの教本といくつかの楽譜を取り出す。
その中には昨日時の館で演奏したドビュッシーの子供の領分もある。
音符が見えなくなるくらい真っ黒に書き込まれた楽譜たち。
ランドセルを持ってきて中を確認すると、空いている隙間に入りそうなのは2冊ほど。教本と1番好きだった1曲を選び、りつはランドセルに仕舞った。
ぺたんとりつは床に座り込む。今のはなんだったのか。
りつが座り込んだ床には、時の館に置いてきてしまったはずの青い本が転がっていた。
りつは大きく深呼吸をする。
慣れ親しんだ図書室の髪の匂い。
時計を確認すると、魔法使いの女性が言っていたやうに、ちょうど15分時間が巻き戻っていて、針は17時45分を指している。
「帰らなきゃ」
りつは慌てて本を拾い、閲覧席に戻った。本の間に楽譜が挟まっていることを確認し、ランドセルを背負う。
ここまで古く、誰も触れていない本だ。貸出申請をしなくても1日ぐらいならバレない。
りつは本を抱え、図書室を後にした。
6月になり日中は暖かくなってきたどころか、暑いぐらいだか、夕方になれば心地よい風が吹く。
りつは興奮した脳みそを冷やしてくれるそよ風に感謝しつつ、真っ赤に染った夕空を眺めた。
今日の放課後に起こった全てが夢のようだった。たぶん、居眠りをして夢を見たんだと言われればそうかもしれないとも思う。でも、夢にしてはやけにリアルで、未だにりつの指先には鍵盤を叩いた感覚が残っている。
「明日も会えるかな」
魔法使いの女性とリートに。
大嫌いだったはずの放課後がほんの少しだけ楽しみになる。
いつもは重い家までの足取りも、今日ばかりは軽やかだった。
翌朝、カーテンの隙間から差し込む朝日でりつは目を覚ます。
半分眠ったままの脳を覚醒させるために勢いよくカーテンを開くと、気持ちのいい快晴が広がっていた。
「よし」
時計を見るといつもよりもだいぶ早い。目覚ましが鳴るのはまだ先だ。
りつはクローゼットの奥に閉まっていたダンボールを確認する。中に詰まっているのは大量の楽譜と教本。
パンパンに紙が詰まったダンボールは酷く重たく、りつは汗だくになりながら何とか引っ張り出した。
箱を開けて1番上に入っていたピアノの教本といくつかの楽譜を取り出す。
その中には昨日時の館で演奏したドビュッシーの子供の領分もある。
音符が見えなくなるくらい真っ黒に書き込まれた楽譜たち。
ランドセルを持ってきて中を確認すると、空いている隙間に入りそうなのは2冊ほど。教本と1番好きだった1曲を選び、りつはランドセルに仕舞った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
【完結】会いたいあなたはどこにもいない
野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。
そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。
これは足りない罪を償えという意味なのか。
私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。
それでも償いのために生きている。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる