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放課後の図書室②
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カチカチと時計は秒針を刻む。
元々薄暗かった図書室が日が落ちてきてより一層暗くなる。
手元が見えにくくなってきたところで、少女はページをめくる手を止めた。
時計を確認すると、時刻は5時半。あと30分で関先生が鍵を締めに来る時間になる。
それまで残っていると、いくら黙認しているからとはいえ、怒られてしまう。
少女は読んでいたページに栞を挟むと、立ち上がり本棚へと戻しに行く。誰も借りないような本はこうして栞を挟んでいてもバレないし、怒られない。
分厚い本は持ち帰るのも大変なので、図書室で読むことにしている。
元の位置に本を戻し、少女は帰ろうとする。
本に熱中していてすっかり頭の片隅に追いやっていた、光る本のことが頭に浮かんだ。
確認すると、先程光っていた本は何事もなかったかのように、普通の本と変わらずに並んでいる。
夢でも見ていたのだろうか。不思議に思い、少女はその本を手に取った。
濃い青色の表紙をしたその本は、とても分厚く、少女の手には重たかった。
埃を被っている表紙を指で拭うと、音符や音楽記号で飾られた美しい装丁が顔を出した。
古びているが、きっと新品ならものすごく美しい本だったのだろう。
少女はパラパラとページをめくる。
書かれているのは難しそうな音楽に関する物語のようだった。
知らない漢字だらけで、とてもじゃないが少女がすぐに読めるようなものでは無い。
なぜこんな本が小学校の図書室にあるのか。
そんなことを考えつつ、ページをめくっていた手が、あるページで止まった。
そのページには1枚の手書きの楽譜が挟まっていた。
楽譜のタイトルは『The sound of time~時の音~』。
少女は楽譜に目を通す。少し前までピアノを習っていたこともあり、音楽は少女の得意分野だ。
誰もいないのをいいことに、少女は最初の1音をハミングした。
音程を確認し、少女はそのままメロディーを続ける。
柔らかく、しっとりとして、どこか物悲しいメロディーが図書室に響き渡る。
歌いながら少女は思う。こうやって歌うのはいつぶりだろうと。
ピアノを辞めてから、音楽の授業以外で音楽に触れる機会は無くなった。音楽の授業ではいつも目立たないように小さな声で歌っているから、こうやって思う存分声を響かせられるのは本当に久しぶりだ。
音楽って心地よい。
最後の1音まで丁寧に響かせると辺りから急に靄が漂い始めた。
「え、火事?」
その靄はひんやりと少女を包む。
驚いて声を上げる暇もなく、視界は真っ白になり、少女の意識は途切れた。
元々薄暗かった図書室が日が落ちてきてより一層暗くなる。
手元が見えにくくなってきたところで、少女はページをめくる手を止めた。
時計を確認すると、時刻は5時半。あと30分で関先生が鍵を締めに来る時間になる。
それまで残っていると、いくら黙認しているからとはいえ、怒られてしまう。
少女は読んでいたページに栞を挟むと、立ち上がり本棚へと戻しに行く。誰も借りないような本はこうして栞を挟んでいてもバレないし、怒られない。
分厚い本は持ち帰るのも大変なので、図書室で読むことにしている。
元の位置に本を戻し、少女は帰ろうとする。
本に熱中していてすっかり頭の片隅に追いやっていた、光る本のことが頭に浮かんだ。
確認すると、先程光っていた本は何事もなかったかのように、普通の本と変わらずに並んでいる。
夢でも見ていたのだろうか。不思議に思い、少女はその本を手に取った。
濃い青色の表紙をしたその本は、とても分厚く、少女の手には重たかった。
埃を被っている表紙を指で拭うと、音符や音楽記号で飾られた美しい装丁が顔を出した。
古びているが、きっと新品ならものすごく美しい本だったのだろう。
少女はパラパラとページをめくる。
書かれているのは難しそうな音楽に関する物語のようだった。
知らない漢字だらけで、とてもじゃないが少女がすぐに読めるようなものでは無い。
なぜこんな本が小学校の図書室にあるのか。
そんなことを考えつつ、ページをめくっていた手が、あるページで止まった。
そのページには1枚の手書きの楽譜が挟まっていた。
楽譜のタイトルは『The sound of time~時の音~』。
少女は楽譜に目を通す。少し前までピアノを習っていたこともあり、音楽は少女の得意分野だ。
誰もいないのをいいことに、少女は最初の1音をハミングした。
音程を確認し、少女はそのままメロディーを続ける。
柔らかく、しっとりとして、どこか物悲しいメロディーが図書室に響き渡る。
歌いながら少女は思う。こうやって歌うのはいつぶりだろうと。
ピアノを辞めてから、音楽の授業以外で音楽に触れる機会は無くなった。音楽の授業ではいつも目立たないように小さな声で歌っているから、こうやって思う存分声を響かせられるのは本当に久しぶりだ。
音楽って心地よい。
最後の1音まで丁寧に響かせると辺りから急に靄が漂い始めた。
「え、火事?」
その靄はひんやりと少女を包む。
驚いて声を上げる暇もなく、視界は真っ白になり、少女の意識は途切れた。
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