1 / 25
放課後の図書室①
しおりを挟む
「それでは、これで帰りの会を終わります。起立、気をつけ、礼、さようなら」
「「さようなら」」
教室に子供たちの声が響き渡る。挨拶が終わると一気に騒がしくなる。
それぞれが仲のいい友達の席に集まり、「一緒に帰ろ~」と、声をかけ合う。
中には放課後の遊びの予定手を確認し合う子や、クラブ活動に向かう子もいる。
カラフルなランドセルが段々と教室を出ていく中、ぽつんと窓際の席に座ったままの少女がいた。
おかっぱ頭に伏し目がちな瞳が印象的な、所謂地味めな女の子。
高学年になってお洒落にもより一層の気を使い、毎日この服が可愛い、このコーディネートがオシャレ、とお喋りをし、色とりどりの可愛い服装をしているクラスメイトとは異なり、少女は膝丈のグレーのスカートに真っ黒のシャツを身につけている。
完全モノクロのコーディネートに机の上に乗せられたピンク色のランドセルが浮いている。
おもむろに少女は立ち上がると、ランドセルを肩に引っ掛け、教室を出た。
下校する生徒たちの流れに逆らい、下駄箱とは逆方向に向かう。
校舎最上階の一番端、図書室と書かれた看板がぶら下がるドアを少女は静かに引いた。
脇目も振らず、向かうのは閲覧スペースの1番奥。
本棚の陰に隠れたこの場所は少女の定位置だった。
放課後のこの時間、少女は誰もいない図書室で、本を読みながら、ただひたすらに時が過ぎるのを待つ。
図書室担当の先生は忙しいのと、少女以外に放課後の利用者がいないことから、鍵閉めの時しか姿を現さない。
本当は生徒だけにしてはいけないはずだが、少女だけは黙認されている。
席につき、少女はふぅーと息を吐く。
今日も学校が終わってしまった。
クラスメイト達が放課後を心待ちにするのとは正反対に、少女は毎日学校が終わらなければいいのにと思う。
学校がある間は、やることがある。授業を受けていればあっという間に時は過ぎる。
でも、放課後や土日はそうはいかない。
時間が過ぎるのが遅い。
図書室担当の関先生は少女の3年生の時の担任だった。だから少女の事情も知った上で教員なしでの図書室の使用を黙認してくれているのだ。
少女はしばらく席でぼーっとした後、立ち上がり、本を取りに行った。
2年ほどかけて、少女は図書室の本をほとんど読み切った。
有名どころはもちろん、知る人ぞ知る名作もすっかり読破してしまった。
新刊は入ってくる度にチェックしているし、なんなら棚に並べているのも少女だ。
残っているのは、古くて誰も手を出さない、何年も読まれていないような本だけだ。
図書室の端、ほぼ書庫のようになっている一画。誰も寄り付かない棚へ少女は足を運ぶ。
1番上の段の1番左の本を手に取る。
タイトルはかすれて読めない。パラパラと中をめくるとファンタジーの児童書のようだ。シリーズ物のようでその横に何冊も同じような背表紙の本が並んでいる。
席に戻ろうとした時、少女の視界に光る何かが映った。
他の教員たちにバレないように電気をつけていないため、図書室は薄暗く、光るものなど置いていない。
見間違いかと思いつつ、少女が振り向くと光っていたのは1番下の段の端に置かれた分厚くて古い本だった。
本には触れずにしゃがみこんで少女はじっと光を見つめる。
どうやら光っているのは本そのものではなく、1ページだけのようだった。
少しそのまま本を見つめてから、少女は立ち上がる。
面倒くさそうなことには関わらないのが1番。下手に巻き込まれてしまったら困る。
平穏に静かに生きる。それが少女のモットーだった。
「「さようなら」」
教室に子供たちの声が響き渡る。挨拶が終わると一気に騒がしくなる。
それぞれが仲のいい友達の席に集まり、「一緒に帰ろ~」と、声をかけ合う。
中には放課後の遊びの予定手を確認し合う子や、クラブ活動に向かう子もいる。
カラフルなランドセルが段々と教室を出ていく中、ぽつんと窓際の席に座ったままの少女がいた。
おかっぱ頭に伏し目がちな瞳が印象的な、所謂地味めな女の子。
高学年になってお洒落にもより一層の気を使い、毎日この服が可愛い、このコーディネートがオシャレ、とお喋りをし、色とりどりの可愛い服装をしているクラスメイトとは異なり、少女は膝丈のグレーのスカートに真っ黒のシャツを身につけている。
完全モノクロのコーディネートに机の上に乗せられたピンク色のランドセルが浮いている。
おもむろに少女は立ち上がると、ランドセルを肩に引っ掛け、教室を出た。
下校する生徒たちの流れに逆らい、下駄箱とは逆方向に向かう。
校舎最上階の一番端、図書室と書かれた看板がぶら下がるドアを少女は静かに引いた。
脇目も振らず、向かうのは閲覧スペースの1番奥。
本棚の陰に隠れたこの場所は少女の定位置だった。
放課後のこの時間、少女は誰もいない図書室で、本を読みながら、ただひたすらに時が過ぎるのを待つ。
図書室担当の先生は忙しいのと、少女以外に放課後の利用者がいないことから、鍵閉めの時しか姿を現さない。
本当は生徒だけにしてはいけないはずだが、少女だけは黙認されている。
席につき、少女はふぅーと息を吐く。
今日も学校が終わってしまった。
クラスメイト達が放課後を心待ちにするのとは正反対に、少女は毎日学校が終わらなければいいのにと思う。
学校がある間は、やることがある。授業を受けていればあっという間に時は過ぎる。
でも、放課後や土日はそうはいかない。
時間が過ぎるのが遅い。
図書室担当の関先生は少女の3年生の時の担任だった。だから少女の事情も知った上で教員なしでの図書室の使用を黙認してくれているのだ。
少女はしばらく席でぼーっとした後、立ち上がり、本を取りに行った。
2年ほどかけて、少女は図書室の本をほとんど読み切った。
有名どころはもちろん、知る人ぞ知る名作もすっかり読破してしまった。
新刊は入ってくる度にチェックしているし、なんなら棚に並べているのも少女だ。
残っているのは、古くて誰も手を出さない、何年も読まれていないような本だけだ。
図書室の端、ほぼ書庫のようになっている一画。誰も寄り付かない棚へ少女は足を運ぶ。
1番上の段の1番左の本を手に取る。
タイトルはかすれて読めない。パラパラと中をめくるとファンタジーの児童書のようだ。シリーズ物のようでその横に何冊も同じような背表紙の本が並んでいる。
席に戻ろうとした時、少女の視界に光る何かが映った。
他の教員たちにバレないように電気をつけていないため、図書室は薄暗く、光るものなど置いていない。
見間違いかと思いつつ、少女が振り向くと光っていたのは1番下の段の端に置かれた分厚くて古い本だった。
本には触れずにしゃがみこんで少女はじっと光を見つめる。
どうやら光っているのは本そのものではなく、1ページだけのようだった。
少しそのまま本を見つめてから、少女は立ち上がる。
面倒くさそうなことには関わらないのが1番。下手に巻き込まれてしまったら困る。
平穏に静かに生きる。それが少女のモットーだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
【完結】会いたいあなたはどこにもいない
野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。
そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。
これは足りない罪を償えという意味なのか。
私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。
それでも償いのために生きている。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる