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エピローグのその先で
再会①
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「とりあえず、飛行機降りて荷物受け取ったら、電車とかじゃなく外でなさい。強力な助っ人頼んだから」
一颯が飛行機に寄る前に母親に連絡を入れたらそんなLINEが返ってきた。
強力な助っ人?と頭を傾げつつ、今の自分の状況がやばいことはさすがに分かっているので、母親の言いなりになる。
一颯は自分でもこんなに自分がポンコツだとは思っていなかった。
今まで、旅行の時は友達や母親がチケットを取ってくれていたから、早めに予約がいることをすっかり忘れていた。
まさか、日時を間違えて荷物を送っているなんて考えてなかった。
手荷物が多いと邪魔だからと全て突っ込んでしまったのもミスだ。鍵と交換に不動産屋さんに渡す書類まで入れてしまった。
ほとほと自分自身に呆れつつ、一颯は大量に流れてくる荷物の中から自分のスーツケースを探す。なんだかんだと入りきらなくてボストンバッグも預けたので、大荷物だ。
荷物を受け取り、母親に指定された場所へ向かうと、1台の車が止まっていた。
母親の言う“強力な助っ人”が一切思い浮かばず、一颯はその場で立ち尽くす。
明日香は成田空港の到着ロビーから近い送り迎え用の乗り場で、一颯がやってくるのを待っていた。ゆみさんから一颯の最近の写真はもらったし、真っ赤なスーツケースで行ったという目印も教わっていたので、遠目からでも一発で分かる。
スマホを見ながらきょろきょろと辺りを見回す姿を見つけ、明日香はなんて声をかけようとか考える間もなく、助手席の窓を開け、勢いで話しかける。
「一颯!詳細はゆみさんから聞いた。とりあえず時間内から乗って!」
「は?」
状況が一切つかめていない一颯を急かし、スーツケースを後部座席に乗せ、助手席に座ったことを確認するや否や、明日香は車を走らせた。
横で一颯がうわっという声を上げながら慌ててシートベルトをする。
明日香が運転に集中している間に少しだけ状況がつかめてきたのか、一颯は明日香に話しかけた。
「明日香、だよな。久しぶり。俺、いまいちよくわかってないんだけど、母さんが言ってた強力な助っ人っていうのが」
「そう。私」
「なんで?」
「知らないよ。今日たまたまうちの母親がゆみさんとランチしてたからじゃない?」
「あぁ、そういえばなんか会うって聞いたかも」
「そ、それで一颯が何かやばいことになってるからっていうヘルプが来た。当日までチケット取ってないとか何?飛行機の当日チケットなんて春休みは満席だし、何より割高すぎでしょ。ゆみさんが請求額高すぎて信じられないってぼやいてたよ。あとさ、なんで大事な書類段ボールに入れちゃうかな?挙句の果てに日にち間違えるとか。まぁ間違えてなかったら鍵受け取れなくて明日の引っ越しやばいから結果オーライなんだけどさ」
明日香が怒涛の勢いでイライラをぶつけていると、急に一颯は笑い出した。
「何笑ってんの?こっちは残り僅かの春休み潰されてるんだけど」
「ごめんごめん。なんか、明日香だなぁと思って。俺よりよっぽどしっかりしてて、いつも引っ張ってくれる。あ、でもパワーアップした?」
一颯ののほほんとした空気に明日香も思わず毒気を抜かれる。
「一颯はよりマイペースになったというか、なんというか」
「うん、最近やばいって自覚し始めた」
素直に認める一颯に明日香は呆れつつ説明を始める。
「とりあえず、一颯の荷物はゆみさんに頼んで営業所止めにしてもらったから、今から受け取りに行く。9時に営業所が閉まるのに、間に合うかギリだから急いでた。その後のことは荷物受け取ってから考えよ」
「了解、助かる」
「あ、レンタカー代後で請求するからね?高速代も。こうでもしなきゃ間に合わないからさ」
「……了解」
ポンポンと繋がる会話に、明日香は一颯に合うのが7年ぶりとは思えないなと心の中でつぶやく。勢いで会うことになったけれど、意外と何でもなかった。
「そういえば、ゆみさんに合流したって言った?」
「あー、忘れてた」
「しときなよ。心配してたから」
「今する」
スマホをタップし始めた一颯を横目で確認して、明日香は運転に集中する。免許を取って4年も経つが、そこまで運転する回数が多くない東京住みでは、未だになれない。
無言になった車内は、思っていたよりも居心地がよく2人はそのままその心地よい空間に身を任せた。
一颯が飛行機に寄る前に母親に連絡を入れたらそんなLINEが返ってきた。
強力な助っ人?と頭を傾げつつ、今の自分の状況がやばいことはさすがに分かっているので、母親の言いなりになる。
一颯は自分でもこんなに自分がポンコツだとは思っていなかった。
今まで、旅行の時は友達や母親がチケットを取ってくれていたから、早めに予約がいることをすっかり忘れていた。
まさか、日時を間違えて荷物を送っているなんて考えてなかった。
手荷物が多いと邪魔だからと全て突っ込んでしまったのもミスだ。鍵と交換に不動産屋さんに渡す書類まで入れてしまった。
ほとほと自分自身に呆れつつ、一颯は大量に流れてくる荷物の中から自分のスーツケースを探す。なんだかんだと入りきらなくてボストンバッグも預けたので、大荷物だ。
荷物を受け取り、母親に指定された場所へ向かうと、1台の車が止まっていた。
母親の言う“強力な助っ人”が一切思い浮かばず、一颯はその場で立ち尽くす。
明日香は成田空港の到着ロビーから近い送り迎え用の乗り場で、一颯がやってくるのを待っていた。ゆみさんから一颯の最近の写真はもらったし、真っ赤なスーツケースで行ったという目印も教わっていたので、遠目からでも一発で分かる。
スマホを見ながらきょろきょろと辺りを見回す姿を見つけ、明日香はなんて声をかけようとか考える間もなく、助手席の窓を開け、勢いで話しかける。
「一颯!詳細はゆみさんから聞いた。とりあえず時間内から乗って!」
「は?」
状況が一切つかめていない一颯を急かし、スーツケースを後部座席に乗せ、助手席に座ったことを確認するや否や、明日香は車を走らせた。
横で一颯がうわっという声を上げながら慌ててシートベルトをする。
明日香が運転に集中している間に少しだけ状況がつかめてきたのか、一颯は明日香に話しかけた。
「明日香、だよな。久しぶり。俺、いまいちよくわかってないんだけど、母さんが言ってた強力な助っ人っていうのが」
「そう。私」
「なんで?」
「知らないよ。今日たまたまうちの母親がゆみさんとランチしてたからじゃない?」
「あぁ、そういえばなんか会うって聞いたかも」
「そ、それで一颯が何かやばいことになってるからっていうヘルプが来た。当日までチケット取ってないとか何?飛行機の当日チケットなんて春休みは満席だし、何より割高すぎでしょ。ゆみさんが請求額高すぎて信じられないってぼやいてたよ。あとさ、なんで大事な書類段ボールに入れちゃうかな?挙句の果てに日にち間違えるとか。まぁ間違えてなかったら鍵受け取れなくて明日の引っ越しやばいから結果オーライなんだけどさ」
明日香が怒涛の勢いでイライラをぶつけていると、急に一颯は笑い出した。
「何笑ってんの?こっちは残り僅かの春休み潰されてるんだけど」
「ごめんごめん。なんか、明日香だなぁと思って。俺よりよっぽどしっかりしてて、いつも引っ張ってくれる。あ、でもパワーアップした?」
一颯ののほほんとした空気に明日香も思わず毒気を抜かれる。
「一颯はよりマイペースになったというか、なんというか」
「うん、最近やばいって自覚し始めた」
素直に認める一颯に明日香は呆れつつ説明を始める。
「とりあえず、一颯の荷物はゆみさんに頼んで営業所止めにしてもらったから、今から受け取りに行く。9時に営業所が閉まるのに、間に合うかギリだから急いでた。その後のことは荷物受け取ってから考えよ」
「了解、助かる」
「あ、レンタカー代後で請求するからね?高速代も。こうでもしなきゃ間に合わないからさ」
「……了解」
ポンポンと繋がる会話に、明日香は一颯に合うのが7年ぶりとは思えないなと心の中でつぶやく。勢いで会うことになったけれど、意外と何でもなかった。
「そういえば、ゆみさんに合流したって言った?」
「あー、忘れてた」
「しときなよ。心配してたから」
「今する」
スマホをタップし始めた一颯を横目で確認して、明日香は運転に集中する。免許を取って4年も経つが、そこまで運転する回数が多くない東京住みでは、未だになれない。
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