私が唯一愛した人は、双子の姉を愛していたので、友情と仕事に生きることを決めました

レイナとリスト8

　実はレイナは抜け出して街に遊びに行く時、フレナやスミカの服や借りて、名前を変えて町娘として遊びに行っていた。

　侯爵令嬢としてお忍びで行くのと、町娘として行くのでは見れるものが全然違う。

　実際、町娘として遊びに行ったことで知れた住民たちの暮らしも沢山ある。

「町娘として……でも、よろしいんですか？侯爵様は許していただけるのでしょうか？」

「父にはそれとなく許可を取ります。あ、リスト様もその時は服装を変えて、平民に扮してになりますが、よろしいですか？」

「えぇ、それは構いません」

「それでは、父に聞いてみます」

　町娘として遊びに行っていることは、公然の秘密だ。
　特に詳しく伝えずとも、リスト様を案内するというだけで侯爵は察してくれるだろう。

　アイリスにバレるとむくれるだろうが、残念ながらアイリスを町に連れていく訳にはいかない。

　お土産を買ってくることで何とか納得してもらおう。とレイナは考える。


　  ＊＊＊


「本日はありがとうございました」

　門の前でリストはレイナに頭を下げる。

「こちらこそ、急にお誘いして申し訳ありませんでした」

「おや？」

　レイナの肩越しにリストは何かを見つける。

　レイナが振り向くと、2階のアイリスの部屋の窓に人影が見えた。

　人影は微かに手を振っている。

「アイリス様、でしょうか？」

「えぇ、あそこはアイリスの部屋ですから」

　リストは人影に向かって手を振り返す。

　辺りを見渡すとフレナの姿が見えなかった。

　もう1人誰かがアイリスに近づき、窓辺から人影は消えた。

　あれはきっとフレナだ。

「お母様の目を盗んでいるのでしょう。リスト様とお食事が出来ないこと、アイリスは残念がるでしょうから、せめてもの挨拶なのだと思います。もし、よろしければ今度はアイリスも交えてお茶でも」

「是非、ご招待に預からせていただきます」