私が唯一愛した人は、双子の姉を愛していたので、友情と仕事に生きることを決めました

社交界の準備1

　社交界の準備の中で、4人がまず始めたのは衣装だった。

　王都の流行りはピンクや黄色のたっぷりとしたスカートの華やかなドレス。

　それに比べて、今、れいなの目の前に広がっているのは黒や濃紺、モスグリーンなどの地味な色の布ばかりだ。

　ネカから注文を受けた仕立て屋は少し不思議な顔をしながらも、今現在用意出来るものを全て揃えてくれた。

「レイナ様は色が白いですから、濃い色が映えますね」

　そう言いながらネカがいくつかの布のサンプルをレイナにあてていく。

　その横でスミカとフレナがサンプルがまとまったファイルをめくりながら「レイナ様にはこれが似合う」「こっちの方がいいんじゃない？」とキャッキャッと会話に花を咲かせている。

「ただ、王都のパーティーは華やかですから、濃い色と言ってもこちらの真紅やモスグリーンはいかがですか？」

　ネカが持ってきたのは深みのある鮮やかな真紅のサテン。
　レイナの身体に沿って布をあてると、その艶やかさと自然にできたドレープがなんの飾りもなくとも美しいドレスを想像させた。

　モスグリーンの方は真紅とは異なり、ベルベット生地で落ち着いた風合いを持っている。
　光の当たり具合によって見え方が変わり、それが更にレイナの魅力を引き立てる。

　どちらも流行とは一線を画しつつ、侯爵令嬢としての気品を失わない最上級のものだ。

　どちらも捨て難い。ただ、何かが足りなかった。

「スミカ、サンプルを見せて頂戴」

　スミカから手渡されたファイルをレイナはパラパラとめくる。
　少しずつ風合いの違う布が、数え切れないほど貼り付けられている。

　どれも美しいが「これだ！」と思うものは見つからない。

「ん～～」

　ネカが選んだ2種類の中で決めるしかないか。
　レイナがそう思い、ファイルを閉じようとした時、どこかのページから剥がれ落ちた布切れが1枚レイナの足元に落ちた。