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レイナにふさわしい曲2

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 レイナは楽譜を抱え、自室に戻ると先日ネカ達と相談した社交界デビューの資料を取り出した。

 そこには王都で流行りの衣装や楽曲、お菓子などがまとめられている。

 今、アイドクレース家には、本格的に社交界で活躍している人がいない。

 だからこそ、社交界の情報は貴重で、その情報を元に社交界デビューの準備をしようと思っていた。

 でも、先程のリストの言葉でレイナの方針は変わった。

 ただ、今考えていることは間違いなく賭けだ。
 反対も、恐くされる。

 予定通り、流行りを抑えて、準備をする方が確実で安全だ。

 でも、それで作り上げるアイドクレース侯爵令嬢は、レイナのなりたい姿ではなかった。

 よし。

 パンっとレイナは自分の頬を叩く。

 まずは、スミカとフレナ、そしてネカの説得だ。

 気合いを入れて、レイナはネカたちの到着を待った。



 コンコンコン

「お呼びでしょうか」

 ネカの声が響く。

「どうぞ」

 いつもとは違う、少しピリッとした空気にネカの表情もキリッとする。

「どのようなご要件でしょうか」

「社交界の事よ。たぶん時間がかかると思うけれど、夕食まで用事はないかしら?」

「特にございません」

「そう、なら長くなるだろうから、スミカ、フレナ、お茶を入れてくれる?ネカはこちらへ」

 レイナは窓際のテーブルにネカを案内した。

 スミカとフレナが入れてくれたミルクティーをレイナはそっと口に運ぶ。

「ネカ、社交界デビューの方針を変えたいの」

「方針を変える、ですか?それはどのように?」

「今のままでも、一般的な侯爵令嬢として、ふさわしい社交界デビューは飾れるでしょう。でも、ネカも知っている通り、私は一般的な侯爵令嬢ではありません。
 流行の衣装とアクセサリーで着飾り、定番の曲を演奏し、教養としてダンスをする。それでは、私の魅力は出ませんし、その令嬢は私ではありません」

「……」

「私は、私として、私らしさを失わずに戦いに行きたいのです」

「戦い、ですか?」

「えぇ、戦い、でしょう?社交界は女性にとっての」

 美しく、レイナは微笑む。

「レイナ様が望む、理想とはどのような姿でしょうか?」

「私は、ただ殿方の隣でニコニコと笑っているだけは望みません。
 私にはアイリスのような愛らしさはありません」

「そのようなことはーー」

「でも、先程、リスト様は私にこう仰りました。私にはアイリスとは違う美しさがあると。
 私は強く、美しく、凛とした、自立した女性になることが理想です。
 そのために、勉学も、剣術も努力してきたのです」
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