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アイリスのわがまま1

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「はぁ……はぁ……」

 ベッドの上で顔を真っ赤にしてアイリスは横たわる。

 ピアノのレッスンが終わって約2時間後。
 大人しくしていたのにも関わらず、レイナの予想通り、アイリスは熱を出していた。

「辛いわね。もうすぐお薬が効いて良くなるからね」

 枕元でルナリアがアイリスの額の汗を拭く。

「やっぱりピアノのレッスンは大変じゃない?明後日のレッスンはおやすみしましょう。せめて月に1度とかにしない?」

「……やだ。ピアノ、とっても楽しかったの。また弾きたいの」

「え?」

 ルナリアは驚いて固まる。

 アイリスはずっとルナリアの言うことを聞くいい子だった。
 ルナリアにダメと言われたことには一切手を出さず。
 大人しく、生きてきた。

 ルナリアがこっちの方が良いと言えば、それに従い、アイリス自身も大好きな母の言う通りに生活していれば、悪いことは起きないと理解していた。

 そんなアイリスが、初めて口に出したわがままだった。

「お母様、お願い。アイリス、リスト様とピアノのお稽古したいの」

 熱で潤んだ瞳でアイリスは告げる。

「……まず、熱を下げてから話しましょう?ほら、もう寝なさい」

 ルナリアは思わず視線を逸らし、寝かしつけるようにポンポンとアイリスの布団を叩いた。

 アイリスはぐっと目線の位置まで布団を引き上げる。

 熱を下げなければルナリアは話を聞いてくれない。
 明後日のレッスンに行くためには、明日の朝には元気になっていないといけない。
 それだけはわかった。

 早く元気にならなくちゃ。

 リストの演奏は、今まで聴いたどんなピアノよりもワクワクした。

 あんなピアノを自分も弾いてみたいと思った。

 レイナはなんでも出来ていいなぁ。

 アイリスは心の中でつぶやく。

 アイリスにとってレイナは半身であると同時に憧れだ。
 どんなときもアイリスの先を歩き、そっと手を差し伸べてくれる。

 今度はリスト様に教わったレイナのピアノも聴いてみたい。

 そんなことを考えているうちに、アイリスは眠りに落ちて行った。
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