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アイドクレース侯爵家3

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 魔力の枯渇。
 それはつまり、領民にとって死に等しい。

「アイリスには魔力供給は厳しいだろう。ルナリアも魔力が多い方ではない。幸い、レイナの魔力は多い。16歳になってからは私と一緒に魔力供給を頼む」

 そういってアイドクレース侯爵はレイナに頭を下げた。

 始めて見る父の姿。

 本当は今まで自由にできてきたのがおかしいのだ。
 貴族として生まれたからには、貴族としての義務を果たさなければいけない。
 15歳まで本当に自由に、レイナはやりたいことをやらせてもらってきた。

「お父様。頭を上げてください。私もアイドクレース侯爵家の一員です。それに、私は生まれ育ったこの領地が好きです。この土地の人々も。大切なものを守るために私にも頑張らせてください」

 レイナはこの土地が好きだ。
 美しい自然と活気のある町。そして優しい人々。

 特に貴族であるレイナにも敬いつつ温かく関わってくれる領民が大好きだった。

 改めてみる父の侯爵としての姿にレイナは覚悟を決めなおした。

「あの、それで、アイリスのことというのは……?」

「そうだな。アイリスについてだ。王家からはただでさえ減っている貴族だから、アイリスの社交界に出すようにと言われている。ただ、私はアイリスを出すつもりはない。その分レイナに負担が大きくなってしまうだろうが……」

「それは、覚悟の上です」

「体が弱くてもぜひ息子の嫁にという人もいる。だが、私はアイリスを子供を産む道具にはしたくない。アイリスの場合、それは命と交換になってもおかしくない」

「……そうでしょうね」

「それから、これはここだけの話にしてほしい。実はアイリスは20歳まで生きられないかもしれないと言われている」

「え!それはどういうことでしょうか」

 ガタンとレイナは椅子から立ち上がる。

 アイリスが、20歳まで生きられない……?

 アイリスはレイナの半身だ。

 アイリスが生きられないというのはレイナは自分の半分を失うことと同義だ。

「座りなさい。レイナ」

 貴族はどんな時もポーカーフェイス。品よく美しく。

 でもそんなことは今のレイナの頭からは抜けていた。

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