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手合わせ2

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「よし、じゃあ行くよ!」

 ラエルに木刀を向けるとレイナはいきなり走り出す。
 勝てるとは最初から思っていないが、ボコボコになるのは避けたい。
 力と技術では到底歯が立たないラエルとまともにやり合うためには、瞬発力と身軽さ、それからバネに頼るしかない。

 一瞬にしてトップスピードに乗ったレイナはその勢いのまま、半分奇襲のような形でラエルに打ち込む。

「うわ、まじかよ」

 まだストレッチをしていたラエルは咄嗟に手に持っていた木刀で弾く。

 弾かれたレイナは、体制を立て直すと、そのまま素早い打撃を連続で打ち込む。
 スピードに乗った打撃は重さこそないものの、的確にラエルを狙い続ける。

 何本か受けたところで、このままでは埒が明かないと思ったのか、ラエルはレイナの攻撃をいなすのではなく、正面から受け、衝撃でレイナを弾いた。

 そのままレイナは後ろに吹っ飛ぶ。

 やばい!といった表情がラエルに浮かぶが、そんなことはお構い無しに、猫のような身軽さでレイナは空中で体制を整えて着地した。

「ブランクあるとは思えないスピードだな。さすが」

「……はぁ、はぁ、息も上がってないくせに」

「いや、その身のこなしはホントすごいよ。まぁ、じゃあ次はこっちから」

 ラエルの重たい打撃がレイナに入る。
 木刀で受け止めても衝撃で腕が痺れる。

 これでも、ラエルはレイナが怪我をしないように手加減をしている。

 いくら幼馴染で、友人だと言っても、守るべき侯爵家の令嬢に怪我をさせたら、ラエルの人生は閉ざされる。
 そんな危険を犯してまで、全てひっくるめて、レイナのストレス発散に付き合ってくれるラエルにレイナは感謝してもし足りない。

 直接お礼を言うことは無いけれど、こうやって手合わせをするために、自分は友人に恵まれているとレイナは実感する。

「もう、無理!!!!」

 レイナは地面に倒れ込む。
 たった30分ほどで15歳の女子としては異常なほどのレイナの体力は底を尽きた。

 僅かに汗をかきながらも爽やかな顔をしているラエルを見て、レイナは子供の時間が終わりに近づいていることを改めて悟った。

 レイナが5歳の頃は、レイナの方が強かった。
 10歳の頃、12歳になったラエルは、もう手が届かないほど強かったが、それでも、訓練の後はレイナと同じように倒れ込んでいた。
 そして、レイナが15歳になった今、17歳のラエルはいつの間にか背も伸びて、体力もつき、何気ない顔をしてそこに立っている。





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